COMEBACK MY DAUGHTERSを紐解く
COMEBACK MY DAUGHTERSは、1998年に結成されたロックバンドです。2004年にリリースしたアルバム「SPITTING KISSES」からHi-STANDARDの横山健が創立したレコードレーベル、PIZZA OF DEATH RECORDSに所属しており、その後2012年の日本コロムビア移籍時には通算5枚目のアルバム「Mira」をリリース。現在は自主レーベルとしてインディーズシーンに戻り、活動を続けています。
現在のメンバー構成はスリーピース。ギターボーカルの高本和英とギターのCHUN2、ベースの渡辺将人が、メンバーとして活動しています。
彼らのこれまでのメンバーやレーベルの変遷はちょっぴり複雑ですが、彼らの楽曲にはブレないシンプルな芯のようなものを感じます。普遍的というか、激動のバンド変遷にも関わらず、彼らの音楽性ってまったくブレないような気がするんですよね。
アルバム「EXPerience」がリリースされた2008年には、高本とCHUN2が多大なる影響を受けた音楽として「エモ」を挙げていました。現代っ子なら一度は耳にした、または口から出てしまったことがあるであろう「エモい」という言葉も想起させられますが、この「エモ」は別名「エモーショナルロック」であり、ハードコアやパンクを起源とする音楽ジャンルのひとつです。1990年代後半頃に、シアトルで活動するSunny Day Real Estateから現在のエモにつながっていく音楽性が確立されていきました。それまでのパンクやハードコアに込められていた攻撃的なイメージよりも、自己内省的な感情が込められた激しいロックサウンドが特徴といえるでしょう。
エモと彼らをつないでいく音楽
こちらの楽曲で流れ出すのは、音楽を知らなくても耳馴染みがあるであろうa-haの「Take on me」がリスペクトされたリフです。が、実はこれ、a-haの「Take on me」をカバーしたCap’n Jazzからのリスペクトなのだそう。幾重にもなる音楽と音楽のクロスオーバーが、彼らのサウンドをより肉厚なレイヤーへと押し上げていったのです。
また、2013年には日本コロムビアへ移籍し、5枚目のアルバム「MIRA」をリリース。この当時、在籍していたキーボードの小坂裕亮による突然の脱退がありつつも、結成15年目にして異色のメジャーデビューを果たします。
この時、彼らが目指したのは「自分たちらしい音楽」。プログレやオールドスクールなニュアンスを織り混ぜつつ、COMEBACK MY DAUGHTERSとして完成されたサウンドを作り上げ、一枚に収められた作品となっています。今聞いても、瑞々しさがあって6年前の作品とは思えない…。
これからもきっと、彼らはライブシーンでかき鳴らし続ける
最近では、メジャー契約を結んでいたコロムビアからも離れ、独立して活動しているCOMEBACK MY DAUGHTERS。現在も色褪せることなく、ライブハウスを盛りあげ続けています。注目すべきは、彼らの対バン相手の面々。踊 Foot Worksやホームカミングスなど今をときめく若手アーティストから、the band apartや古巣を共にするHUSKING BEEなどのベテランのバンドまで、幅広いグループとコラボレーションをしています。
再生ボタンを押してからイントロが始まり、歌いだす声の透明度の高さは、何度も何度も聞いてきたはずなのに、いつもなぜか新鮮に思えてしまうーー。私がCOMEBACK MY DAUGHTERSに抱く言葉にならない感情を言葉で表現するならば、こういうことかもしれない。
ところが、ボーカル高本和英の声は必ずしも文字通りに透き通った100%クリアという訳でもありません。むしろ、どちらかといえば声を張り上げる瞬間のざらついた感じや言葉が落ちていくような歌い方やライブバンドとも評される彼らの演奏には、粗野でラフな印象さえあるかもしれません。
けれども、なぜか彼らの音楽は透明で純度の高いどこかへと私を連れて行ってくれる。例えばジョンとヨーコの「イマジン」を初めて聞いたときにも近いような、神聖っぽい泥まみれの美しさが余韻と一緒に込み上げてくるんですよね。まるで汚れまみれになりながら全力で遊んでいる子どもが持つ、”純”なエネルギーが注ぎ込まれたノスタルジーとでもいうのかもしれません。
どんなシーンにいても、どんなレーベルでもどんなメンバー構成でも、COMEBACK MY DAUGHTERSはこれからも確固たる存在感を持ち続け、ライブハウスを沸かし続けていくのでしょう。
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