2016年2月24日にサードフルアルバム「世界収束二一一六」をリリースしたamazarashiの「世界分岐二○一六」ツアー追加公演が2月28日にZepp Tokyoで開催された。
amazarashiのライブは、アーティストが観客に向けて演奏を披露するという通常一般的なライブスタイルよりもより非現実的で濃い体験を僕らに与えてくれる。アーティストと観客の間には、巨大な紗幕が挟まれ、そこにはボーカル・秋田ひろむが紡ぐ圧倒的な歌詞のタイポグラフィ、世界観をより引き立てるアニメーションが映像として映し出される。まさに”世界分岐”と掲げられたツアータイトル通り、僕らそれぞれの映し出す世界が、これまでとはまったく別物の世界に分岐してしまうような、それくらいのとてつもないインパクトを与えたライブだったように思う。
ライブは、「ワンルーム叙事詩」収録の「コンビニ傘」からスタート。「青森から来た秋田ひろむです」と簡潔に挨拶すると、さっそく新しいアルバムから「タクシードライバー」を披露。「タクシードライバー」は、秋田ひろむがタクシーの運転手の会話から着想し、できあがっていった楽曲だという。この重く暗い、だがどこかへ行きたいという希求にもあふれた楽曲から、アニメ「東京喰種√A」のエンディングテーマとしてもおなじみの「季節は次々死んでいく」へとライブは進んでいく。躍動的な巨大タイポグラフィを伴って僕らの心にその言葉の数々が次々と突き刺さってくる。これほどまでに言葉が強烈な力を持つライブが果たしてあっただろうか。
その後、ピアノとギターの美しいイントロから始まる「ワンルーム叙事詩」、マリア像の映像とともに「性善説」が披露され、「名前」「雨男」「夏を待っていました」「ラブソング」「スピードと摩擦」と新旧の人気楽曲が立て続けに演奏される。「夏を待っていました」「ラブソング」「スピードと摩擦」では楽曲のミュージックビデオが紗幕に映し出されたが、パソコンやテレビよりも遥かに大きなサイズのスクリーンで見るミュージックビデオはとても大きなインパクトを僕らに与えてくれた。amazarashiにとって楽曲も当然のことだが、その世界観を何倍にも増幅させるための装置としてのビジュアル・映像はとても大きな要素だ。改めて今回、ミュージックビデオの質の高さにも驚かされた。他のアーティストよりも確実に一段階研ぎ澄まされている。
そして、アルバムの中でも重要な位置を占める楽曲「エンディングテーマ」が流れると、会場には涙を浮かべる観客の姿も見られた。人生の最期を迎える主人公が生を渇望する姿を描いたこのナンバー。改めて、生とは何か、死とは何か、人生とは何かを僕らに強く問いかけてくる。その後、ポエトリーリーディングナンバー「しらふ」、しっとりと聴かせる「美しき思い出」「収束」と楽曲は続き、ニューアルバムにも収録されたアップテンポなナンバー「多数決」で会場のボルテージは最高潮に。「賛成か 反対か 是非を問う」という歌詞にあわせ。映像には”賛成”と”反対”の文字が鮮烈なカラーリングで映し出されていた。
ライブはラストスパート、観客を銀河鉄道に乗せ宇宙へと連れていく。美しい宇宙の映像に乗せて、多くの人に勇気を与えたであろうamazarashiの代表曲「スターライト」を奏でる。あまりの美しさに鳥肌がたってしまったほどだった。「最後の曲です、また会いましょう」と一言だけ観客へ向け語りかけると、ラストの楽曲「ライフイズビューティフル」へ。「スターライト」から「ライフイズビューティフル」への流れは本当に素晴らしく、家で楽曲を単に聴いているだけでは味わうことができない、生に満ち満ちた体験を与えてくれたように思う。確かにamazarashiのライブでは、音楽が強く鼓動を打ち、僕らに語りかけてくるように感じるのだ。
アンコールはなし。最初から最後の楽曲まで文句のつけようもないパフォーマンスを見せてくれた。アルバムタイトルにも掲げられた”二一一六年”まではあと百年。今後も未知なる体験をamazarashiは僕らに与えてくれるだろう。そんなことを楽しみにしつつこれからの世界も歩んでいきたい。
○amazarashi「世界分岐二○一六」ツアーZepp Tokyo追加公演セットリスト
1.コンビニ傘
2.タクシードライバー
3.季節は次々死んでいく
4.ワンルーム叙事詩
5.性善説
6.名前
7.雨男
8.夏を待っていました
9.ラブソング
10.スピードと摩擦
11.エンディングテーマ
12.しらふ
13.美しき思い出
14.収束
15.多数決
16.スターライト
17.ライフイズビューティフル
SHARE
Written by