日本、中国、そしてアメリカ。異なる文化を持つ3つの国で多感な時期を過ごし、それぞれの文化をストレートにパーソナリティへと吸収した、ひとりの表現者がいる。彼女の名は、MeiMei(メイメイ)。2003年生まれ、現在18歳の女性シンガーだ。
今年1月には、デジタルシングル『Strangers feat.MIYAVI』で、日本を代表するギタリスト・MIYAVIとの共演を果たし、話題を呼んだ。「Z世代」「多様性」「ボーダレス」といった性質を併せ持つ新しい才能は、どのような幼少期を過ごし、いかにして音楽と出会い、その世界に魅了されたのだろうか。アジア発・新世代トリリンガルシンガーとして注目を集めるMeiMeiのこれまでとこれからに迫る。
Photography_Sakura Nakayama
Interview & Text_Chihiro Yuuki
Edit_Miwo Tsuji
引っ越しばかりだった子ども時代。つらい境遇が気づかせてくれた音楽のチカラ
――まず、これまでの生い立ちについて聞かせてください。どんな幼少期を過ごしてきたんですか?
MeiMei : 公式プロフィールに「華僑」とあるので、中国生まれだと思われがちなんですが、実は私、日本生まれなんです。名古屋で生まれて、生後3か月で中国へ渡りました。その後、小学校2年生くらいまでは日本と中国を行ったり来たりの生活をしていましたね。
それから2年ほど中国で過ごしたあと、アメリカのフロリダへと移ります。当時、私はゴルフに打ち込んでいて。現地にあるスポーツのアカデミースクールに通っていました。フロリダでは1度、オーランドに引っ越しただけだったので、少しだけゆっくりできましたね。そこから1年だけ日本に帰ってきて、中学1年生のときにはまた、日本と中国を行ったり来たりする生活に戻りました。
――プロフィールにもありましたが、こうやって聞くと、本当に慌ただしく過ごしてきたんですね。
MeiMei : そうですね。多すぎて覚えられないくらい、たくさん引っ越しをしました。あ、小さい頃、オーストラリアのシドニーにも住んだことがありますね。中学2年生になってからは、またアメリカに渡ります。そのあと、1年日本に戻ってきて、高校1年生のときにもう一度アメリカへ。そのときカリフォルニアの芸術高校・Idyllwild Arts Academy(アイデルワイルド・アーツ・アカデミー)に入学し、現在に至るといった感じです。
――芸術高校ではどんなことを勉強していますか?
MeiMei : 学科によっていろいろなんですが、学校全体で言うと、アート全般について学んでいますね。絵画やファッションデザイン、映像作家、ミュージカル、オーケストラ、ビジュアルアートなどのコースがあります。私はそのなかでも「ソングライティング」を専攻していて、音楽理論や作詞・作曲・アレンジのノウハウ、メロディメイキング、音楽史などがカリキュラムになっています。全寮制なので、朝8時から夜7時まで勉強漬けの毎日ですね。
――朝から夜まで勉強……。想像しただけで大変そうです。
MeiMei : 大変ですけど、好きなことについて詳しくなれたり、いつも友達と一緒だったり、楽しいこともたくさんありますよ。いまはコロナの影響で、日本からオンラインで授業に参加しています。はやくアメリカに戻って友達に会いたいですね。
――高校でソングライティングの勉強をしているとのことですが、それまでにどのようにして音楽と出会い、その世界に惹かれていったんですか?
MeiMei : 家族が音楽をよく聴いていたこともあり、物心ついたときには生活の中に音楽がありました。アメリカでは通学やゴルフの最中にFMラジオを聴いていましたね。そうしているうちに、音楽の世界にどんどん興味を持つようになりました。
――当時よく聴いていたアーティストはいますか?
MeiMei : セリーヌ・ディオンさんや、エド・シーランさん、チャーリー・プースさん、デミ・ロヴァートさんなどがお気に入りでした。ラジオが新しい音楽を知る方法だったので、その頃ヒットしていたアーティスト・楽曲を好きになることが多かったですね。エド・シーランさんの「Shape of You」や、デミ・ロヴァートさんの「Heart Attack」が好きなのも、そういう理由からです。FMで何度も聴いているうちに、体に染み込んでいくような感覚でした。そのほかだと、両親の影響でテレサ・テンさんも聴いていました。
――一方で、その間には、受け取る側から発信する側への転換もあったかと思います。どんなことがきっかけでアーティストになりたいと考えるようになったのでしょうか。
MeiMei : 1番のきっかけは、怪我をしてゴルフができなくなってしまったことですね。それまではゴルフをずっと頑張っていくつもりで打ち込んでいたんですが、その夢が閉ざされてしまった。「これから何を頑張ればいいんだろう?」と考えたとき、最初に思い浮かんだのが音楽の道でした。
――何歳の頃ですか?
MeiMei : 11,2歳だったと思います。
――音楽の道を志す上で、影響を受けたアーティストはいますか?
MeiMei : セリーヌ・ディオンさんですね。私、吹き替えなしで初めて観た洋画が『タイタニック』だったんです。その主題歌「My Heart Will Go On」を彼女が歌っていて。その力強いパフォーマンスに驚かされました。つらいときには、力をもらうことも多かったですね。音楽を届ける側になりたいと思うようになったきっかけには、セリーヌ・ディオンさんとの出会いもありました。
――同じように誰かを励ませるような存在になりたい、と。
MeiMei : そうですね。高校に入学する頃には、つらい経験を歌詞や曲として書き残すこともありました。そういう想いを世の中に届けたいと考えたのは、私がセリーヌ・ディオンさんのパフォーマンスから似たメッセージを受け取っていたからだと思います。
趣味からのインスピレーションがアーティスト活動の原動力に
――ゴルフは今も続けているんですよね?いただいたプロフィールに書いてありました。
MeiMei : はい、たまに18ホール回っています。
――スコア80で回ったことがあるんだとか。80ってすごい数字じゃないですか?
MeiMei : 頑張っていた当時の数字です。今はちょっと難しいかもしれないですね(笑)
――ほかに趣味はありますか?
MeiMei : VRファッションや読書、写真のエフェクト加工が好きですね。
――VRファッション?
MeiMei : デジタルを使ってデザインした服を、CG上で実際に自分が着ているように見せるカルチャーですね。データなのでエコロジーですし、NFTの仕組みを利用すれば、衣装や写真を販売することもできます。
――MeiMeiさんがデザインを担当しているんですか?
MeiMei : いえ、デザインは他の方におまかせしています。私はモデルとして服を着て、写真を撮ってもらう役割ですね。いつかはデザインする側も経験してみたいと思っています。
――これってどこまでがバーチャルなんですか?
MeiMei : ほぼ全部バーチャルです。私はタイトなインナーのようなものを身につけているだけですね。背景もデジタルで制作されています。
――恥ずかしながら初めて知るカルチャーでした。
MeiMei : アメリカや中国では流行っているんですよ。いろんな国で暮らして、いろんな文化に触れたので、その経験を生かして日本にないものを自分が広められたらと思っています。
――読書は、どんなジャンルを読むんですか?
MeiMei : SFやファンタジーがお気に入りです。興味を持ったら、中国・アメリカ・日本のどの国の言葉で書かれた作品でも読みますし、文学からライトノベルまでジャンルを問わず、手に取っています。
――趣味が音楽活動に生きていると感じることはありますか?
MeiMei : ファンタジックな歌詞が浮かんできたり、撮影のときのポージングのバリエーションが増えたり、いろんなところで生きていると思います。今ってアーティストが個人でSNSをやる時代じゃないですか?自分の個性を表現するにはこんなファッションがいいんじゃないかとか、あの写真にはこんなエフェクトが合うんじゃないかとか、Instagramの投稿にも趣味から得たアイディアが役立っていますね。VRファッション・写真のエフェクト加工はデジタル、読書はアナログで共通点がないようにも思うんですが、音楽活動の軸で考えると、複合的にさまざまなインスピレーションへとつながっていると思います。
自分だからできる表現で、文化の架け橋になりたい
MeiMei – Strangers feat. MIYAVI(Official Video)
――1月26日にリリースされたデジタルシングル「Strangers feat.MIYAVI」では、日本を代表するギタリスト・MIYAVIさんとの共演が実現しました。MeiMeiさんのラブコールによって実現したと聞いていますが、どんな経緯でコラボレーションが決まったのでしょうか。
MeiMei : アメリカから日本に戻ってきたタイミングで、MIYAVIさんのInstagramアカウントにDMを送ったんです。「コラボレーションさせてもらえませんか?」と。送ったときは返信があるなんて思ってもみなかったんですが、すぐにご本人からレスポンスがあって。私のこれまでの楽曲を聴いてもらったあと、「ぜひやろう!」とお返事をいただきました。
もともと私は、MIYAVIさんの音楽が大好きだったので、幼い頃から曲をたくさん聴いてきました。返事をもらったときは、現実だと信じられませんでしたね。本当にうれしかったことを今でも覚えています。
――初めて会ったときの印象はいかがでしたか?
MeiMei : オーラがハンパじゃなかったです(笑)。それまではオンラインでお話することが多くて、なかなか対面する機会がなかったなかで、ようやく会えたのがそのときでした。最初、私は緊張でガチガチだったんですけど、本当にフランクに接してくれて。「Hey, whats up?」みたいな。それで緊張もすぐに解けちゃいました。
――ほかに覚えているエピソードはありますか?
MeiMei : MVの撮影をしているときなんですけど、MIYAVIさんが中国語を勉強されていると伺って。どうして勉強しているのかを尋ねたら、「生きてるうちは勉強し続ける精神を忘れちゃいけない」と教えてくれました。これから目指すべきアーティスト像を考える意味でも、このタイミングでMIYAVIさんと共演できたことは大きかったと思います。
――楽曲についても聞かせてください。「Strangers feat.MIYAVI」には、どんな想いやメッセージを込められたんですか?
MeiMei : 「Strangers feat.MIYAVI」には、周りには敵ばかりで拠り所のない主人公の少女が、困難や不安を自分の力で解決し、パワフルに進んでいく物語が描かれています。特に最近はコロナの影響で思うようにならないことも多いんですが、そんな状況でも一生懸命頑張っていこうというメッセージを込めました。MIYAVIさんのギターが入ったことで、さらにエネルギッシュな1曲になったと思います。みなさんが前向きに生きるための力になれたらいいですね。
――最近では、コロナの流行による社会の閉塞感も問題になっています。
MeiMei : はい、何も悪いことをしていないのに、攻撃の対象になってしまうといった話を聞く機会も増えました。理不尽な攻撃をする側が悪いのはもちろんなんですが、心に少しだけ余裕があれば、「なぜこの人は攻撃してくるんだろう」「どこかで辛い想いをしているのかな」と考えてあげられると思うんです。もしなにか理由があって攻撃的になっているんだとしたら、彼らの問題を解決しないと、また誰かがターゲットになってしまいますよね? そちら側の人たちまで含めて助けてあげられたらという気持ちを表現しました。
――MeiMeiさんがこれまで経験してきたことが、この楽曲に込められたメッセージのベースになっているんですか?
MeiMei : そうですね。私のことで言うと、小さい頃から引っ越しばかりで、友達ができても突然さよならになってしまったり、時にはお別れを言えないまま、次の街に移動したりすることもありました。当時は携帯も持っていなかったので、新しい場所では本当にひとりぼっちで過ごさなくてはならず、寂しい想いをすることも多かったんですよね。学校で人種差別を受けた経験もあります。そんなふうに辛い経験をする人が自分の力で立ち直れたら、誰かにひどいことをしてしまう人の問題を解決することができたら、こんな状況でもきっと明るい世の中になると思うんです。「Strangers feat.MIYAVI」には、1つだけではない、複雑な気持ちが込められています。
――ビッグネームとのコラボレーションということで、リリース後には反響も大きかったと思います。印象に残っているものはありますか?
MeiMei : YouTubeなどに「MIYAVIのギターを聴きにきたけど、MeiMeiの声にもやられたよ。これからも頑張って!」というメッセージをいただいたのは嬉しかったです。リスペクトする人との共演が、自分のラブコールで決まって、その楽曲に好意的な反応が届く。こんなに幸せなことってないですよね。いま思い出しても、嬉しくて信じられない気持ちです。
――最後に、今後の展望について。どんなアーティストを目指していきたいですか?
MeiMei : いろんな国をめぐって、いろんな文化に触れてきたことが私のパーソナリティだと思うので、同じように世界のいろんな国に自分の表現を発信していけるようなアーティストになりたいです。音楽は国境をこえて世界中どこでも通じ合えるものだと、私は信じています。文化の架け橋のような存在になれたら素晴らしいですね。また、私にとってのセリーヌ・ディオンさんがそうだったように、誰かを元気づけたり、誰かの心の問題を解決したり、そんなパワーを与えられるような存在にも憧れます。まだデビューしたばかりですが、向上心を忘れずに頑張っていきたいです。
Digital Single『Strangers feat.MIYAVI』
2022.1.26 release
配信はこちら
https://meimei.lnk.to/strangersfeatmiyavi
MeiMei
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