ボーダーレスな音楽性をもつFIVE NEW OLDのサウンドの核とは
ポップ、って一体なんでしょう。よく聞くし、使う言葉ではあるけれど、単純な「ポピュラー」という意味を越えた文脈があるんじゃないかなと思うんです。言語やジャンルを越えたFIVE NEW OLDの音楽性をたどると、変幻自在な楽曲たちから滲むポップさと、反骨精神に行き着きました。
FIVE NEW OLDの足跡を追う
2010年に神戸で結成され、現在は4人組の体制となって活動しているFIVE NEW OLD。そんな彼らの、特定のジャンルを定義できないちょっと不思議な音楽性がずっと気になっていました。楽曲を聞くたびに、ホログラムのようにメロディの様相を変えてみせる彼らのサウンドと、ボーカルHIROSHIの日本人離れした英語の歌詞。彼らがインスピレーションを受けているのはどんな音楽なのか、彼らのこれまでのメジャーリリースから、その足跡をたどってみました。
FIVE NEW OLDは、2010年ポップパンクのバンドとして結成されました。その後、2017年にベーシストのYOSHIAKI脱退を経て、昨年サポートメンバーだったSHUNが新たにベーシストとして加入しています。
現在は、R&Bやブラックミュージックといった要素を取りこんだミクスチャーなロックミュージックとして紹介されることが多い彼らですが、一方で「80年代」や「シティポップ」といったキーワードも並びます。どの言葉のバックグラウンドにも、それぞれ違ったシーンがあったり代表的なアーティストが生まれているわけですが、彼らの音楽は、変幻自在にこれらの要素を使い分けているようにも思えます。その自由さ、実験的な姿勢の支柱は一体なんなのでしょうか?
楽曲ごとに表情を変える多彩な音楽性が魅力
ではでは、具体的に彼らの楽曲を聞きながら、私がどんな音楽を思い浮かべたか、勝手に(本当に実に勝手な考察ですが)読み解いていくことにしますよ。まずは2017年にリリースしたWIDE AWAKE EPの1曲目に収録されている楽曲Stay(Want You Mine)から。
イントロのゆったりしたテンポから歌い出しの部分で、一気に2010年代後半の日本の音楽からタイムトリップするような感覚に。サビの抜け感も、まさにキング・オブ・ポップのマイケルジャクソンや、プリンスなどを彷彿とさせるポップなメロウさがあります。「夜」をテーマにした全4曲が収録されているWIDE AWAKE EPですが、さらに続くHush Hush Hushのキレのあるドラムや疾走感あるメロディには、一転して彼らのルーツでもあるポップパンクを思わせる一面も感じられます。一枚のEPでも曲が変われば表情がガラリと変わる、そこがまた「次はどんなトーンでくるの!?」と中毒性を持っています。
続いては、2018年にリリースされたアルバム「For A Lonely Heart」の3曲目に収録されているMeltという楽曲。こちらは全体的にゆったりしたテンポで落ち着きがある曲ですが、間奏の軽やかなギターのメロディには、先日来日を果たしたロンドンのシンガー、トム・ミッシュ的な情緒を感じます。
ちなみに、このアルバムを聴き終わったあと「あ、ウィーザー聴こう」ってちょっと呟いていた私もいました。1組のアーティストの音楽を聴きながら、ここまでたくさんの音楽シーンが頭によぎる体験は初めてかもしれません。
そして、2019年最新のアルバム表題にもなっている「What’s Gonna Be?」。曲自体もですが、とにかくこのMVを見てみてください。
ポップ・オブ・ポップなピンク色の空間と、キャッチーで耳に残るベースライン。ここで思い浮かべたのは、今年再結成したJonas Brothersのジョー・ジョナスが活動しているバンドDNCEの「Cake by the Ocean」でした。全米のティーンエイジャーの間で2016年に爆発的ヒットをしたこちらの曲ですが、懐かしさと新しさの狭間にある「ポップ」のツボを再び刺激されたような不意打ちを受けました。
また、グローバルで常にポップの最前線に立ち続けているMaroon5も彷彿とさせます。彼らの曲でとんでもないロングランのヒットをしていたSugarは、ロマンティックであまい結婚ソングですが、FIVE NEW OLDのこのアルバムに収録されているPlease Please Pleaseにもビタースイートな世界観が漂っています。
ボーカルHIROSHIが挙げるアーティストの数々
気になったのが、変幻自在な楽曲作りのバックグラウンドでした。私が驚いたのは、ボーカルHIROSHIが言及するアーティストの多彩さです。インタビューや自身のInstagramなどで彼が挙げていたアーティストは、例えば山下達郎や竹内まりや、スティーヴィー・ワンダー、プリンス、a-ha、カミラ・カベロ、トム・ミッシュ、ハイムなどなど。ザ・キングストーンズなどの昭和歌謡も押さえています。これだけでも、彼の音楽ライブラリの幅広さが一目瞭然です。もちろん、気分に合わせてさまざまな音楽を聞くことは音楽ラバーの誰しもが行うことではありますが、彼の場合、視聴体験ではなく楽曲制作にまでこの幅広さを反映させているわけです。
ここで支柱となっているキーワードは「ポップ」なのではないでしょうか。ポピュラーという言葉だけではもはや言い表す事のできない、年齢や性別を問わず、ポップスターとしてその存在を確立し続けているアーティストたちの名曲の数々が、FIVE NEW OLDのフロントマンの音楽性を刺激しているのです。
FIVE NEW OLDはブレずにポップを貫くパンクスなのだ
そもそも、ポップミュージックを定義をすること自体、実は難しい行為なのかもしれません。それは音楽の特定のリズムや、アーティストの思想などでカテゴライズできるものではないからです。ただ一つ言えるのは「誰しもが口ずさめるキラーフレーズや、体を動かしたくなるようなメロディ」であること。FIVE NEW OLDが特定のジャンルやメロディにこだわらず、変幻自在な音楽性を有しているのは、まさにこの「ポップ」を踏襲しているからなのかもしれません。
そういった視点で聴いてみると、FIVE NEW OLDの音楽性とは、事細かに細分化されている現在の音楽ジャンルに対する一種のアンチテーゼにも思えてきます。その姿勢って、なんだかすごくパンクっぽい。だから彼らは、いつだってブレずにポップを貫くパンクス、なんだと思います。
【FIVE NEW OLD 2019年全国ツアー】
9/22(日) 兵庫 太陽と虎
10/5(土) 新潟 CLUB RIVERST
10/6(日) 石川 AZ
10/14(月) 北海道 cube garden
10/18(金) 神奈川 BAYSIS
10/20(日) 宮城 MACANA
10/24(木) 広島 Cave-Be
10/26(土) 香川 DIME
10/27(日) 愛知 BOTTOM LINE
11/9(土) 大阪 味園ユニバース
11/22(金 )福岡 DRUM Be-1
11/23(土) 熊本 B.9 V2
11/24(日) 山口 LIVE rise SHUNAN
11/29(金) 東京 EX THEATER ROPPONGI
【ミーティア先行】
受付日時:6/21(金)12:00~6/25(火)23:59
https://l-tike.com/st1/meetia-fno
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