「引きこもり八年」は事実じゃない
――少し込み入ったことを聞きますけど、自分のことを引きこもりだったとおっしゃってますよね。しかも、八年間も。
綿めぐみ あ、それは前のプロデューサーが勝手に書いたことで、実際には八年も引きこもってないんですよ。単に、高校生の時にあんまり学校に行ってなかったんですよね。行ったとしても、お昼ごはんの時間とか掃除の時間から行って、すぐ帰るっていう感じ。
――掃除しに行くみたいな?
綿めぐみ 掃除は、しない。
――しないんだ(笑)。
綿めぐみ 保健室で寝てるとか。遅刻回数は三桁でしたね。
――ほぼ遅刻してますね(笑)。
綿めぐみ でも担任の先生がすごい良い人だったんで、「学校来なよ」って毎日電話かけてきてくれて。だけど掃除の時間とかから学校行ってクラスの中入っても、「うわ、来た」みたいな感じの雰囲気になるし。私も机に座ってずっと漫画とか読んでました。
(天の声)教室に入れなかった話あったよね。
綿めぐみ ああ! 高校がすごい厳しい学校だったんです。で、休みすぎると単位が取れなくなるから、どうしても受けないといけない授業がある日は、その授業だけ受けに学校行くんです。だけど、授業が始まっちゃってると途中から教室に入れないんですよ。授業の邪魔になっちゃうと思って。それで、入ろうと思って何回も教室の前まで行くんですけど、入れなくて。で、もう一回下駄箱まで戻って、下駄箱からもう一回歩いて教室まで行くんですけど、また入れなくて。その繰り返しで、結局授業終わっちゃったみたいな。
――え? じゃあ一時間以上ずっと行ったり来たり? それ、誰も気づかなかったんですか? なんか徘徊してる子がいるよって。
綿めぐみ 気づかれないように気配を消してました。それで、保健室に行って「教室入れないんだけどどうしよう」みたいな話して。最終的には保健室も行き過ぎて出禁になっちゃって。だからトイレに入って、個室で、ずっとネットの友達とメールしてるか、ジャンプ読んでるかみたいな感じでした。
――それは画的にすごいつらい画ですね……。
綿めぐみ そうですね、画的にはつらいかもしれないですね。
――ちなみに、共学でしたか?
綿めぐみ 女子校です。
――学校の雰囲気自体が苦手だったんですか?
綿めぐみ 学校っていう施設が嫌いなんです。
――どうしてですか?
綿めぐみ なんか学校行くと具合悪くなっちゃう。
――それは、学校が持つ制度的な感じが嫌なんでしょうか?
綿めぐみ それもありますし、人がいっぱいいるのが苦手なんです。
――今このインタビュー、渋谷でやってますけど、大丈夫ですか? 人いっぱいだし、渋谷はテンション下がるって他のインタビューでも言ってましたけど。
(天の声)がんばって来たよね。
綿めぐみ がんばって来ました。
――約束の一時間も前に着いてましたもんね、頑張りすぎ(笑)。えっと、何の話でしたっけ? あ、そう、引きこもり八年っていう話ですね。じゃあこれは事実ではないと。公式に、引きこもり期間八年じゃない、って言っちゃってオッケーですか?
綿めぐみ はい、書いてくださって大丈夫です。高校がちょっと変な学校だったんですよ。もう入学してすぐ、「私はこの学校に洗脳されないで三年間通おう」って決めました。はじめはクラスメイトも「ちょっと校則厳しすぎるし変だよね」みたいなこと言ってたんですけど、だんだん洗脳されてって、みんな従順になっていったんですよ。そうして私は徐々に孤立していきました。でも、自分を貫いて、卒業式も出ないで卒業しました。
――へえー! めっちゃロックじゃないですか!
(天の声)そう、実はめぐちゃんは熱い人なんですよ。
私が変なんじゃなくて君たちが変なんだよ
――その高校で周りと同じように従順になっていたら、今の綿めぐみさんはいなかったわけですね。
綿めぐみ はい。クラスメイトたちから「変な子」みたいな感じで見られてたのがすごい悔しかったです。私が変なんじゃなくて君たちが変なんだよ、と思ってました。いわゆるお嬢様学校で、みんな学校にずっと守られながら生きてきた子たちなんで、君たち社会に出たらそんな甘えは通用しないぞ、と。なので、私は学校に行ってなかったけど今ちゃんとこうやって生きてるよ、っていうのを伝えたかったし、見せたかった。
――じゃあメディアにはこれからどんどん出て行きますか? 知らせるために。
綿めぐみ そうかもしれないですね。
――もう一気に売れる感じしかしないですよ。
(天の声)そう言ってくださる方も多いんですけど、まだ実感ないよね?
綿めぐみ うん。ないね。
(天の声)むしろ、どうやって綿めぐみを知っていただいたんですか?
――最初は、『災難だわ』のミュージックビデオですね。
(天の声)どこでそのミュージックビデオを見つけたんですか?
――YouTubeのオススメ欄に出てきました。それで一目惚れですね。調べたら、「2014年の夏に突如現れた美少女」みたいなことが書いてあって、あ、最近なのか、と。その時は他にも一曲か二曲アップされたんですけど、どれも素晴らしい曲で、もう絶対売れる、めっちゃ良いこの人、と思いました。それがちょうどアルバム『ブラインドマン』が出る少し前でしたね。本当にどの作品も素晴らしいと思います。でも、自分はあまり曲のことはわからないとおっしゃっていますよね。歌詞が意味わかんないとか普通に言ってるし。今もわからないですか?
綿めぐみ 今もそうですね。でも、わかんないで歌ってる方が、求められてる雰囲気が出るかなって。
――そう、まさにそうなんですよ。その雰囲気が、ものすごく世界観にマッチしてるんですよ。そういうところは、役者的・声優的だなと思います。自分の伝えたいことがあまりに強くあって、それを曲にするんだっていう気持ちが強すぎると、作られた曲の世界観とバッティングすることがあると思うんですよね。それがノイズになってしまう。今はそれがなくて、ないことがとても良い方に出ている。
(綿めぐみ インタビュー・後編に続く)
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