格闘技とロック……。その激しさやストイックさは、観客たちを鼓舞し活力を与え、感情移入や一体感、鑑賞後の爽快感や入場時よりもやや逞しく強い気持ちにさせてくれる。このように、この2つには鑑賞後に同じような気持ちにさせてくれ、また双方とも好きな人も多い。また、ファイターの入場テーマにもロックが多く起用されていて、試合前には気持ちを高めるために聴く人もおり、ミュージシャンの方も体幹を鍛えたりと好んで観戦し、中には親交を深めている人たちも多いらしい。
そんな格闘技とロックが激しく昇華し合ったイベントが、1月13日豊洲PITにて開催された。日本を代表する元K-1のレジェンドファイター武蔵主催の『MUSASHI ROCK FESTIVAL2020』がそれだ。武蔵がK-1を引退した2009年10月以来、10年ぶりの開催となった今回。前回よりも規模も拡大し、充実度もアップした感を受けた同イベントは、事後にはとてつもないエネルギーと明日への活力を与えてくれるものがあり、改めてこの二者に多くの共通点を見出すことができた。
Text_Sukao Ikeda
Edit_Mine.k
K-1のレジェンド・武蔵が集めた、豪華出演陣
「大好きなロックとの融合。必ずや熱い化学反応が観れるでしょう!」との開会時の武蔵の宣言通り、約6時間にも及ぶ格闘技とロックの融合と共演。そして2者が放つ熱狂と臨場感、迫力とダイナミズムに圧巻されっぱなしであった同イベント。ステージは会場正面の「ライヴステージ」、後方には格闘技用のリング「バトルステージ」の2ステージ制で行われた。
ライヴステージでは武蔵とも親交が深く普段から好んで聴いたり観たりしているという、coldrain、Do As Infinity、OLEDICKFOGGY、SEX MACHINEGUNS、10-FEETの5アーティストが出演。これらは武蔵自らが声をかけ実現したもの。各アーティストの人気の高さと、普段なかなかこの取り合わせは観られない貴重さや豪華さ、また幅広いタイプのロックアーティストが一同に介した夢の競演感溢れるステージが展開された。
一方、バトルステージにて繰り広げられた格闘技の方は、武蔵の強敵であり旧友の元K-1レジェンドファイターのピーター・アーツとアーネスト・ホーストも来日し、往年のファンを驚喜させた。試合では彼らのDNAを受け継ぐファイター、バダ・フェルダオス、イリアス・ボカユア、ピエトロ・ドウリャが、武蔵推薦の若手3選手山下力也、T-98、麻原将平と対戦。ホースト&アーツ率いる世界チームと武蔵率いる全日本チームとが、ライト級、ミドル級、ヘビー級に分かれ対抗戦を見せた。もちろんこのマッチメイクも武蔵によるものであった。
開始を告げる映像が終わると、リングアナウンサーからの開会宣言が。バトルステージのリングに、アーネスト・ホースト、ピーター・アーツ、武蔵のレジェンドファイターたちが呼び込まれ、一人ひとりがコメント。自身の番では早くも涙ぐむ武蔵が「今日はこんなにも人が集まってくれて感激です!最後まで余力を残さず全力を使い切りましょう!」と完全燃焼のアライアンスが場内とリングとで交わされた。
ライヴステージ一番手はSEX MACHINEGUNS。「リングと一緒。死ぬ気でやるから!」と、疾走感を擁したメタリックなサウンドでグイグイと惹き込んでいった彼ら。疾走感とツーバスが地響きを立てた「みかんのうた」をはじめ、激しいながら親しみやすい歌テーマとステージアクション、そしてコミカルなMC。超絶な早弾きなど、メンバーのプレイヤビリティも含め魅せるステージが次々繰り広げられた。マグマのように熱く燃え盛る<誇り>が伺えた「プライド」、フロント3人のヘドバンしながらもプレイも魅入らせた「桜島」、激走で駆け抜けた「ジャーマン」と、勢いのある曲の連射にてイベントを勢いづけた。
「こんな重要なイベントに呼んでもらい感激です!」と男臭いステージを展開したのはOLEDICKFOGGYであった。ウッドベース、バンジョー、アコーディオンとロックバンド的には特異な楽器を交えた音楽スタイルも特徴的な彼ら。牧歌性と旅立ち感を併せ持った「月になんて」、躍動感と疾走感が同居した「いなくなったのは俺の方だったんだ」、メディアムにて次に向かわなくちゃとの男の背中を感じた「カーテン」、対して新曲「日々がゆく」が走り出させれば、「マネー」で会場をひとつにしていった。後半も<それでも行くんだよ!>感溢れるライブを展開し会場を盛り上げた。
ここからはライヴ&バトルステージが交互に行われていった。まずはバトルステージ第一試合のライト級。ピエトロ・ドウリャと麻原将平が3R闘う。結果はドロー。なかでも最終ラウンドの激しい打ち合いが想い出深い。
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