池袋を舞台にした自伝的作品『ごった煮シティ』、ついに完成!!
――新曲『ごった煮シティ』、とても素晴らしい曲でした……。この曲は半自伝的な内容で、池袋をテーマにしています。企画内容から、壮大なバラード曲をイメージする人が多いと思うんですが、完成した音源からは、どちらかというとミドルテンポで力強い印象を受けました。
焚吐:バラードは今回、あえて避けました。曲調としてはできるだけ楽しい曲、一聴して「楽しいな」と思える曲になるように意識しました。
――それはなぜですか? バラードだと大仰になってしまうイメージがあったんでしょうか?
焚吐:そうですね。AメロとかBメロにセンチメンタルなワードを詰めたり、自分のパーソナルなことをメッセージとして入れたので、サビではどれだけ明るく突っ走れるかを意識しました。
――3拍子からスタートして4拍子になりますよね。この構成の複雑さに込めた狙いを教えてもらえますか?
焚吐:僕の曲に『四捨五入』っていう曲があるんですけど、それは転調ばっかりする曲なんです。『四捨五入』を作っていた当時は、転調の仕方をよくわかってなくて、フィーリングで作ってました。でも今回の『ごった煮シティ』は、聴いてて自然な転調になることを心がけました。拍子を変えたのは、『四捨五入』を超えたかったからです。転調だけじゃなくて拍子も変えたらどうなるか、挑戦してみました。
――レコーティングの間にも拍子を気にされてましたね。
焚吐:一拍多いとか、一拍少ないとか、そういうことが起こり得るので、ライブで歌う時もヒヤヒヤします(笑)。
――この企画『焚吐と歩く池袋』の最初のインタビュー収録は、2016年の年末に行いました。それから一ヶ月経たずにレコーディングです。制作期間が相当短かったと思うんですが。
焚吐:メロディ自体はすぐにできあがったんですよ。作りたいと思った時に、サビのメロディがポンと出てきて。AメロBメロは、そのメロディを活かすべく、あえてちょっと引っかかるような、憶えきれないようなものにしました。
「池袋と仲良くなる過程を描いた」
――インタビューの内容をふまえてから歌詞を読むと、『ごった煮シティ』が、過去→思春期→未来という構成で作られていることがよくわかります。歌詞を書くにあたって、これらの言葉がどんなふうに響くのを意識しましたか?
焚吐:この曲で描いたのは、池袋と仲良くなる過程です。まず1番は池袋との出会いですよね。自分が池袋のどんなところに惹かれたか。2番では、自分という存在を池袋にわかってもらいたいと思い始める。池袋を、ただの街じゃなくて、一種の友達みたいに感じ始めて、自分の我が出ていく。3番になると、池袋はどんな季節になっても自分を受け入れてくれる親友のような存在になる。徐々に池袋との絆が深まっていく感じを出せるようにしました。
――すると、池袋をある種の「人格」を持つものだと想定したんでしょうか?
焚吐:そうです。池袋には、ただ自分が歩いて買い物をして行動を起こす街、という以上の何かを感じていて。池袋に行く時って、友達に会いに行くみたいな感じになるんですよね。それを曲にできたらいいなと思って。難しかったですけどね。
――普段のレコーディングはどんな感じで進めるんですか?
焚吐:自分でデモを録る時は、最近だとボーカロイドに歌ってもらうことが多いです。家にあるCubase(パソコンのDAWソフト)と、ゴッパーマイクと、普通のギターシールドでわりと簡単に録ります。それをアレンジャーの方に渡して、最終的にこういったスタジオでアレンジに乗っけてレコーディングします。
――ボーカロイドは何を使ってますか?
焚吐:鏡音(かがみね)リン、鏡音レン、IA(イア)を使ってます。最初に買ったのがIAでした。一昨年のクリスマス頃に鏡音リン・レンV4Xが出たので、自分へのクリスマスプレゼントっていう名目で買いました。一番使ってるのは鏡音レンですね。
――自分で歌う曲とボーカロイドに歌わせる曲は、何か基準の違いがあるんですか?
焚吐:人間用に作った曲は、やっぱり人間が歌った方が乗りやすいんですよね。でもボーカロイドを意識して作った曲は、人間が歌ってもなかなか様にならなかったりします。だからこそ「歌ってみた」っていう文化があるんだと思いますし、自分が歌うだけでは作れないものをボーカロイドに引き出してもらってるという感覚はあります。
「もっと池袋を好きになってほしい!」
――『ごった煮シティ』は、自分の半生を振り返って作った曲です。いま、レコーディングを終えて、最終的な仕上がりを聴いて、率直にどんな感想を持ちましたか?
焚吐: 『ごった煮シティ』は、弾き語り、つまりアレンジが乗ってない音源として出すことを前提に作りました。なので、今回のレコーディングでは「完璧すぎちゃいけない」ってことを気をつけました。バンドにはバンドの歌い方があると思うし、弾き語りには弾き語りの歌い方があると思うんですよ。結果、わりと弾き語りっぽく、ムラがある感じで録れたので、家で作ってる時の感触により近い仕上がりになりました。自分の中でこの曲は、温かみがあるものに感じています。とてもパーソナルな曲です。
――最後に、この曲をどんなふうに受け取ってもらいたいか、リスナーや読者の方にメッセージをお願いします。
焚吐:池袋をもっと開拓してほしいです。池袋は本当に素敵な街なので、もっと池袋を好きになってほしいし、池袋のことをもっと知ろうと思う足がかりになればいいなと思います。
次のページは「焚吐、待望のファーストアルバム発売!タワレコ池袋の特典は…?」
SHARE
Written by