みんな、映画が好きだった。
俳優&クリエイターのマネジメント集団・ディケイドが設立25年を記念して製作した大人の青春映画、『AMY SAID エイミー・セッド』。「みんな、映画が好きだった」というのは、本作のキャッチコピー。この言葉に噓偽り無く、本作は映画と全ての映画人に対する賛歌でした。ジャンルとしてはミステリーにカテゴライズされますけれども、その背後には映画への深い愛情しかない。そんな作品です。
映画『AMY SAID エイミー・セッド』
本作は9月30日より全国順次公開されており、ミーティアはテアトル新宿にて行われた出演者舞台挨拶付きの上映会にお邪魔しました。立ち見のお客さんも多く居たほどの盛況ぶり。
設立25周年を迎えたディケイドのプライドと決意
全国規模の映画から単館系まで、幅広いレンジを持つ役者が多く名を連ねるディケイド。河瀨直美や園子温、熊切和嘉など、国内外で評価の高い監督と関係性が強いです。村上淳や三浦誠己、中村優子らをマネージメントしており、シネフィルからも一目置かれている存在ですね。若手では、村上淳の実の息子でもある村上虹郎が所属しております。
そんなディケイドが設立25周年を記念して製作した『AMY SAID エイミー・セッド』。冒頭でも書いた通り、本作は映画への愛と、製作者としての葛藤があふれんばかりでした。
映画の始まりに浮かびあがる「Dear Old Friend」。ここで言う「ともだち」とは、長年苦楽をともにしてきた友人だけでなく、映画を愛し続けてきた、僕たち観客にも向けられた言葉なんじゃないかな。今回の上映会では「映画サークルに入っている学生であれば料金割引」という粋なサービスも。映画に関わり、映画を愛する人々に向けられた作品という意思がヒシヒシと伝わってきます。
以下、本作のあらすじ(公式サイトより引用)。
映画研究会の仲間9人。その中のファムファタル的な存在だったエミ(柿木アミナ)がある日突然彼らの人生からいなくなって20年。彼女の命日に久しぶりに集まったのは、パン屋を営む朝田(三浦誠己)、無農薬野菜をつくる飯田と直子(渋川清彦、中村優子)、売れない俳優岡本(山本浩司)、キャリアウーマンの美帆(石橋けい)、 介護士の五島(松浦祐也)、IT会社を経営する木塚(テイ龍進)。「わたし本当は知ってるの、エミが死んだ理由。ずっとみんなに言いたかった」突然の直子の言葉に、それぞれの中で止まっていた時間が動き出す。そしてそこに訪れる、招かれざる客、川崎(大西信満)。彼が現れた理由は、朝田にとって思いもよらないものだった。かつて同じ夢を見て、同じ夢に破れた。20年後、僕たちはようやく本当に語るべきことを語り合える。生きること、死ぬこと、そしてまた生き続けること。エミが最後に言いたかった言葉を探す、ある一夜の物語。
何度も言いますけれども、本作は単なるミステリーではありません。ミステリーというフォーマットを借りて、映画にまつわる具象、手法、メタファーが映し出されているのです。
物語の大半は、とあるジャズクラブ内で展開されていくワンシチュエーションものですが、この方法論は過去の名作を照らし出していますよね。古くは『十二人の怒れる男』。あらゆる表現の選択肢の中からあえて「ワンシチュエーション」という舞台設定を採用したように思います。
会話の中にも映画が好きな人にとってはたまらない小ネタが次々と出てきます。フランシス・フォード・コッポラ(ゴッドファーザーの監督)に関するウンチク。原節子への憧れ。ミア・ワシコウスカに似てるとか似てないとかの雑談。タランティーノ映画に出てきそうなセリフ回し。そして、これ見よがしに貼ってある『タクシー・ドライバー』のポスター。本当に、「Dear Old Friend」とはよく言ったものです。どこの世界に、これらの小ネタに反応しないシネフィルがいるのでしょう?僕は無理でした。登場人物が愛おしくて仕方なかったです。僕もそこに参加したい!なんて思ったりしました…
ミステリーというジャンルである以上詳しくは言えませんが、大橋トリオ(彼も本人役で出演)の書き下ろしの同名主題歌『AMY SAID』も出色の出来ですね。本稿冒頭に貼った予告動画で流れる曲が、まさしくそれ。この曲が投げかけるメッセージこそ、本作が打ち出した答えだと解釈しました。延いては、これからのディケイドの決意表明でもあるのでしょう。英詩にした意味も、きっとそこにある。
(次ページ: 関係者舞台挨拶の模様をレポート!)
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