様々なジャンルを越境しながら、隔週でお届けしております「MEETIA PLAY!」。前回以前のプレイリストはコチラから。今回のプレイリストは季節ものです。
インディーズに思いを巡らせるには秋がよい。
…ような気がします。冬になると色々なことに忙しくて思索に励む暇がないし、夏は殺人的な暑さでそれどころではありません。春は冬の忙しさを引きずっているので、ゴールデンウィークぐらいしか気が休まらないでしょう。子供の頃は夏休みのような長期休暇がなく、憂鬱に秋を過ごしたもんですが、大人になると実はこの季節が一番余裕があるのではないでしょうか。もちろん、職種によるとは思いますけれども。「芸術の秋」なんて言われるのも、それに費やせる時間が可能性として多くなるからではと思います。
そこで、秋の暮れにインディー界隈をディグってみました。もう冬の足音が近づいているので、これが最後の追い込み(?)です。マライヤ・キャリーも竹内まりやもアップを始めている今、浮かれる前にもう一度音楽をストイックに追求しようではありませんか。
Mariah Carey – 『All I Want For Christmas Is You』
今回は国内外問わず、古今東西から選りすぐりました。“俺たちのゼロ年代”~シーンの最前線を行く新世代まで、幅広く網羅したつもりです。なお、楽曲は2018年にリリースされた新譜に限定。
1. 黄金期「2000年代」の今を探る。
2000年代に音楽にハマった皆さんが漏れなく通過しているであろうアーティストたち。Deerhunterにしかり、Dirty Projectorsしかり、確実に「インディー黄金期を支えたバンド」と言って差し支えないでしょう。アメリカの批評サイト「Pitchfork」が、“世界でもっとも影響力のある音楽メディア”と言われるようになったのも、ゼロ年代後期に端を発するように思います。Fleet FoxesやPanda Bearも、同メディアで高い評価を受けております。今の20代後半~30代前半の中には、「狂ったように音楽雑誌を読み漁った」という筋金入りも多いのでは。そしてご覧の通りゼロ年代出自のアーティストは今もメチャクチャ元気なので、もう一度あの時代が来るような予感もあります。
2. シンガーソングライターの色々。
ひと口にシンガーソングライターと言っても千差万別。ジャンルは様々だし、メインに扱う楽器も異なります。テクノロジーも発達し、アーティストがひとりで出来ることも増えました。その結果、才人たちは天井知らずでその才能を具現化するばかり。ロスタムは元Vampire Weekendのメンバーですが、今はソロ活動がメインなのでコチラに含めました。ジュリア・ホルターもMitskiも毎年のように傑作を連発していますが、中でも注目して欲しいのは中村佳穂。「空間の音」まで音楽にしています。楽器や声の響き方まで活かしきったプロダクション。ミニマルな構成の『永い言い訳』に顕著です。彼女の曲は良い音環境で聴いていただきたいところ。
3. もはや何でもアリ。現行エレクトロニック・ミュージック
無論、「何でもアリ」とは揶揄ではないです。どこから引用したんです…?と聞きたくなるようなフレッシュな音楽は、マシーンの力を借りていることが多いです。もちろん、テクノロジー扱う側にも想像力と相応の技量が求められますが。それらが奇跡的に合致したとき、上の6曲のような音楽が生まれるわけです。Yves Tumor(イヴ・トゥモア)とObjektはその最たる例。一方はソウルやドリーム・ポップの音像をダークなタッチで包み込み、他方はダンスフロアから離れてインナーな世界観を築き上げた。どちらも年末の「Album Of The Year」系の企画ではほぼ確実にその名を見るでしょう。「先を行く」という点では、パソコン音楽クラブの『DREAM WALK』も素晴らしかった。本作で日本のクラブシーンは「Vaporwave」の呪いからようやく解き放たれたように思います。
4. “ポップミュージック”を追求するアーティストたち
正直どう括って良いものか一番迷ったのがこのセクション。恐らくジャンルとしては「インディーポップ」と銘打たれるであろう彼らの音楽(ROTH BART BARONは違うかもしれませんが)。が、しかし。「インディー」で「ポップ」とはなかなか矛盾を抱える言葉の組み合わせではないでしょうか。ポップでキャッチーなテイストではあるけれども、どこかに違和感のある音楽。ここで言う違和感とはネガティブな意味を持ちません。「カッティングエッジ」とか「革新的」とか、そういう言葉に置き換えても良いと思います。とにかく、「ポップ」を追求しながら「ポップ」とは一線を画しているのです。Yumi Zoumaの安心感たるや…。ROTH BART BARONをこの括りに含めたのは、彼らほどこの狭間で揺れるアーティストは居ないからであります。彼らが世界規模で知られる日が来るのを、いつも夢に見ているのです。
5. それでもやっぱりロックが好き。
ギターがジャカジャカ鳴って、ベースとドラムがグルーヴを醸し出し、場合によってはキーボードやシンセサイザーが鳴る。バンドの将来を想像したとき、容易にスタジアム級の会場で演奏する様が目に浮かぶ。それが“ロックスター”ってヤツなのでは、と思います。最近では「ロックは下火だ」なんて言われてますが、果たして本当にそうでしょうか。こと日本においては、まだまだ絶え間なく原石が出てきます。いや、もう磨く前に光ってる。このセクション、図らずも6組中4組が日本のバンドです。NewspeakもNo BusesもDYGLもMississippi Khaki Hairも、必要なのはタイミングだけではないでしょうか。(結局そこが一番難しいのかもしれません)
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