一般の音楽アーティストとは一線を画した独自のメンバー観と、その怪しげな色気と癖になるサウンドに定評のあるアートロックバンド、「雨のパレード」をご存知だろうか。インディーズでのラストシングルで一時入手困難となるなど話題になった「Tokyo」に込められた想いと、彼らのメンバー観の秘密、そしてその魅力に迫る。
自らを「創造集団」と名乗る、彼らの独特のメンバー観。
音楽アーティスト、という括りで彼らを語るのは少し失礼なのかもしれない。雨のパレードには、独特の「メンバー」観があり、いわゆるアーティストと考えられている楽曲の制作と演奏を行う4人のバンドメンバー以外に、音楽以外の部分を担当するメンバーとして、なんと「ペインター」「ジュエリーデザイナー」「コスチュームデザイナー」が所属するグループで、彼らは自らを「創造集団」と名乗り、総合芸術としての音楽の発信をコンセプトとして活動する、唯一無二の存在なのだ。カルチャーというものに興味がある、と語るメンバーの狙いは、普段CDを購入しない層へのアプローチなのだそう。音楽という一種の芸術であり表現を、よりクリエイティブに作り替え、彼ららしいものに昇華させるその演出力は圧巻だ。
なぜ音楽に携わるメンバー以外の人員も、メンバーの位置づけなのか。
ヴォーカルを担当する福永曰く、「いろんなカルチャーに興味があって、絵も描きたいし、服も作ってみたい。その中心に音楽があるという感覚なんですね。」とのこと。音楽という確率された一つのカルチャーはそれだけで完結するものであるという固定概念を、彼ら一人ひとりの持つ柔軟な発想と想像力によって見事に覆している。そのこだわりが現れたのが映像の制作。シンセサイザーやパーカッションなど、多彩な音色を使いこなした彼らのサウンドに、ペインターとジュエリーデザイナーとコスチュームデザイナーの3人がグループのメンバーとして機能することで、まるで現代アートやインスタレーションのような芸術の姿に完成されていくのだ。
インディーズ最後のシングル、「Tokyo」に込められた想いとは。
総合芸術としての音楽への挑戦と、上京して東京で成功するために足掻く心境を見事に表現した「Tokyo」。このシングルは彼らのインディーズ最後のシングルとなり、入手困難となるほどの人気と話題に。彼らの抱く一種の「フラストレーション」と、東京という街のもつ刺激的な楽しさという相反する面が込められたこの一曲は、ファンの間では「名曲」として人気となっている。同曲でも、もちろん彼ららしい映像へのこだわりが。東京の街と美しいサウンドの重なりが、哀しくもあり虚しくも感じてしまう、怪しくも不思議な魅力に溢れた映像で、ファンならずとも一見の価値ありのMVに仕上がっている。これからも、総合芸術としての音楽を発信し続ける彼らに注目だ。
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