初のオリジナル楽曲『10月無口な君を忘れる』でブレイク。注目の4ピースバンド・あたらよのすべて
『10月無口な君を忘れる』という楽曲を知っているだろうか。
2020年11月末に公開された同曲のMVは、公開後瞬く間に再生数が100万回に。その後も爆発的に拡散され続け、6月末時点では2,000万再生も見えてきた。
演奏するのは、結成から2年に満たない4ピースバンド・あたらよだ。映像が公開された時点では、リリースも未発表という異例の早さでのブレイクとなった。
あたらよとは、いったいどのようなバンドなのだろうか。2020年代バンドシーンの牽引が期待される新星の秘密へと迫る。
彗星のごとく現れた新世代バンド・あたらよとは?
あたらよは、「悲しみをたべて育つバンド。」をキャッチコピーとする男女混成バンド。2019年、音楽専門学校のプロミュージシャン学科に在籍していた、ひとみ(Vo.&Gt.)、まーしー(Gt.)、たけお(Ba.)、たなぱい(Dr.)の4人で結成された。
ひとみを中心に、バンド内で作詞・作曲をおこない、アートワークや映像もセルフプロデュースする。バックボーンに裏付けられた音楽的素養の高さと、Z世代のアーティストらしい多才さ・多彩さを両立する、いま注目の4ピースバンドだ。
バンド名の「あたらよ」とは、和歌などで使われてきた古語「可惜夜(あたらよ)」に由来する言葉で、「明けるのが惜しいほど美しい夜」という意味。キャッチコピーやバンド名を地で行く叙情的な表現で、2020年代のバンドシーンを牽引する活躍が期待されている。
あたらよのメンバー
ひとみ
@tommy_0124新曲です。最近は「別れ」ばかり頭に浮かびます。#弾き語り #ギター #オリジナル楽曲 #別れ #sing #guitar #singing♬ オリジナル楽曲 – Tommy – ひとみ/あたらよ
あたらよのVo.&Gt.。
シンガーソングライターとして活動を始めようとしていた2019年、まーしー、たなぱいからの誘いを受け、バンドを結成。あたらよでは楽曲の作詞・作曲をおこなう。
プレイヤーとして音楽の道に進むことを決心したのは、入学を見据えて専門学校を見学した高校生のとき。シンガーソングライター・のぐちのパフォーマンスがきっかけで、当初志望する予定だったPAの学科ではなく、プロミュージシャン学科を選択した。
影響を受けたミュージシャンは、DREAMS COME TRUE。SNSの個人アカウントにおいては、あたらよ楽曲のセルフカバーをはじめ、個人でのオリジナル楽曲、他ミュージシャンのカバーなど、1人の音楽人として弾き語り形式での発信を続けている。
まーしー
あたらよのGt.。
ひとみの作る楽曲のクオリティの高さに惚れ込み、Dr.のたなぱいとともに、彼女をバンド結成へと誘う。
影響を受けたミュージシャンは、ELLEGARDEN。ひとみが生み出す楽曲の世界に、ロックテイストの風を吹き込む。
たけお
あたらよのBa.。
3人(ひとみ、まーしー、たなぱい)での結成後、ベースを探していたあたらよに加入。メンバーとは、もともと知人という関係性だった。
影響を受けたミュージシャンは、UNISON SQUARE GARDEN。定評のあるアレンジセンスで、あたらよの世界をモノクロからカラーに変えていく。
たなぱい
あたらよのDr.。
まーしーとともに、ひとみをバンド結成へと勧誘。あたらよ誕生の立役者に。
影響を受けたミュージシャンは、RADWIMPSとSnarky Puppy。ひとみの声、歌詞、曲を1番に考えたドラミングで、あたらよの世界をリズムから支える。
あたらよにとって大きな分岐点となった楽曲『10月無口な君を忘れる』
あたらよが話題のバンドとなるまでの分岐点を振り返るとき、必ず触れておかなければならない楽曲がある。彼ら初のオリジナル曲『10月無口な君を忘れる』についてだ。
当初、学内オーディションのためにつくり込まれた同曲は、4人の目標どおり、オーディションで一定の評価を獲得したが、その後の活動の停滞期の中で、“過去の作品”となりつつあった。楽曲としては完成を迎えていたものの、MVはつくられておらず、“学生時代の思い出”という立ち位置を拭えない、ありふれたレパートリーとなっていたのだ。
しかし、ある日、ひとみが映像制作へと声を上げたことで『10月無口な君を忘れる』をめぐる動向は急転していく。
2020年11月末、YouTube上に公開されたMVは、立ち上がりこそ再生数が伸び悩んだが、やがてTikTokや、バイラルメディアを中心に人気に火がつき、翌年2月には100万再生を突破した。
こうした反響を受け、あたらよは同曲を配信リリース。すると、TikTokで人気急上昇チャート1位に、SpotifyでVIRALチャートで1位を獲得、LINE MUSICでもデイリー1位になるなど、快挙を成し遂げた。MVは以後も爆発的に再生数を増やし続け、2021年6月時点で1,800万再生を超えている。
あたらよが結成から約2年という短い期間で、話題のバンドの地位に上り詰めた背景には、同曲の映像制作があった。
そして何を隠そう、あたらよの結成前夜、まーしーとたなぱいが聴き、クオリティの高さに驚いたひとみの楽曲こそ、『10月無口な君を忘れる』だったのだ。この楽曲の存在なしに、4人のこれまでを語ることはできない。
『10月無口な君を忘れる』はなぜ、若い世代の心をつかんだのか
いったいなぜ『10月無口な君を忘れる』は、シーンの動向に敏感な若い世代の心をつかんだのだろうか。
その秘密は、楽曲の持つ洗練された雰囲気と、その下に描かれた日常的で共感を呼ぶ切ない歌詞、それらがもたらす感傷を何倍にも増幅するひとみのエモーショナルな歌声にある。
「2人の最後の朝」を切り取ったナレーションからスタートする同曲。MVの冒頭には、合鍵を置いて部屋をあとにする主人公の姿が描かれている。
本来、音楽というものは歌詞の世界が現実的でパーソナルであればあるほど、本当の意味で共感する(できる)人間を限定していくアートだ。しかし、『10月無口な君を忘れる』では、「現実的でパーソナルな2人の関係」を取り上げながらも、これまでうまく言葉にされてこなかった誰もがしている失恋体験を、ありありとした言葉で描き切っている。
変わってしまうのなら 終わりがあるなら 初めから何も要らなかった
こんなに痛いなら知りたくなかったよ 優しさなんて
なんにも言わないくせに顔にはよく出るから 正解ばかりを探して
これらの表現に代表される強がりにも似た回顧は、10代・20代の淡い恋愛につきものだ。そうした切ない風景を、聴きやすく洗練されたアレンジで届けたことが、(若い世代のリスナーが多い)バイラルメディアを起点にした浸透につながったのではないだろうか。
曲中に散りばめられた印象的な歌詞は、ひとみの、時に繊細かつ時にぶっきらぼうな歌声によって、エモーショナルにリスナーの耳へと届けられる。MVに寄せられたコメントの中には、同曲の歌詞に自身の失恋を重ね合わせるファンの姿もあった。
楽曲の世界観に似た体験を人に話したくなるのと同様に、個々の体験に似た『10月無口な君を忘れる』の世界も、彼らのそのような発信を通じて伝播していったに違いない。その根底に、切なさと聴きやすさが絶妙なバランスでマッチした同曲の音楽性があったのは疑いようのない事実だ。
試金石となった2ndデジタルシングル『晴るる』で、あたらよが見せた今後への期待感
このようにして、たちまち話題のバンドとなったあたらよは2021年4月、2ndデジタルシングル『晴るる』をリリースした。
前作『10月無口な君を忘れる』から1か月という短期間で発表された同曲は、イントロを駆け巡るギターの軽やかなフレーズが春の爽やかさを連想させるナンバー。たった1曲のキャリアでブレイクの階段を駆け上がった彼らにとって、試金石ともなる2曲目のオリジナル楽曲だ。
一聴してわかるのは、彼らの生み出す音楽が、活動開始から間もないバンドのそれではないということ。今後もあたらよはリリースを重ねるにつれて、大きく成長した姿を私たちに見せつけてくれるだろう。
『10月無口な君を忘れる』だけが有名なバンドではなく、シーンを牽引するバンドに。期待に胸を膨らませるには、十分な第2作だった。
6/30には待望の3曲目『8.8』がリリースに
そして6月30日には、3rdデジタルシングルとなる『8.8』をリリース。
シングルの発表は3か月で3作目。『10月無口な君を忘れる』がトレンド化した勢いをそのままに、人気を不動のものとするべく制作された意欲作である。
タイトルの「8.8」とは、恋人関係だった2人が一緒に過ごしてきた部屋の広さのこと。1人で過ごすには広すぎるこの部屋で、主人公は楽しかった日々を振り返る。
『10月無口な君を忘れる』ヒットの要因となった、洗練されたサウンド、日常的で切ない歌詞、エモーショナルな歌声は健在。バラードであるからこそ、よりまっすぐに聴く人の心へと突き刺さってくる。
あたらよは今後、どのような景色をファンに見せてくれるのか。彼らの物語はまだ始まったばかりである。
あたらよ – 10月無口な君を忘れる / THE FIRST TAKE
3rdデジタルシングル『8.8』
3rdデジタルシングル
6/30リリース!
あたらよ
公式Twitter
https://twitter.com/Atarayo_band
公式Instagram
https://www.instagram.com/atarayo_band/
公式YouTubeチャンネル
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