少々乱暴な表現をするとユニゾン流ポップに振り切った4枚目『CIDER ROAD』、そして攻撃的なロックに振り切った5枚目『Catcher In The Spy』を経て今回のニューアルバム『Dr.Izzy』をリリースするUNISON SQUARE GARDEN。スキルもアイディアも3ピースの限界値を軽々と超え、Xスポーツのプレイヤーのごとき驚きを提示する彼らの最新形である。
さて、その前に去年は「シュガーソングとビターステップ」のロングセラーや武道館公演など、従来のファン以外にリーチする場面も多かった彼ら。まずはそれら一連のトピックがバンドに与えた影響からインタビューをスタートしてみた。
インタビュー・文=石角友香
箔のつく何かに興味がないからこそ、逆に「じゃあやってやろう」と
ーー2015年はバンドにとって節目になることが多かったと思うんです。「シュガーソングとビターステップ」のロングセラーであったり、武道館公演もあったりということはUNISON SQUARE GARDENに何をもたらしたと思いますか?
斎藤宏介(Vo,Gt):まぁ多少の寄り道はありますけど、基本的にはずーっとUNISON SQUARE GARDENとしての活動を12年間続けてきてるバンドであって。その中で理解されないとか、伝えきれないもどかしさみたいなものをすごく感じてる中で、去年は遠くにいる人からすると目に見えて何かが起こったっていう1年だったとは思うので、そういう人たちをひっくり返せるんだなって思えたのは結構自分の中では大きかったですね。ずっと「なにくそ!」と思いながら活動してきた部分があるから。で、それは何で「なにくそ!」かと言うと、みんなから認めてもらいたい訳じゃなくて、認めてもらえる可能性がある人に届いてない時にすごい悔しいんです。それでも腐らず続けてきたことがわかりやすく形になったのかなっていう風に思ってます。
ーーそれはバンドがポピュラリティを獲得したということでは?
斎藤:基本的にポピュラリティというか、箔のつく何かにそんなに興味はないんですけど、裏を返すとそんなもので人の気持ちが変わってしまうぐらいのことだったらやってやろうみたいなところもちょっとあったりして。なんか…どうでもいいことで評価されたくないんですよね。なんかそういう人たちがひっくり返る様を見れた1年だったかな。で、逆を言えばそんなことでひっくり返ってしまうなら、そんなことで離れてしまう可能性もすごくあると思ったので、ちゃんと自分たちのことを好きだと思ってくれている人たちに対して、地に足つけて活動したいなと思ってはいますね。
鈴木貴雄(Dr):僕はどっちかというと意に介してないって方向に寄ってる人間で。そりゃ嬉しいことばっかりでした。でもそれはなんていうか表層の話で、一番大事なことでは全くなくて、一番大事なのは僕らがやったライブに人が感動したってことだったりとか、そこしか見てないですね。で、武道館であるとしたら、例えば5年前に来てくれた人がまだ好きでいてくれて、その場所に来てくれたことであったり、それが10年前の可能性もありますし、1年前かもしれないけど、グッときたからもう一回来てくれたはずで。そのグッとさせられた人がまた来てくれる喜びに替えられるものは僕はないんですよ、バンド活動において。それはそういうものが集まった結果として大きな数字になったかもしれないけど、ホント数字ってものは危険なものだからそこは見ていなくて。一つ一つ、その「グッときた」っていう人が集まったっていうことが嬉しいなとは思っているんですが。
田淵智也(Ba):外の人が言うトピックとして取り上げる去年あった出来事は自分としては知らない方がいいなって、今でも思うし、バンドとして別に主軸にする部分ではないから。そういう環境作りみたいなのは僕たちが知らないぐらいがちょうどいいなと思ってて。ま、テレビに出るとか、ちょっと大きいとこでやるとかいうのはただのボーナスステージでしかなくて。それは信頼してくれるスタッフの人が用意してくれた舞台に関しては、「あ、わかりました。特別ボーナスステージでやりまーす」ぐらいな感じで接するのがいいなと思ってて。ま、このバンドは最終的に「え?去年武道館?そんなんあったっけ?」みたいなところにまで持っていくことが、僕らとしてはやらなきゃいけない主軸なのかなと思うし。
ーー田淵さんがブログで「普段のバンド活動に戻すために」ってことをツアーについても書かれていたので、まさにそうだなと思います。
田淵:だからそう、普通のロックバンドでい続けるための努力って、結構必要で。キャンディーズが泣きながら言っていた「普通の女の子に戻りたい」って、あれ異常なことだと思うんですよ。でも普通でいるために努力しなきゃいけないわけで。できることっていうのはちゃんとアンテナ張ってないとそれこそ地に足をつけるってことだったり。やっぱ普通のロックバンドでい続けるためにはホントに考えなきゃいけないし、アンテナ張ってなきゃいけないし、絶対裏切っちゃいけないやつは裏切らないんだっていうのをちゃんと考えながらやらなきゃいけないので。そこに対しての試練ももらったっていうニュアンスがひょっとしたら近いかもなって、今話してて思いましたけどね。
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