続いて、お話するのにちょうど良いラジオスタジオブースがあるので、少し腰を落ち着けてお話をうかがいます。
カセットとCD(デジタル音源)。音はどう違う?
ーー実際にラジカセの音を視聴できるコーナーがありますが 、カセットと、CDなどのデジタル音源の音の違いとは何なのでしょうか?
松崎さん:「そうですね。たくさん販売するには不向きなのですが、その労力をかけるのは「本当の自分たちの音を表現したい」という側面もあると思います」
デジタルとアナログは、共存する
ーーカセットとデジタルデータでは、実際に聞こえる音の印象はどのように変わりますか?
ーーあたらしく松崎さんがデザインしたラジカセも、すごく気になります。
松崎さん:「ありがとうございます!いざラジカセがほしい、と思っても、いま家電量販店で売られているものが欲しいか、というと、なかなか手は伸びませんよね。なので、今の生活になじむラジカセをつくろうと。こういったラジカセの楽しみ方があるよね、という提案になればと思っています」
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カセットテープが唯一の情報発信・編集ツール。
個人の熱量が拡散していくメディアだった。
ーー松崎さんは以前インタビュー記事で「カセットテープはSNSのようなものだった」ということをおっしゃていて、それがすごく印象的でした。つまるところ、ラジカセやカセットテープとは、どのような存在だったのでしょうか?
松崎さん:「いまは個人がインターネットをつかって、自由に自分の意見や主張を拡散できる世の中ですよね。1970〜80年代というのは、メディアといえば、テレビ、ラジオ、雑誌と書籍くらい。個人が自由に自分の表現を発信できる時代ではなかったのです。そのなかで、唯一自分の思いを表現できるツールがカセットテープでした」
松崎さん:「レコードはアーティストが自分で曲をつくって、聴く。あくまで受け身の存在でした。カセットテープは、たとえばラジオとかテレビとか、なにかおもしろいものをやってて、あ、これかっこいいなって思ったら、録音して、カセットテープで友達に伝える。ちょっと聴いてみ、って。僕は昔よく、かっこいいとおもった番組のパーソナリティの言葉と音楽を録音して、それを次の日、テープでシェアしていました。それがどんどん友達どうしでシェアしあって、拡散するんですよ。デジタルだとあっという間にシェアされますよね。昔は、人づてにどんどん劣化しながら、各々の家にあるラジカセでダビングしていって、学校をこえて、地域にひろがり、草の根のネットワークで、カセットテープが媒介となってコンテンツがひろまっていきました」
ーーなんだか、ものすごく楽しそうです。
松崎さん:「遠くの街からまわってきたテープが、これいちばん最初に自分が録ったテープじゃん!みたいなことが起きたり(笑)。きれいに一巡して」
ーーお話をきいていると、いまのSNSよりも健全な印象があります。Facebookやツイッターだと、炎上して追い詰められる人がいたり、見ず知らずの人をディスりあったりしてしまうところがあるので。
ーー問題は、かっこいいか、かっこよくないか。それだけだ!と。やばいですね。しびれます。
・・・展覧会について、すでに伝え過ぎじゃないか?と自分でも少し不安になりましたが、実はもう全然この記事でご紹介したのは展覧会のごく一部!なのです。
会期は12月27日(火)までです。残りわずかですが、ぜひまだ行かれてない方は足を運んでみてください!
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