R-指定とDJ松永の2人からなるヒップホップ・ユニット、Creepy Nuts。2017年のメジャーデビュー以降着実にステップアップを遂げ、9月4日には『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初登場。俳優の菅田将暉とコラボした新曲「サントラ」を披露し、大きな話題を呼んだ。11月には初となる日本武道館ワンマンもアナウンスされており、彼らが今もっともアツイヒップホップユニットの一つであることは間違いない。そんなCreepy Nutsのこれまでの軌跡を辿ってみよう。
「日本一」のMCと「世界一」のDJになる2人が、大阪で出会う
日本最高峰と言われたMCバトル大会「ULTIMATE MC BATTLE」で2012年から2014年までの3年連続でグランドチャンピオンに輝いたR-指定と、2019年に世界最大のDJ大会「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019」のバトル部門に出場し、優勝を果たしたDJ松永。そんな「日本一」のMCと「世界一」のDJの2人によるヒップホップ・ユニットがCreepy Nutsだ。
2人が出会ったのは約10年前のこと。当時コッペパンというグループで活動していたR-指定が、コッペパン主催のイベントを大阪で開催。イベントにDJ松永が参加したことがきっかけとなった。
イベントには全国から強そうで怖そうなラッパーが集っていたが、R-指定とDJ松永はそんな場の空気になじめずにいた。会場でお互いを見つけると、2人はすぐに意気投合。その後東京で活動する機会が増えたタイミングでCreepy Nutsを結成した。
大多数になじめない2人だからこそ作られた音楽が話題に
2016年にはEP『たりないふたり』でデビューを果たす。タイトルトラックはお笑い芸人の山里亮太とオードリーの若林正恭が、人見知りでコンプレックスにまみれた2人ならではの笑いを展開するバラエティ番組『たりないふたり-山里亮太と若林正恭-』に影響を受けた楽曲。いわゆる「陽キャ」な価値観を皮肉りながら、そのコミュニケーションになじめない自分たちをコミカルに描いて共感を呼んだ。
このEP『たりないふたり』では、トリッキーながらキャッチーで耳に残るメロディ、そしてヒップホップには珍しい自虐的なリリックが提示された。これはCreepy Nutsの持ち味として、2017年リリースの2nd EP『助演男優賞』にも引き継がれていく。
『助演男優賞』は<どうあがいてもしゃあない 俺ら主役の玉じゃない…>というサビの歌詞が強烈な「助演男優賞」にはじまり、サブカルにも不良にも属することができない自分の立ち位置を歌った「どっち」、SNSで何でも上から目線で批評してくる人物を描写した「教祖誕生」など5曲を収録したEP。
この中でCreepy Nutsは世間の大多数になじめない自分たちをこれまで以上にさらけ出し、その立ち位置を確固たるものにした。ユーモアあふれる「助演男優賞」のMVも話題を集め、オリコンチャートでは16位を獲得。赤丸急上昇中のアーティストとして、さらに認知度を高めていく。
2017年には『高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。』でメジャーデビュー。権利処理に不備があったことから発売日が後ろ倒しになるなどのトラブルもあったが、そんな失敗談も笑い話として取り込みながら、確かなスキルとアイロニカルな世界観で着実に人気を集めていく。
Creepy Nutsと「ラジオ」の、深くて熱い関係
そんなCreepy Nutsを語る上で欠かせない存在となっているのがラジオだ。2018年4月には、気鋭のアーティストやお笑い芸人がパーソナリティを務めるニッポン放送の『オールナイトニッポン0(ZERO)』の火曜日に抜擢。キレの良い暴走トークが深夜ラジオリスナーから大きな反響を呼び、新たなファン層を獲得することになった。
昔からラジオが好きで様々な番組を愛聴していたという2人は、デビューシングルのトラック2で「“悩む”相談室メジャーデビュー特別編」と題し、70分近いラジオを展開している。
また、2019年8月にリリースしたミニアルバム『よふかしのうた』、2020年8月26日リリースの最新作『かつて天才だった俺たちへ』では、それぞれ収録楽曲の合間に2人のトークを収録した「ラジオ盤」も制作。このことからも、2人のラジオへの偏愛がうかがえよう。
さらに、9月4日に『ミュージックステーション』で披露した菅田将暉とのコラボ曲「サントラ」もラジオがきっかけで生まれた楽曲。2019年8月にCreepy Nutsの2人が菅田将暉がパーソナリティを務める『菅田将暉のオールナイトニッポン』に出演した時にコラボ曲制作の話が持ち上がり、1年に及ぶやりとりの末に「サントラ」が完成したという。
「サントラ」はCreepy Nutsには珍しいロックチューンとなっており、<悩み事 隠し事 私事だらけを書く仕事/悩み事 隠し事 のみこんで笑顔でやる仕事>と、ミュージシャンのCreepy Nutsと俳優の菅田将暉、それぞれの仕事哲学を織り交ぜた歌詞となっている。ミュージックビデオの撮影は、もちろん楽曲が生まれるきっかけとなったニッポン放送のラジオブースだ。
新作『かつて天才だった俺たちへ』はユニットの全てを詰め込んだ1枚
菅田とはこの「サントラ」の他、THE HIGH-LOWSの「日曜日よりの使者」のカバーでも共演している。「日曜日よりの使者」は、ロックフェス「VIVA LA ROCK 2018」でCreepy Nutsが亀田誠治、ピエール中野らとともに組んだスペシャルバンド「VIVA LA J-ROCK ANTHEMS」でカバーした一曲。菅田がこの時の映像を見てくれたことから実現に至ったという。演奏に参加しているのが亀田誠治、ピエール中野をはじめ、加藤隆史(東京スカパラダイスオーケストラ)、津野米咲(赤い公園)と「VIVA LA J-ROCK ANTHEMS」で共演した面々なのも注目だ。
最新作『かつて天才だった俺たちへ』にはこの2曲に加え全7曲を収録。露悪的なほど卑猥なリリックを連ねる「ヘルレイザー」から『アンナチュラル』『MIU404』などの脚本家・野木亜紀子が脚本を書いたドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』の主題歌「オトナ」、帝京平成大学のCMソングで、野心を抱く人を肯定するメッセージソング「かつて天才だった俺たちへ」など、収録曲はバラエティ豊か。ミニアルバムながらCreepy Nutsの音楽性やキャラクターを存分に感じられる1枚となっている。
Creepy Nutsは11月12日には初となる武道館公演も控え、今後さらなるブレイクを果たすことは間違いないだろう。高いスキルと独自のユーモアを武器にヒットの階段を駆け上がる2人から、この先も目が離せない。
Creepy Nuts公式サイト:http://creepynuts.com/
Creepy Nuts公式Twitter:https://twitter.com/creepy_nuts_
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