憧れと矜持がたっぷり詰まったDJセット。ANIMAL HACKが繋ぐ「EDM以降」の音楽シーン
徐々に知名度を高めつつあるANIMAL HACK。今回のDJセットは、まるで彼らの「叫び」のようでした。45分という短い持ち時間の中、精一杯「自分たちの現在地」を示そうとしているような、そんなパフォーマンス。オリジナルの楽曲に加えて、ポーター・ロビンソン&マデオンの『Shelter』をプレイするなど、彼らを物語る「文脈」が出来上がっていました。トラップやブレイクビーツに加えて、ハッピー・ハードコアまでも横断し、自分たちのパーソナリティを編んでゆきます。
Porter Robinson – Language (Kayzo & Gammer Remix)
ポーターやマデオンへのリスペクトを大いに感じましたが、そこに媚びた印象は受けません。むしろANIMAL HACKが表明したかったのは、彼らに対する日本からの回答なのでは。DJたちのテーマが「EDMからの脱却」へと変化した昨今、この二人は間違いなくその真っ只中にいます。その証拠に、この日締めの一曲としてプレイされた曲は『Plastic Night』。まさに細分化した「EDM以降」のサウンドです。
ササクレフェスの直後には、こんな曲も発表されました。
ANIMAL HACK – 『Body』
先人たち(特にマデオン)への憧れと、ANIMAL HACKのプロデューサーとしての資質が完全に一致した珠玉の一曲。最新EPの『Boy』がリリースされてからわずか2ヶ月程度しか経っていませんが、まだまだ彼らの快進撃は止まらないようです。
ついに危うさすら感じる域に到達。DALLJUB STEP CLUBの覚醒
7月5日にセカンド・アルバム、『CHECK THE SHADOW』 をリリースしたばかりのDALLJUB STEP CLUB(ダルジャブ・ステップ・クラブ)。本作は1枚目の『We Love You』を軽々超える衝撃作ですが、ライブでもやはり感想を同じくしました。ブレイクスルーを起こすのも時間の問題では。
ダルジャブ・ステップ・クラブも他の術ノ穴所属のアーティスト同様、ジャンル分け不能なサウンドを鳴らします。ダブ、ヒップホップ、ドラムンベースにハウス、彼らの音像には垣根がありません。
DALLJUB STEP CLUB – 『C.T.S』
「電子音楽とバンドサウンドの戯れ」とでも言えば良いのか、彼らの音楽にはマシーンの正確性と人力の即興性の両方があります。それは『We Love You』の頃から言えることですが、今の彼らはいよいよその領域が曖昧なのです。『2』にしろ『Pizza Pizza』にしろ、機械的なのに予測不能だし、肉体的でありながらシステマチック。その曖昧さが堪らなくスリリングで、危うさすら感じました。
DALLJUB STEP CLUB – 『Redbull』
音源を聴くだけでも十分に凄さは伝わりますが、彼らのようなバンドはライブでこそ真価を発揮します。現在リリースツアー中ですから、この機会をお見逃しなく。
全ての終着点と化した、ZAZEN BOYS
ミュージシャンの目標の一つが、フェスのヘッドライナーになることとした場合、多くのキッズにはZAZEN BOYSのライブを一度観て欲しい。そのために必要なものを、彼らは全て持っています。
数字至上主義が蔓延する日本の音楽シーンにおいて、そんな前提を無効化してしまう圧倒的な実力があるのです。
肌感覚ですが、この日は「ZAZEN BOYSは初見である」という人が多かったように思います。そんな中、『Fureai』のヌルヌルとしたグルーヴが場内を包み込み、続く『Himitsu Girl’s Top Secret』で早くもオーディエンスは彼らの世界観へ誘われます。
ZAZEN BOYS – 『Himitsu Girl’s Top Secret』
「世界観」とはなかなか便利な言葉で、メディアの人間が「何となく雰囲気を感じるもの」を指して使いがちですね。ZAZEN BOYSの場合は、その雰囲気が極めて具体的なのです。メンバー4人の間に流れる、「果し合い」にも似た空気感。
ともすれば、美術館に飾られた絵のように一方的なインスタレーションになりそうですが、彼らはその世界観にオーディエンスを文字どおり「巻き込む」のです。彼らが作り出す「間」に、気がつくと僕らは声を上げている。
ZAZEN BOYS – 『はあとぶれいく』
アンコールの『KIMOCHI』では、「大団円」としか言いようのない多幸感が場内を包んでおりました。色彩豊かなササクレフェスを締めくくるにふさわしく、誰よりもビビッドに輝いていたZAZEN BOYS。「出来すぎ」という言葉を使っても許されるぐらい、ヘッドライナーとしての役割を果たしていたと思います。
Photography_フジ・ヘンドリックス
text_Yuki Kawasaki
■ササクレフェスティバル2017 プレイリスト
■術ノ穴presents『ササクレフェス2017』
日程: 2017年7月8日(土)
会場: 渋谷 WOMB
<関連リンク>
http://sasakure-fes.subenoana.net/
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