4月30日、渋谷のオーチャードホールにて開催された『15th anniversary concert 畠山美由紀 ソロ・デビュー 15周年記念 大感謝祭♡』。
前売りチケットは完売、当日券もなし!大盛況でした。
オーチャードホールの華やかな雰囲気も相まってか、この日のオーディエンスは気品ある大人の方々が多かったような。僕のような若輩者にはハードルが高そうに思われたけど、杞憂でございました。まるでラジオ番組のような距離感と親しみやすさで、あたたかく迎えてくれたのでした。
ラジオと言えば、畠山美由紀はFMヨコハマのリスナーにとってはお馴染みの存在であります。彼女は、毎週土曜日の11時〜放送されているTravelin’ Lightのメイン・パーソナリティでもあるのです。この番組を知っている会場内の人は、僕と同じようにラジオ的心地良さを覚えたのでは。パーソナリティがリスナー一人一人に語りかけるような、あの感じ。
規格外の出演者たち。
今回、畠山美由紀をバンドのメンバーとして支えたアーティスト。
冨田恵一/冨田ラボ (音楽監督 & Keyboard)
おおはた雄一 (Guitar)
鈴木正人/Little Creatures (Bass)
坂田 学 (Drums)
真城めぐみ/ヒックスヴィル、ましまろ (Chorus)
かねてより畠山美由紀と親交があり、彼女が絶大な信頼を置いているミュージシャンが集合。アニバーサリーにふさわしい超豪華メンツです。中でも冨田恵一のアレンジはとにかく素晴らしく、最近の彼の勢いを象徴するかのようなパフォーマンスでした。
そしてイベントの司会・進行を務めたのは、人気ラジオDJ/ナレーターの秀島史香。コンサートが終始和やかな空気で包まれていたのは、彼女によるところが大きいと思います。
そしてさらに、上記バンド・メンバーの他、豪華なゲストが多数登場。 (五十音順)
アン・サリー
Salyu
高野寛
土岐麻子
富澤タク (グループ魂、Number the.)
堀込泰行
ここまで揃えばもうお祭り。フェスであります。スケジュールを合わせるのだって大変だったろうな。畠山美由紀の15周年アニバーサリーとは、それほどにスペシャルなものなのです。そうして僕らオーディエンスは、ライブ開始のほんの数分でそれを思い知りました。
歴史に裏打ちされたポップミュージック
僕が畠山美由紀を知ったとき、彼女は「歌謡曲」という括りで語られていたのですが、その音楽性は実に多彩。例えば、一曲目に披露されたPort of Notes時代の名曲『Oasis』は、歌謡というよりはジャズのフィーリングを持ったナンバー。昨今の若手ミュージシャンが積極的に取り入れている「横揺れ」の感覚を、彼女は今よりも遥かに前から体得していました。3曲目の『Daily Life』でも黒いグルーヴが炸裂します。各メンバーの熟練したテクニックもすさまじく、ライブ中に畠山美由紀が「バンドがすご過ぎてテンション上がっちゃう」と言っていたけど、それも納得です。
母なる愛を歌うジャズシンガー、アン・サリー
4曲目の『真夏の湿原』が終わってから、上で述べた凄腕ミュージシャンの方々が入れ替わりでゲストに登場。この段階で司会の秀島史香もジョイン。まずゲスト・アーティストがソロで一曲歌い、二曲目で畠山美由紀とのデュエット、という流れで進行しました。一人目のゲストは、シンガーソングライターのアン・サリー。
飄々とした語り口から炸裂する爆笑トーク。会場中が大笑いに包まれるなか、演奏へ。この日ソロパートで披露されたのは、『新しい朝』。内科医として、そして二児の母として、彼女が「愛」について語った歌です。イノセントで透明感のある歌声の、まさしく母のジャズナンバーでした。
畠山美由紀とのデュエットでは、スティービー・ワンダーの『Happier Than The Morning Sun』を絶妙なバランスで聴かせてくれました。二人は同じくジャズのフィーリングを持つシンガーですが、それぞれの強みはやはり違います。繊細な歌声のアン・サリーと、スモーキーなヴォーカルの畠山美由紀。性質の異なる二つの歌声が美しく重なり合っていました。
素朴でセンチメンタルなギタリスト、高野寛の登場
次に登場したのは、畠山美由紀とは旧知の仲である高野寛。彼女がソロになってからのファースト・アルバム『Diving into your mind』にも参加しており、そのコンビネーションはもはや阿吽の呼吸です。
ソロパートでは、『確かな光』を披露。イントロの静かで朴訥としたギターのリフ、観客の心を掴むのにはそれだけで十分でした。このバンドとのコーラスワークもほんとうに素敵。
デュエットの曲には、キャロル・キングの『You’ve Got A Friend』のカバーを。このときに編成が3人(畠山美由紀・高野寛・おおはた雄一)に変更され、よりメロディが強調される構成となります。
この曲は文字どおり、親しい友人に向けられた歌なのですが、この日の畠山美由紀の心には強く響いたのでしょう。ここで言う「友人」とは、まさしくこの日彼女のために集まったミュージシャンたちに他ならない。司会の秀島史香も良き理解者の一人であるだろうし、あるいはファンもその範疇かもしれません。高野寛とのデュエットは、彼女自身の様々な思いが垣間見えた瞬間でした。
力強くも儚い歌声を響かせた、Salyu
三番手は、女性シンガーのSalyu。圧巻の歌唱力。今更言うまでもないのですが……。圧倒的な声量も特筆すべきだけれど、彼女の強みは何よりもその音域の広さ。ソロパートで披露された『風に乗る船』を聴いてもそれが分かります。
Salyu – 『風に乗る船』
デュエットパートでは、Bank Bandの『to U』を披露。原曲でいう櫻井和寿(Mr.children)のパートを畠山美由紀が担当し、メロディを引っ張るのがSalyuです。ヴォーカルが女性のみ、という内容でこの曲を聴いたのは初めてだったけれど、高低のバランスが新鮮でよかった。やっぱり、さすがです。
トークでも、Salyuが畠山美由紀を音楽家として、また友人としても尊敬しているのが見て取れたのでした。
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