2014年「D.I.Y. – Memories and winter – 」に収録
J-POPのなかにLOW HIGH WHO?を見つけると、やっぱり嬉しいですし、そういう存在でありたい
ーーLOW HIGH WHO?にとって大きな転機だったのは、2010年に初期の頃から所属していたYAMANEさんが『アオソラ』を、2011年にはParanelさんの別名義COASARUのファーストアルバム『別人格コアサル』を、不可思議/wonderboyが『ラブリー・ラビリンス』を出していったことです。その後数年にわたり、非常に多くのラッパーやアーティストを輩出していきましたが、なぜこの時期にこれだけのアーティストや作品を生み出していったのでしょう?。
Paranel いつも狙ってやってるわけじゃないんです、とにかく作りたい!という気持ちが強いんですよ。いい音楽に出会うといろんな人と共有したい!という欲求が出てくるので、それに取り憑かれるようにしてどんどんと作っていく感じなんです。
ーー読んでいらっしゃる方にわかりやすくお伝えしたいのでちょっと念入りに話をすると、LOW HIGH WHO?の最初期の頃から、リリースされている楽曲を生み出しているのはParanelさんなんですよね。
Paranel ええ、そうですね。
ーー1年でどれくらいの曲数作られているんですか?
Paranel …わからないですね、正直にいえば。
ーーLOW HIGH WHO?は1年で6枚前後のアルバム作品を発売していて、特に2011年以降はそういったペースで進んでます。もちろんボツになる曲もあるので、おおよそ200曲くらい作られているのかな?と安易に予測してみますが(笑)。一体どんな風に作曲されているのか、熱量だけでは説明できない何かがありそうで。
Paranel 他のクリエイターさんの現場を見てみると、丁寧に作られている方が多いんですよね、僕はその手法ややり方が分からないし、一発一筆書きのようにバンっと作って、自分で聞いて良いと思えたらほぼそのまま曲として出している感じなんです。調子が良いと1日にアルバム1枚分の音楽を作ってしまう時もありますね。LOW HIGH WHO?のメンバーは、多分ですけどみんなそういうことができる人が揃っていると思います。
ーー今までたくさんのミュージシャンやアーティストが入ったり辞めたりしていきました。加入する際にParanelさんなりの基準などはあったんでしょうか? Paranelさんから声をかけます? それともデモテープなどから見つけたり?
Paranel 昔は声をかけていくことが多かったですね、今ではデモテープがたくさん来るのでそこから見つけたり、他の人からの紹介もあったり。選ぶ基準は…申し訳ないですけど、音楽がキマッてるというより、顔と名前と本人の雰囲気がデカいですね。Jinmenusagiがそうだったんですが、まず彼の名前に引っ掛かって、実際会ってみて顔と雰囲気で「良いな!」と思えたのがデカかったんですよね。
ーーdaokoさんは?
Paranel 彼女はJinmenusagiと一緒にやってる音源を彼から貰ったのがきっかけです。当時はacoさんのようなイメージでカッコイイなと思っていて、実際会ったときにもピンときたので、僕から声をかけました。その時は彼女が当時中学生だったなんて知らなくて、それからなんて声をかければいいかわからなりましたね(笑)
ーー彼ら2人やGOMESSらがデビューしていった2010年代前半に、LOW HIGH WHO?は大きく羽ばたいていった。これは僕の雑感にはなるのですが、LOW HIGH WHO?が大きくブレイクしたことで、日本のHIP HOPの構図や日本のポップミュージックにちょっとした変化をもたらしたように思えるんですが、実感としてどのように捉えてますか?
Paranel 実感はありますね。例えばJ-POPを聴いていると、明らかに不可思議/wonderboyの曲なのかな?とかポエトリーリーディングな楽曲が増えたように感じます。先にも話したように、僕は自分のフィールドのなかに違うものを引き込む人が好きなので、僕らのレーベルで作った音楽が誰かにとっての<違うもの>として考えられていたらすごく嬉しいですね。J-POPのなかにLOW HIGH WHO?を見つけると、やっぱり嬉しいですし、そういう存在でありたいですね。
ーー今ちょうどポエトリーリーディングという言葉が出ましたが、この2011年以降はポエトリーリーディングという手法と出会うことでLOW HIGH WHO?というフィールドがどんどんと広がっていったように見えます。これは意識的にこうなったんでしょうか? ポエトリーリーディングなものにしよう!という意識というか。
Paranel そこはやはり不可思議/wonderboyでしょうね。僕はポエトリーリーディングの世界を全く知らなくて、彼がうちのレーベルに加入したことでそういう世界を教えられたという感じなんです。HIP HOPやラップが持っている自由な部分と、日本語や日本人が持っている自由な部分とを掛けあわせて作ってみるとポエトリーリーディングの形になるんですよ、多分ですが(笑)。あくまでも、理論として選んだわけじゃなく、ピタリと合う表現を探していった先にあった、というのが自然な流れなんですよね。
ーーここまでの話を区分けしていくと、最初の5年と後の5年という風に分けられると思うんです。この切り取り方が可能になるくらいに、エポックメイキングにレーベルカラーを変えたのが、不可思議/wonderboyさんの存在。最初の5年にはポエトリーリーディング的な作品はないですし、後の5年のdaokoさんやGOMESSくんは言うまでもなくそういった作風ですし。
Paranel 影響力はデカイですね。レーベル第1弾として全国流通盤を出したのが彼なので、やはりなんでも最初にやった人の影響は大きいですよ。
ーーLOW HIGH WHO?の曲はParanelさんがほぼ担当されていますが、作詞はラッパーやミュージシャン側に多く委ねてます。そこで不思議なのは、多くの楽曲が葛藤や不安や恐れを、モラトリアムな風景を題材にして、ほぼ同一の世界観が浮き上がっていることです。言葉の面で、Paranelさんから何かしらのテーマ設定などはあるんでしょうか?
Paranel 僕のほうから歌詞についての注文や設定、もっといえばリテイクを求めるというのはほとんどないんです。出来上がったならそれでいいじゃん!という感じで曲を仕上げてしまうことがほとんどで、ある意味ではチェック機能がほとんどない状態と言ってもいいでしょうか(笑)。たぶんですが、僕ら自身のレーベル作品からインスピレーションなどを受けてまた作品を作っている、このサイクルがカラーとなっているのかもしれないですね。
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