2017年最重要バンドの一つ、DATSの登場!
恐らく今回の「exPoP!!!!!」で最も注目度が高かったであろうDATS。各所で高評価を受ける彼らは、この日もやはり圧巻のステージを見せてくれました。デビュー盤『DIVE(Some boy収録)』以前のDATSの姿は、もう跡形もない。そう書くと往年のファンは残念に思うかもしれないが、実はこのベクトルでの進化は今に始まったことではないように思う。例えば、この曲。
DATS – 『Intro』
この曲が発表されたのは2年前だから、この時点で『Mobile』(あるいはyahyel)に繋がる伏線はあったわけだ。レーベルを移籍したことにより、ついにダンスミュージックをバンドの核として据えることに成功したのである。
DATS – 『Mobile』
で、ファンの総意としてあったのが、「『Mobile』がライブで演奏されるとどうなるのか?」ということ。実際に観てきた者として、スパッと結論から言いましょう。かなり再現度は高いです。もちろんそれは「ボタンプッシャー」と揶揄されるものではなく、しっかりと生演奏された上で再現性があった。杉本亘(Vo.)がサンプラーを楽器のように扱い、各パートもそれに応える。「各パート」とあやふやな言い方をしたのは、ドラムの大井一彌以外は、もはや特定の楽器を持たないからだ。各々がギターを弾き、ドラムを叩き、サンプラーを操る。METAFIVEにも似た予測不能っぷり。さながら楽器のゲリラ戦でした。どこからどのような音が飛び出すのかまるで分からない。
恐ろしいのは、これでまだ完成形でないこと。随所に余白があり、恐らく試作段階のところも多いのだろう。まだまだ奥行きがある印象を強く受けた。それは音楽性に限らず、バンドの可能性にまで射程を伸ばしているように思う。『Candy girl(Remix)』で締めくくられたDATS劇場の後、会場内は上気したざわめきに溢れていた。
静かなるインパクト。ロマンチックにトリを飾ったPAELLAS。
最後に登場したのは、妖艶なインディーR&BバンドPAELLAS(パエリアズ)。イベントのトリに相応しい、湿り気のある情念が身を包むようなライブだった。改めて、彼らの最新作である『Pressure』は名盤だと思った次第です。音の作りに「抜き差し」があるとすれば、本作は「抜き」の妙がある。引き算の美学に基づいたサウンド。例えば『Fire』。音数はそれほど多くはないけれど、それゆえにMATTON(Vo.)の歌声がよく映える。
PAELLAS – 『Fire』
足し算よりも引き算が難しいとはよく言われるが、『Pressure』では間違いなくそれに成功している。『The Strangers』も『Anna』も、ほどよい抜け感で聴かせてくれた。
忘れてならないのは、やはりANAN(Gt.)の存在。彼はNever Young Beachのギタリストとしても活躍しているが、PAELLASでプレイするときはややカラーを変えてくる。具体的に言えば、ストロークスからナイル・ロジャースへのジョブチェンジ。 滑らかでリズミカルなカッティングが耳を引く。この日のライブでは、『Night Drive』に際立っていた。
PAELLAS – 『Night Drive』
「熱狂」とか「狂乱」という言葉は似合わないけれども、しっかりオーディエンスに爪痕を残す。『exPoP!!!!!Vol.95』のラストアクトを担ったのは、そんな独特の雰囲気を纏ったバンドだった。まさしく、「夜明け」を彩るに相応しい。終演後、会場内はアルコールでは味わえない奇妙な酩酊感に包まれていた。
Photography_小田部伶
Text_Yuki Kawasaki
■Sentimental boys
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■バレーボウイズ
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■踊る!ディスコ室町
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■DATS
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■PAELLAS
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CINRA × Eggs Presents
『exPoP!!!!! Volume95』
会場:TSUTAYA O-nest
2017/03/30
<関連リンク>
http://expop.jp/
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