2017年のLenny code fiction(レニーコードフィクション)はとにかく活動的だった。全国ツアー、新作リリースと休むことなく前進し続けている。今回のインタビューでは2017年を振り返りつつ、12月2日にリリースされた新作「AWAKENING」から、現在行われている『Lenny code fiction LIVE TOUR 2017 “AWAKENING”』について話を訊いた。
Photography_Kaori Nishida
Interview&Text_Satoshi Shinkai
Edit_Satoru Kanai
デビュー曲にしようか迷っていたくらい大切な曲だったんです
片桐 航 (Vo./Gt.)
――今年は2月に初の全国ツアー(『Lenny code fiction LIVE TOUR 2017 “Non-fiction”』)を敢行。4月にリリースした『Colors』は、アニメ『パズドラクロス』のオープンニングテーマに選ばれました。夏は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』『SUMMER SONIC』『VIVA LA ROCK』など国内の大型フェスに多数出演。そうして、現在は『Lenny code fiction LIVE TOUR 2017 “AWAKENING”』ツアー真っ最中。精力的に活躍されていますよね。
片桐 : ありがとうございます。今年はライヴに気合を入れた1年でした。フェスも出させてもらったんですけど、もっと出来たなって日もあれば、楽しかった日もあって。様々な経験を積めたので、バンドにとってはいい年ですね。
――ツアータイトルである「AWAKENING」が出来た経緯を教えてください。
片桐 : 楽曲自体は2年前からあって。デビュー曲にしようか迷っていたくらい大切な曲だったんです。攻めている部分もあれば、聴きやすく優しい部分もあるっていうのが気に入ってて。ツアーが始まってバンドの在り方を4人で話したんですけど、いまの状態がバンドとしてすごくいいんだなと思ったので、それをどうにか歌詞に起こしたくて。ツアーが始まるくらいのタイミングで歌詞が完成して、いまのLenny code fictionを表している1曲になりました。せっかく自信作が出来たので、ツアータイトルも『AWAKENING』にしようってことで全てが繋がっていった感じです。
――曲は以前からあって、歌詞だけが出来ていなかったんですね。
片桐 : そうです。前に歌詞は作ったんですけど、いまのタイミングで書き直しました。完成したのはツアーの直前くらいですね。
――書き直したのはどうしてですか?
片桐 : 先ほども話した、バンドとしての在り方っていうのが大きくて。その時にずっと書きたいなと思っていたのが、いまの自分たちのバンド像。テーマも見つかったし、お気に入りの曲に合わせてみようかなと思って書き直しました。
――バンドの在り方というのは?
片桐 : デビューして1年経ったくらいに(メンバー間で)話し合いをしたんですけど、あれもしたいし、これもしたいって音楽でやりたいことが多すぎて。じゃあ、全部やればいいと思ってたんです。だけど、逆にごちゃごちゃしてしまって、自分たちには合わないなと。だから得たものを捨てる作業というか、カッコイイけど自分たちはこっちを優先して、みたいな。
――取捨選択をするようになったんですね。
片桐 : そうです。この曲は凝ったアレンジをしたいけど、歌詞を優先してシンプルにしようとか。そういう捨てる勇気をバンドが手に入れて。元々もっていたカッコイイ部分だけを突き詰めていく姿勢に変えたのが、一番大きいかなと思います。
心のそこからライヴを楽しめてなかった
ソラ(Gt.)
――以前、kazuさんが「これまではクールなバンドという見魅せ方をしていたけど、それよりも初期衝動を感じさせるような熱量のある見魅せ方をしたい」ってお話しをしてました。いまはどうですか?
kazu : まさに言っていたことが実現できている状態です。前はイメージや理想に引っ張られすぎて、本来の自分が出せないことが多かったんですよね。このツアーが始まる前にメンバーで話し合いをして「僕たちが心から楽しめることをやろう」って。
――シフトチェンジをして。
kazu : それでツアー初日に挑んだんですけど。楽屋に戻って4人で顔を合わせた瞬間に「今日は楽しかったな」って、全員がそんな表情をしてて。いまは毎回「楽しかった」っていうのを更新するライヴができているんですよね。常に前回よりもいいライヴができているので、本当に言った通りの状態になってます。
――クールな路線から、初期衝動を優先する路線に変えたのはどうしてだったのでしょう。
kazu : 心のそこからライヴを楽しめてなかったことに気づいたからですね。本来の自分を出せていないから不完全燃焼に近い場面があったので。そこがお客さんとの熱の差なのかなって思ったのが、ことの発端で話し合った感じです。
――ソラさんから見て、バンドのコンディションはどうですか?
ソラ : すごくいいと思います。前にkazuが「ウチのバンドって個人プレイの集まりだから」って言ったんですね。一見、悪いように訊こえるかもしれないんですけど、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTさん、L’Arc〜en〜Cielさんを観ていると、それぞれがパフォーマンスをしているけど、なんかまとまっていてカッコいい。僕らが好きなアーティストって、そういうバンドが多いんです。
kazu : そうだね。
ソラ : kazuに言われて「お前もそう思っていたんだ」って。別に個人プレイをすることが悪いことじゃないんだなって。各々が本能のままにライヴするようになってからは、みんな「ライヴが楽しくて、早く次のライヴがしたい」と思ってます。
――ちなみにメンバーの個性をどう見ていますか?
ソラ : 航は狂気じみたところがあると思ってて。ライヴの写真を見ていても、たまに目が怖いというか。只者じゃない表情を作るのが上手いし、ステージに上がると人が変わったように歌うのが個性だと思います。kazuに関しては硬派でカッコイイバンドマン。ヘッドバンキングとか縦の動きがすごいなって。KANちゃんに関しては、周りを見て空気を読んでいるかな。例えば航のテンションが高い時はそこに合わせられるし、俺と目が合うと盛り上げるために表情を作ってくれたり。みんな違ったキャラクターがありますね。
KANDAI : そんなに見ててくれてたんだ(笑)。
ソラ : ……みんなに訊かれてると恥ずかしいですね。
いまは18歳くらいの気持ちなんですよ
kazu(Ba.)
――2月のツアーと今回のツアーで変わったことはなんでしょうか?
KANDAI : 前回は個人的にメンタルが結構やられてて、ツアー初日とかファイナルって緊張しがちで、不安を抱えながらステージに立っていたんです。今回は2本目、3本目ってライヴを重ねるうちに、もっとよくなっていく自信しかなかったですね。
kazu : KANちゃんは、いつ見てもニコニコしてるよね。たしかにソラが言った通りな気がする。
――改めて「AWAKENING」についてお訊きします。今作は片桐さんが勢いだけじゃなくて、ふっと柔らかく歌う節もあり。1曲のなかで、静と動を感じました。
片桐 : そうですね。かなり展開があるし、ひとつの感情だけじゃない。Lennyの曲はいい違和感をわざと作る作業を結構してて。勢いよくサビを歌っているのに2番でハーフになったり、広がりがあったり、特殊なコーラスを入れたり。攻撃的な裏に隠れている優しさみたいな。フレーズもうまいこといい反応を起こせているのかなって思いますね。。
――先ほどソラさんが話していた「個人プレイ」がいい意味で作用している気がしました。演奏はすごく激しいのにボーカルのメロディが優しかったり、泣きメロになったり。いい意味で違和感があるんだけど、まとまっているようにも聴こえて。
kazu : ライヴもそうなんですけど、レコーディングも個々でやりたいことをやってる。そのちぐはぐさがバンドのグルーヴにもなっているのかなって。
ソラ : 自分たちのことを王道って言ってるんですけど……ただの王道だと他に埋もれてしまう。どこかしらにバンドのアイデンティティは持っていないといけないので、独特のアレンジは今後もやらなければいけないと思ってます。
――バンドの強みってなんでしょう?
片桐 : いまは18歳くらいの気持ちなんですよ。バンドを始めて向上心しかない、あの感じ。変に気を遣わなくなったので、好きなことやカッコイイものを純粋に突き詰められるバンドの環境はいまの強みかなって思います。
――「18歳くらいの気持ち」って喩えは面白いですね。
片桐 : 「自分たちが少しでもカッコイイと思っていないと伝わらへんねんな」って思うんですよね。嘘はバレるなって。楽曲もパフォーマンスも人間味が出ないと成長しないっていうのは、いろんなライヴを観てわかってきて。だから、新しい人間になろうとするのは間違いかなって思います。それなら自分の持っている1番いいものを磨いていくのが大事で、それは今年一番の発見でした。希望に満ち溢れただけの曲ってほぼなくて。いろんなことが巡り巡っていまがあるので。
――そういう考えは昔からですか?
片桐 : そうですね。変に回りくどく考えてしまうので(笑)。だから、逆にポジティブでもあって。ネガティブなことが起きたけど、これがいつか繋がるって時もあれば、過去のネガティブなことを思い出して、だからこそいまがあるっていう。いろんなことを面倒くさくしてしまうんですけど、それが歌詞にも活きているって思います。
終わりがいつ来るのか誰もわからへん
KANDAI(Dr.)
――僕は今作の<長くも儚く 短くも密に 詰め込んだ日々を手にしたい>って歌詞が好きで。人生を刹那的に生きるというか、今日と同じ明日は来ないっていう意味に感じて。
片桐 : 命の終わりとかバンドの終わりとかを想像するんですけど、“時間”について考えるのが好きで。終わりがいつ来るのか誰もわからへんなっていうところから歌詞を書き始めて、いろんな人生の瞬間というか、明日にも終わる人生ならいま、何をするのかっていうのが「AWAKENING」の一番言いたいところですね。
――終わりについて考えたのって、何かきっかけがあったんですか?
片桐 : みんな中学生くらいになったら死について考えるじゃないですか。考えへん?
kazu : わかるよ。
片桐 : それが俺は人よりも酷くて。何かの言葉で「唯一わかっていることは死ぬことで、唯一わからないことは死ぬ瞬間がいつ来るか」っていうのを見つけて、中学生の俺は「深いな」と。そっから死に取り憑かれているというか、それが向上心にもなってます。そういう歌詞が多いんですよね。死観というか。
――その話を訊くと、「AWAKENING」は希望と絶望の曲でもあり、生と死でもあるわけですかね。
片桐 : そうなんです。
kazu : 死って後ろ向きに考える人の方が多いじゃないですか。航の歌詞を読んで、すごく前向きに捉えているんだなって。俺も見習わなければいけないと思いました。あまり終わりについて考えてなくて、いまがよければいつ終わってもいいやって感じだったんですけど……俺が浅かったです。
KANDAI : あははは。
――ちなみに、これまで3作連続アニメの主題歌を務めてきました。それによってロックファンだけなく、キッズにもバンドを知ってもらういいきっかけになったと思います。どうして主題歌に選ばれ続けているんだと思いますか?
片桐 : 楽曲作りで意識しているのは、聴きやすさ。自分もいろんな音楽を聴きますけど、一番好きなのはメロディがキレイな曲なんですよ。曲を作る時はどれだけメロディが耳に入ってくるかっていうのは昔から意識していたので、そこが理由だと思います。曲を聴いて、それまでライヴハウスに行ったことがなかった人も観に来てくれるので嬉しいですね。
――最後に今後のLenny code fictionについて教えてください。
片桐 : 「AWAKENING」はいまのLenny code fictionを象徴する曲なので、今後は音源以上にライヴでどうやったらお客さんに伝えられるかが課題になってくると思います。いい曲を出して、それを越える作業をしないと曲は育たないので、自分たちの曲を大切にするためにもいろんなジャンルの曲をライヴでしっかり伝えられるようなバンドになるべきだと。今年だけじゃなくて、来年もライヴはコンスタントにやっていきたいと思います。
作品情報
Digital Single「AWAKENING」
Lenny code fiction オフィシャルサイト
Lenny code fiction オフィシャルTwitter
Lenny code fiction オフィシャルYouTube
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