「国民的ガールズバンド」を目指し、2018年末に活動を開始したザ・コインロッカーズ。公募により選ばれた41人は、演奏楽器やバンド経験なども様々。その、例を見ない大人数での活動スタイルは、披露楽曲毎にチームを変えプレイしていく形態も含め、画期的なものであった。
また、2019年12月には結成時からの公約であった「Zepp Tokyoワンマンライブ」を敢行するも完売には至らず。遂にはメンバーは13人へと再編成された……。
そんな新生ザ・コインロッカーズがいよいよ今春、2ndシングル「僕はしあわせなのか?」をリリースし、本格再始動する。これまでは各グループ毎の個性が目立っていたが、今作はリスタートやリフレッシュさを伴っての全員参加感溢れる1枚。活動開始当初からの特性でもあった、明るく開放感があるサウンドながらも、どこか影を帯びたり切なさや哀愁を擁したメロディや歌の両極の同居という自身の魅力はそのままに、カップリング曲では新しい要素もしっかりと覗かせている。
今回のインタビューでは、新生ザ・コインロッカーズのメンバー13人全員が集合。現在の心持ちや今作、そして更なる希望や明るさを確信させる未来について力強く語ってもらった。
Photography_Kiruke
Intewview & Text_Sucao Ikeda
Edit_Miwo Tsuji
「アイドル=偶像」としての、ガールズバンドアイドルを目指して
――今回の2ndシングル「僕はしあわせなのか?」のリリースを機に、新たなるスタートを感じました。まずは、この年末から今までを振り返ってみて、いかがですか? 中でもZeppTokyoでのライブは、結果的には38人での最後のライブになってしまったわけで……。当日はかなり胸中も複雑だったのでは?
宇都宮未来(Vo) : 「Zepp以降、新体制でいく」と告げられてから、実際のライブまでの期間は、正直かなり複雑な心境でした。でも、残って続けていく私たちより、去っていくメンバーたちの方がしっかりと気持ちを汲んでくれていて。「前向きに行こう!」と彼女たちの方から私たちを勇気づけてくれたんです。それを機に前を向いて、「これが最初で最後になるであろう38人でのZeppTokyoライブを頑張ろう!」「しっかりと飾ろう!」との気持ちになれました。
下島輝星(Gt) : 目標であったソールドアウトには届かなかったし、満員にもできなかったので、形としては失敗に映ったのかもしれません。だけど私たちの気持ちとしては、これまでで最も1つになれたライブがやれた気がしていて。そう考えると個人的には大成功なライブだったなって思います。
――当日、あえてみなさんが普段通りのライブをすることで、38人での有終の美を飾れたように私には映りました。
Яuu(Ba) : 私的には「絶対に哀しさや寂しさを出さないぞ!」と挑んだライブでもありました。最後だからって哀しいライブにはしたくなくて。私たちが不安な顔や哀しい顔をしていたら、ファンの方々も余計に悲しくなっちゃうし、せっかくのライブも楽しめないだろうって。なのであえて普段通り、それこそ「私たち何も気にしてないです!」ぐらいの気持ちで臨みました。ファンの人たちには絶対に「このメンバーでの最後のライブは凄く楽しかった!」と記憶に深く残しておいてもらいたかったので。
松本璃奈(Dr/Vo/Ba) : その辺りはお客さんたちも感じ取っていただけたようで、お互い「楽しいライブにしよう」「忘れられない日にしよう」との気持ちが凄く客席からも伝わってきました。アンコールでは気持ちが抑えきれなかったり、感極まって泣いたりしちゃいましたが、あの日は特にファンの皆さんと私たち38人とが一体になれた感じがしました。
――でも同じチームでも残るメンバーと去るメンバーがいるわけで、かなり複雑な胸中で当日へと向かったと察します。
後藤理花(Key) : 私の場合は、チームで私以外のメンバーは去る形になってしまったんです。それもありライブ当日に向けてのリハでも当初はやはり全員のテンションがどうしても低くなっちゃって。でも当日が近づくにつれみんなのテンションも「Zeppで有終の美を飾ろう!」「成功させよう!」って上がっていきだしたんです……(涙ぐみ言葉に詰まる)。
――残るメンバーが1人もいないチームもありましたもんね。
船井美玖(Vo) : 私も、チームで残ったメンバーが私だけだったのですが、一緒に練習していて、どうしても他のメンバーに対して、申し訳なさや後ろめたさがあって。なのでみんな当初は黙々とやっていて、精神的にもキツかったんですが、ある時、他のメンバーの方が残る私に気を遣ってくれていることに気づいたんです。以後はそれをヒシヒシと感じながらライブに向かって練習していました。
絹本夏海(Gt/Vo) : 1年間頑張って、ようやく人と一緒に演奏したり、何かを作り出していく喜びに目覚めた頃での新体制への移行でもあったので、告げられた時は、今まで積み上げてきたものがなくなってしまう気がしてショックでした。今後どう頑張ればいいんだろう……って。そんな時に今の13人で話し合ったことがあったんです。
――そこではどんな話を?
絹本 : 色々と話し合いをした結果、”去っていったメンバーの分の気持ちも背負って一緒に夢を叶えたり、大きくなっていくことが、去るメンバーとお客さんへの最大のお返しだろう”ということになって。
森ふた葉(Dr) : あの話し合い以降、より結束力も強くなったし、13人になったからこそお互いが強く意識を持たなくちゃと、更にグループとしての一体感が生まれた気がします。
下島 : これまでは個々でのグループ感が強かったことにも改めて気づきましたね。38人組とはいえ、やはり主に稼働していたのは各チーム毎だったので。学校で例えるとチームは「クラス」みたいなもので、38人集まると「学年」って感じだったんです。
――では「一度解体して再度新しいクラスで……」って感覚も強かった?
宇都宮 : 強かったですね。やはりチーム個々でやり方も特性も違う分、“この13人ならでは”のやり方や特性を作り上げなくちゃいけなかったので。ようやくここにきて揃ってきたかなって。あと最も違うのはこれまでとはまた違った新しいジャンルに挑戦していかなくてはならなかったところで。
――その「これまでになかったジャンル」とは?
宇都宮 : ガールズバンドアイドルです。
成澤愛実(Dr) : 正直、最初に「今後はガールズバンドアイドルに向かう」って聞いた際には、"えっ!?"て感じでした。不安でしたね。
――その不安とは?
成澤 : 私の場合は7年間ドラムをやってきた自負もあったので、ドラマーとして見てもらいたい気持ちが強かったし、「私はアイドルとしてやっていけるのだろうか?」という不安や葛藤もありました。でも去っていくメンバーにも「私のドラムスタイルが好きだった」と告げてくれた子がいたし、「それを今後も失わないで欲しい!」と伝えてくれた子もいたので、以降は、"この芯を曲げずにどうやってこの13人でのザ・コインロッカーズに自分をフィットさせていくか?"に考えが移ってきたんです。
絹本 : 「アイドル」という言葉にとらわれ過ぎなくてもいいのかなって。メンバーにはアイドルっぽい可愛いい子もいるし、ロックバンドぽくカッコ良くやりたいメンバーもいる。そんな個々のキャラクターがあるので、逆にそれが武器じゃんって。それぞれの色があっていいと思うんです。元々アイドルって言葉も偶像のイデアから取られているわけだし。ならば私たちは、その本来の意味でもある「偶像」を目指していこうと。
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