グルーヴチューブ・フェスの本格的なスタート
グルーヴチューブ・フェスの前身となるこの海辺でのパーティを始めたことをきっかけに、本格的なスタートに向けて動き出した。そのタイミングで、奥さまでもありフェスの主催者の一人でもある淳さんと出会う。
「僕もかなり音楽は好きですが、彼女の周りに音楽関係の知り合いが結構いたんですよね。そんな中で現在、KiliKiliVillaと言うレーベルを運営されているDJの与田太郎さんを紹介してもらいました」
「地元でこういったパーティやっているんでDJお願いできませんか?と話していたら、与田さんが僕たちの考えや構想に賛同してくださって。与田さんの出演はもちろん、僕が好きだったDJのSugiurumnさんにも声をかけてくれることになり、 “これは凄い!”なんて興奮していたら、学生時代の後輩が曽我部恵一さんスケジュール空いているみたいだけどお願いしてみようか?なんて話が飛び込んできたんです。身内で行おうとしていたパーティの感じでは無くなってきて、それならばオフィシャルに許可をとってやりましょう!と横芝光町商工会青年部に後援してもらって、いまのグルーヴチューブ・フェスの形になったのが6年前ですね。とにかく人と人との繋がりでこのフェスはスタートしていったんです」最初から豪華なラインナップで、毎年スムーズに進んできたのかと思いきや、3年目には大雨で開催スタート後に中止になったことも。6年目となる今年も、ギリギリまで出演が難航したとか。
「6年目の今年は本当に今までの集大成と言うか、最終回かと思うほどのラインナップでしたね。例年出演してくださっている曽我部さんはもちろんのこと、ずっとオファーし続けていたLEARNERSが出演(前日の宮古島のライブからそのまま来てくれました!)、去年のフジロックでROOKIE A GO GOに出ていたNOT WONKの2度目の出演、そして一度はスケジュールの都合で今年の出演が見送られたHAVE A NICE DAY! が直前で参加できることになって。全部で10組ものアーティストが出演してくれました。いままででいちばんのアーティスト数で、お客さんも本当にたくさんの方が来てくださって。こんなにも熱気であふれる屋形海岸は僕が生きている中で初めてでした。思わず、フェス中に嫁さんと一緒に泣きましたね(笑)」
入場無料なワケ
このように様々なジャンルのアーティストが揃うグルーヴチューブ・フェス。このフェスのいちばん驚くべきところは、なんと入場が無料(一口千円からの寄付金制)だということ。大きいものから小さいものまで、全国にいろんな音楽フェスがあるいま、このラインナップで入場無料だなんてこと、どこを探してもないだろう。
「日本では、“音楽を聴く”ということがまだまだ敷居の高いものだなと日々感じています。海外には小さいライブハウスだったり、フリーの音楽イベントがたくさんあって、“音楽を聴く”こと自体が日常的なものとして年齢や性別問わず、すごく浸透しているなと思うんです。それに比べて、日本はライブチケットの値段もちょっと高いし、生演奏が聴けるようなお店も少ない。音楽が気軽に楽しめるものとしてまだ存在してないなと。なので、もっと日常の中のものとして溶け込んで欲しいなという思いがあって、寄付金制にしているんです。現に、今年も地元の中高生から、“モッシュを初めて体験しました”なんて声を聞けたり、オープニングセレモニーからDJタイムまでずっと踊り続けるおじいちゃんがいたりして。そういった幅の広さがこのフェスの魅力のひとつになっている気がしますね。そんなアットホームなフェスに感じられるのはこのフェスが友人や地元企業のサポートで成り立っているも大きいと思います。WEBから会場設営、交通整理、アーティストのアテンドまでフェスを創り上げる為に沢山の友人、知人が無償で尽力してくれています。加えてここ横芝光町を盛り上げたいと言う多くの地元企業の協賛によりこの入場無料が実現していますね。本当に感謝しかありません!」
貴紀さんが言うように、日本で“音楽を聴く”ということは少し敷居が高いもののような気がする。ライブやフェスに行くにしても、高い金額を払わなければ見られることができないし、いちばん色々な音楽を聴いて影響を受ける年代である10代-20代くらいの若い年齢の子たちからしたらなかなか気軽に支払うことができないイベントも多いだろう。そんな中でこのラインナップの音楽を無料で見られ、この空間を体験できるのは、きっと観た人にとって、特別で代え難い時間になるに違いない。
「これ以上、このフェスが大きくなったら、更に面白くなっていくんだろうなと思いますが、その都度で身の丈に合うことをやっていくと言いますか、このグルーヴチューブ・フェスで、今できることを着実にやっていきたいなと思います。毎年、終わった後は、エゴサーチをしてしまうんですけど、今年はグルーヴチューブ・フェス自体の空気感や、居心地についてのよさを言ってくれている方がとても多くて。そう感じてくださった方のためにも、現状以上を保つことはもちろんですし、何かしら新たな発見ができるようにしていきたいなと思います。地元から愛され、根付き、この屋形海岸から新たなカルチャーを発信したいです」
Uターンで戻ってきた何もない地元で、自分や仲間が楽しめる居場所を作りたいという気持ちからスタートしたこのグルーヴチューヴ・フェス。毎年の積み重ねで、いつしかここが自分だけの場所でなく、自分ではない誰かがここで聴ける音楽、ここで体験できるものを求めにこの土地に集まるようになってきた。新たな文化が土地に根付いていくということは、こういうことの連続なのであろう。これからのグルーヴチューブ・フェスの未来が、楽しみになった。
SHARE
Written by