9月16日にお台場・潮風公園で開催された水曜日のカンパネラ初の野外ワンマン・ライブ、『uP!!!NEXT~水曜日のカンパネラFREE LAGOOOOOON!!!~』。
ボーカルのコムアイが救急車の中から登場したり、日清食品のキャラクター『カレーメシくん』とのパフォーマンスなど見どころ満載だったライブを、VR技術を駆使して撮影したのがAwesome City Club、Hello SleepwalkersなどのMVを手がける、株式会社コンセントに所属する全天球映像作家『渡邊課』だ。
10月13日にPlayStation VRが発売となり、本格的な普及の兆しが見られるVR。これまでにも、映像の中に“入り込む”ことは比喩的な意味では可能であった。しかし、VRでは視覚的に“直接”入ることが出来る。
VR技術を撮影に用いることで水曜日のカンパネラの独創的なライブを、どのような映像体験に仕上げることが出来るのか。
VR×水カン。ライブシューティングを担当した『渡邊課』の渡邊徹課長と、嘱託の越後龍一氏にメールインタビューを行った。
インタビュー・文=九十現音
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――渡邊課は水曜日のカンパネラのライブ『uP!!!NEXT~水曜日のカンパネラFREE LAGOOOOOON!!!~』のVRライブシューティングを担当されています。渡邊さん、越後さんそれぞれに撮影を引き受けることになったまでの経緯を伺いたいです。
渡邊:今回のお話は、以前からお付き合いがあったハコスコさんから撮影の依頼をいただきました。(ハコスコは)ダンボール製のビューワーと、スマホで見るVRサービスを提供されている会社で、今回の販売パッケージの提供をされています。
もともとハコスコさんのPRを渡邊課が手伝っていた経緯もあり、撮影などのお仕事でよくご一緒させていただいていました。
水曜日のカンパネラのコムアイさんは、ライブではかなり動き回る方です。(VRでの)撮影の仕方をかなり工夫する必要がありそうとのことで、渡邊課なら撮れるのではという期待値のもと声がかかりました。
――撮影にあたり、水曜日のカンパネラ側からはライブの全体像や演出などにつき事前に説明がありましたか?また渡邊さん、越後さんが事前に今回のライブに対して抱いていたイメージのようなものがあればお教えください。
渡邊:舞台演出と総合演出の監督から、曲香盤やステージの図を見ながらイメージを聞き、撮影用のカメラを置く位置を事前に相談して進めました。
アーティスト本人が客席の中、後ろ、頭上や空中を舞台に縦横無尽にパフォーマンスをする方なので、ステージも複数ありました。(ステージ間の)移動中もずっとパフォーマンスをするというもので。その1シーン1シーンを、どこで見ていたら素敵な体験になるだろうと考えるだけで楽しい撮影の準備ができました。
リハでも(コムアイさんの動きを)ある程度予想しながらカメラ位置を考え、備えていました。予想を上回る自由奔放な動きをするコムアイさんを、全天球(注:360度パノラマ撮影)で捕らえ続けるのが難易度が高そうだと楽しみにしていました。
越後:とにかく企画の段階から、ファンのワクワクがずーっと続くまるでサーカスのような展開を予想していました。実際はそれ以上でした。
――VRのライブシューティングと通常のライブシューティングの一番の違いとはどのようなものでしょうか?
渡邊:VRではカメラを置く位置が、視聴者の「眼」になります。通常の2D映像より自由度が高い分、”体験”を生ませることを意識する必要があります。
たとえば、最前列の客目線なのか、メンバーの1人として見るのかなどです。よく「見回す必然」と説明しているのですが、周りが全部映っているだけではダメですね。
今回のライブでいうと会場の規模も大きかったので、(客席の)最前線やメンバーと同じ視点に加え、物凄く引いた視点というのも作り、ライブを立体的に体感できるということを目指しました。
――今回のライブは、水曜日のカンパネラのオリジナルハコスコの販売とVR映像の限定配信がセットになっていることが特徴だと思います。
VRのハードとソフトがセットで幅広い人に届く、というのは貴重な機会だと思うのですが、いかがでしょう?
渡邊:デジタルコンテンツをパッケージで販売する取り組みは増えてきました。今回のハコスコさんのダンボール製ビュワーとのセット販売はグッズとして会場でも販売されていましたが、持って帰って自宅などで追体験して喜んでもらえるのは本当に貴重ですし嬉しいです。
ですが、まだVR自体に認知度が無い段階で、グッズ売り場に並んでいて手に取ってもらえるのかは課題に感じています。一部では書籍に封入して書店に流通するという取り組みもあるみたいです。まだまだ可能性がある市場ですので、今後よい形を探していければと思います。
VRを体験する前段階のお膳立てを、どれくらい面白い形で用意してあげられるかが重要かなと考えています。VRでわざわざ見る理由っていうのが、(試みとして)面白く思えてもらえないと見てもらえる機会がそもそもできないと思っているので。そこを今後注力していきたいです。
越後:ハイエンドなものだと客が体験しづらかったりしますよね。一方でカジュアルなパッケージでより多くの人に体験してもらおうとするとコンテンツの作り方が変わったり、作り手側も出し先を意識したコンテンツ作りをすることが求められると思います。その経験を積んで答えをどのように出せるかというところが勝負所かなぁと感じます。
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