Awesome City Club、PORINにソロインタビュー。グループと個人の動き、音楽とファッション、双方を行き来して見えてきたものとは?
アーティストがブランドを立ち上げることは珍しくない。そして、そこにはひねくれた目線がつきものだ。だからこそ伝えたい。Awesome City Clubのフロントマン・PORINが手がけるブランド〈yarden(ヤーデン)〉は、独立したファッションブランドとして高いレベルで成立している。次々消費されてしまう流行の中に立ちながら、風を受けてそよぐ木々のように、自然の摂理の中に身を任すように、彼女はブランドをスタートした。水族館で自由に泳ぐ魚たちを見ながら彼女が話してくれたのは、音楽のこと、ファッションのこと、そしてしなやかに強い意志のこと。
Photography_Masumi Ishida
Interview&Text_Taiyo Nagashima
Edit_Kenta Baba
その先になにかがある気がして。音楽がやりたくて、でも表現できる場所はなかったから、じゃあストリートでやっちゃおうって思ったんですよね。
――生まれた頃の話から、聞いてもいいですか?
平成2年の10月2日に生まれました。小さい頃は本当におてんばでしたね。お兄ちゃんがいたから。
――おてんばって、ちょっと意外ですね。
そうですか?昨日、小学校の同窓会があって、ちょうど色々思い出していたんです。久しぶりに会った友達がすごい応援してくれていたのも嬉しかった。小さい頃から、誰とでも平等に、グループとか意識せずに接したいって思っていました。
――ずっと分け隔てなく接するタイプだったんですね。
そうですね。でも、女子校だから男性への免疫はなかったかもしれない。今はもう大人なのでそうも言ってられないけど、当時は偏っていたかもしれません(笑)。
PORINさんの好きな場所のひとつが水族館とのことで今回は「サンシャイン水族館」で撮影とインタビューを行いました
――音楽をはじめたきっかけは?
19歳の時はアコースティックギターを持って路上ライブをしてました。家から一番近い駅で、毎日のようにやってたんですよ。1年間、夏も冬も。それで鍛えられたかな。
――けっこう大変だったのでは?
その先になにかがある気がして。音楽がやりたくて、でも表現できる場所はなかったから、じゃあストリートでやっちゃおうって思ったんですよね。自分でも「何やってるんだろう」って思う時もあったけど、これが未来の自分のためになるって確信していました。
――感覚を信じて、進めてきたんですね。
そうですね。きっと何かにつながるだろうと毎日続けていたら、Sonyの人が見に来て、声をかけてくれて、そこから音楽人生がはじまりました。ちなみに当時は黒髪ロングで清純派のような見た目だったこともあってか、怪しい人に騙されそうになったりもしました。レコーディングさせてあげるから100万円払えって言われて、お母さんに相談したら「やめさない!」って(笑)。路上に立ち続けて学んだことが続けたことが今の活動にも活きている気がします。
――ブランドのコンセプトにも関わると思うのですが、両親から受けた影響について教えてください。
yardenというブランド名は、yardとgardenを組み合わせた造語です。うちの実家は造園会社をやっていたということもあって、「庭」の美しさにずっと触れてきました。自然への敬意は常に持っていると思います。
――造園業って、自然に手を加えて美しくする仕事ですよね。
そうなんです。造園業には「借景」という考え方があって、庭っていうのは風景を借りながらそれを日常に取り込んでいくもの。ありのままのを表現するわけではなく、自然と人の手のハイブリッドなんですよね。
――そこからファッションに通じる影響もありますか?
美意識のベースは、やはり家族との生活の中で育まれたように思います。さきほどの「借景」の話も両親から教えてもらって、いい考え方だなーと心に残っていますし、ファッションに関してはアニエスベーとかラルフローレンとか、普遍的で上質なものを好む両親だったのかな、と。その感性とか感覚が今のベースになっていると思いますね。
ライブはピュア。これが音楽だって感じる。ライブで返ってくるものを糧に続けていられます。
――yardenは、トレンドも汲んでいるけど、オーセンティックな服も多いなと思いました。チェックのテーラードジャケットだったり、ニットだったり。
そこをすごく意識しています。デザイン画は描くけれど、パターンを引くことはできないし、生地屋さんや縫製工場を知っているわけではない。だからこそ、東京コレクションに参加しているようなブランドを手がけるKIDSCOASTERと一緒に作ってきました。生産は全て日本の工場で行っています。専門家の力を借りることも大事だな、と。アーティストとしてのマネジメントとは切り離して、自由にやっていますね。
――テーマをどのように服に落とし込んでいきましたか?
あくまで身近であることを考えながら、ファーストシーズンなので、まず大事にしたのは自分らしさですね。「PORINぽさ」を定義できるようなものにしたいなと。同年代の女の子に共感してもらいたいし、日常の中で親しまれるパターンや生地を使って普段着としての魅力と個性が立つバランスを探りました。
――反響はどうでしたか?
掲げていた目標は超えることができました。でも、もっと想像以上の結果が出てもいいのかな?とは思います。まだまだこれからですね。
――次シーズンのことを教えてください。
今まさに、デザイン画を書いています。ファーストコレクションは、伝えたい写真があって、それありきで考えてみました。次シーズンは水彩画にしようと思っています。ファーストコレクションは緑の印象を打ち出したけど、次はそこに花が咲くような変化があります。パターンで遊ぶような服も増えるし、メンズも増やします。びっくりしてもらえるんじゃないかな。
――音楽と服に向き合う中で、一番嬉しい瞬間は?
ライブですね。ファンの人たちのため、待ってくれている人たちのためにやってるんだなって本気で思います。自分のためじゃなくて。
――ライブが好きだと感じたきっかけは?
5年間バンドをやって来ましたが、理想とは異なる部分もありますよね。モチベーションを保つのってすごく大変です。ビジネス的な難しさもあります。でも、ライブはピュア。これが音楽だって感じる。ライブで返ってくるものを糧に続けることができています。
――展示会の時にもファンとの距離感が近いのが印象的でした。
クラウドファンディングをやったり、ファンと近い距離感でいたいんですよ。本当に音楽を好きな人が来てくれるし、そういう人に直接思いを伝えるチャンスだから。何よりそれを自分が楽しめているんですよね。そばに寄り添っていられる存在でいたいんです。
――音楽活動と平行してブランドをやることは大変なことだと思います。そのモチベーションはどこからきていますか?
シンプルに、音楽もファッションも好きという気持ちが中心にあって、服をゼロから自分の意志で作り出すということにモチベーションがあります。
「自分」という主語が必要ではない場合もあります。一方で、ブランドは自分のエゴをしっかりと出してやれている。
――Awesome City Clubはメンバー全員のキャラが立ってますよね。
そうですね。それぞれが音楽家として独り立ちできるくらいだと思います。民主主義なのでぶつかるよりも譲り合うんですよ。大人だし、みんな失敗しているし、傷を抱えたままここまで来ている。印象が違うかもしれませんが、みんな泥臭いし、ナイーブなんです。今はアルバムを制作中なんですけど、オーサムらしさが確立されている一方で、そのらしさに引っ張られているということもあって、すごく悩んだりしましたね。
――本来やりたかったことと違ってしまう?
でもそれが求められていることでもあるし、オーサムらしさを確立できているのは進歩でもありますよね。
――自分自身の意識や心境の変化は?
前向きな意味で、自分のエゴをなくすことができるようになりました。
――仏教的な発想でしょうか。
そういう感覚です。みんなで一つのクリエーションに向き合う中で、「自分」という主語が必要ではない場合もあります。一方で、ブランドは自分のエゴをしっかりと出してやれている。エゴをなくすのも楽しいし、Awesome City Clubと個人の活動が両方あるからこそうまくバランスを取れていると思います。
――具体的に、どんな変化がありましたか?
細かいことだけど、ライブ衣装をお揃いにすること。ファッションが好きだし、それなりにアイデンティティがあって、以前の自分だったら考えられなかったですね。でも、オーサムはダンスミュージックをやっているし、ステップを踏むこともあって、セットアップで揃えたほうがライブで映えるんです。その結果、届き方が大きく変わって、ライブからショーのように変化してきています。去年のツアーは特に反響が大きかったです。お客さんが喜んでくれるのが一番ですね。
――今後の展望について教えてください。
その時々でやりたいと思ったことを後悔なくやりたいです。
自分は天才じゃない。雲の上の存在ではなくて、地上にいながら、寄り添える存在でありたいですね。
yarden オフィシャルサイト
yarden Instagram
PORIN Instagram
Awesome City Club オフィシャルサイト
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