ミュージシャンが音楽に魔法をかけることは出来ない。でも……
――では作家繋がりで、あえて1つ、意地悪な質問をしてもいいですか?
歌詞太郎・レフティ:はい、大歓迎です!
――ある有名な作家がこう書いています。「『歌の力』などという標語が生まれる時代というのは、歌が力を失った証拠なのだと思います」。
「音楽に救われた」というお話の後で恐縮なんですが、この言葉を聞いて、2人が今どんなことを感じたか教えていただきたいです。
歌詞太郎:鋭い質問ですね。確かにその作家さんの言うこともわかります。ただ、僕たちは、音楽の力って単体ではないと思っているんです。一生懸命音楽を作って世に出しても、基本的にその音楽は誰にも聴かれない。そういうことを僕たちはバンド時代に骨の髄まで染みるほど理解したんです。路上ライブをしてもお客さんは来ませんでしたし、バンドでライブやっても10人いたら良い方でした。でもそんな中、「今から路上ライブします」ってツイッターで告知したら196人以上の人が来てくれたことがあったんです。多い時には3000人ぐらい集まってくれました。その時に「この曲を聴いたら元気が出た」とか「これで受験乗り越えられた」とか「失恋から立ち直れた」とか、いろんな言葉をもらって。それで大事なことに気付いたんです。ミュージシャンが音楽に魔法をかけることは出来ない、意味付けをして力を与えてくれているのはお客さんなんだ、ということに。音楽という魔法を使うためには、まず自分が一生懸命音楽を作って、その曲の第1リスナーになって、自信を持って僕たちがイトヲカシのファン第1号第2号になることが必要だと思うんです。単に僕たちが「これは魔法です」ってリスナーの前に差し出しても、全然魔法じゃないんですよ。
レフティ:独りよがりな話をすれば、2人で作った曲を自分が最初のリスナーになって聴いてみて、「本当にいい曲だねぇ」って思えたら、極論、それだけで満足できるんですね。それは音楽の力だと思うんですよ。まだ世界中に一切存在していない音楽を2人で作り上げてその音楽の最初のリスナーになることで、誰が何と言おうと、僕は自分の人生がすっごい豊かになったと感じる。だけど、それと同じくらい、誰が価値を付けるかということも重要です。価値を付けてくれているのはあくまでもリスナーなんです。僕らも「リスナー」の1人なので、僕たちの作った音楽に僕たち自身で日々、価値を付け続けているわけです。
なぜポジティブになれるのか?
――イトヲカシさんの曲には、全体的にポジティブな曲が多いですよね。でも、それはどうしてなんでしょう? 特に今回の『カナデアイ』には「汚れた僕は今日もまた」という歌詞があります。前回の『宿り星』にも「こんな汚れた世界で」という歌詞がありました。まるで世界を汚れたものだと捉えているみたいです。それなのにトータルではポジティブな曲になっている。不思議だなと思います。
(イトヲカシ『スターダスト/宿り星』CMスポット:Animeバージョン)
歌詞太郎:僕は正直なので、自分の思っていることじゃないと歌詞に出来ないんです。「この世界が汚れている」と感じたことはないかって言われたら、そんなことはないですよね。
レフティ:やはりポジティブに転化していかないとハッピーエンドにならないじゃないですか。音楽を続けている理由も、もちろん根本には音楽が好きだという気持ちがありますけど、「自分がやってきた事を間違っていないと肯定したい」という気持ちもあります。だからこそポジティブな言葉が歌詞にあるのかな。でも昔はそうじゃなかったですね。絶望や痛みや怨念みたいなものも、僕らの音楽にはこもっちゃってる。それらを乗り越えたところに自分たちを持っていきたいという気持ちがあります。
歌詞太郎:イトヲカシって、「底抜けにポジティブではない」んですよね。挫折やうまくいかなかったことだらけですし、今でもうまくいかないことがたくさんあります。ネガティブな言葉を出すことによってリスナーが共感してくれて傷が癒えていく。僕らの音楽はその役割を果たすんじゃないかなぁ。音楽や歌唱のルーツは黒人にあるという説がありますよね。黒人が日々鬱屈した感情を歌に乗せて「ふふ~ん♪」とかハミングしていて、それがどんどん歌になっていったと。もしそうだとしたら、音楽ってヘイト(Hate:憎しみ)が根本にあって成り立ってるんじゃないかなと思うんです。そうやってヘイトを糧にしてハッピーに転化するっていうことは、僕らの根本にあるものなのかなと思っていて。だから「ポジティブな曲にしよう」とか「ポジティブなワードを選ぼう」って思って作ったことは、実は1回もないんですよね。ポジティブな曲が多いというのは、今言われて気付きました。
ただ、悲しい人をハッピーにしたいという気持ちはあります。もしくは悲しい気持ちを乗り越えられるように、マイナスをゼロにする、あるいはマイナス200をマイナス4にするとか、とにかく気持ちをアップにしたい。いつも言うように、僕たちの音楽は王道でありたいし、老若男女誰からも「良い!」と思って貰えるような曲を作りたいです。
イトヲカシにとっての運命の出会い
――では最後の質問です。お2人にとっての運命の出会いって、何でしたか?
レフティ:僕はバンドが解散した後に、軽く路頭に迷ってしまった時期があったんです。その時に、知り合いの事務所の方から松岡モトキさんというプロデューサーの方を紹介していただいて。それで一緒にお仕事をさせていただき、首の皮一枚繋がって、色々なアーティストの方とセッションすることもできました。今の自分は松岡さんの存在なくして絶対にありえないです。今、松岡さんは53歳ぐらいなんですけど、音楽に対するワクワク感をいつまでも失っていない、少年みたいな方なんですよ。「ああ、こういう親父になりてぇなぁ」みたいな(笑)。そういう情熱を絶やさないでいきたいなあと思います。
歌詞太郎:僕はあえて、「存在」にしようかなぁ。川端康成の作品なんですけれど、作品名までは思い出せないぐらい昔読んだ作品で。たしか『伊豆の踊子』の文庫に収録されてる短編小説だったと思います。川端康成はいろいろな男女の愛を描くんですけれども、『伊豆の踊子』と同じぐらいきれいで素晴らしい男女の愛を描いた作品があって。僕はその時、その作品を電車の中で読んでいて、初めて本を読んで鳥肌が立つという経験をしたんです。そこから本に狂ってしまったんですよ。年間1000冊位読んでいた時期もありました(笑)。
――年間1000冊!? それはかなり凄いですね……1日3冊くらい読むことになりますよ?
歌詞太郎:その年はもう、1000冊読むこと自体が目標になってましたね(笑)。僕は文学からの影響を強く受けて来たし、それが僕の特徴でもあります。僕の礎を築いてくれたのは文学で、きっかけはこの川端康成の作品です。……うーん、でもやっぱりタイトルが思い出せない……(苦笑)。
――特徴を書いたら読者の方が教えてくれるかも……?
歌詞太郎:舞台はお葬式なんです。そこに主人公の女の子と、女の子と血の繋がったおじさんがいるんですよね。女の子とそのおじさんは一晩一緒に明かすんですが、お互いそんなに面識もなく、一緒に寝ることも後ろめたくもなって……。でも、あとでお互い2人は惹かれあっていたというのを知る、そんな話です。川端康成が描く作品には、どろどろした男女関係の作品もあれば、「そんなにきれいですか!?」っていうぐらいきれいな男女関係の作品もあって。僕はそのきれいさに心打たれて、それから本にのめり込んでしまったんですよね。それが僕にとっての、実はミュージシャンとしての、運命を変えてくれた1冊だったのかなぁなんて思いますね。
――では、運命の1冊の正式なタイトルを読者が教えてくれると願って……(笑)。本日はどうもありがとうございました!
歌詞太郎・レフティ:そうですね(笑)!こちらこそありがとうございました!
イトヲカシ:
伊東歌詞太郎(Vo)と宮田“レフティ”リョウ(Bass/Guitar/Key)による、2人組ユニット。
日本語を大事にした歌詞・メロディセンス・力強い歌声が織りなす琴線に触れる楽曲を、他者とは一線を画す展開で発信する2010年代型アーティスト。メディアでは顔出しを行っておらず、その素顔はライブ等でしか見ることが出来ない。
2人は中学時代からの同級生であり、はじめて結成したバンドのメンバー。
卒業後、別々の音楽活動を経て再会し、各々が培った音楽を一緒に発信すべく2012年にイトヲカシを結成。
並行して、インターネットの世界に音楽を投稿、様々なアーティストへの楽曲提供やプロデュースワーク、サポートミュージシャンなどの活動をそれぞれが個々で行い、
特に動画サイトにおいてその歌声とメロディセンスが大きな話題を呼び、投稿動画総再生数は2,500万、twitterフォロワー数は併せて55万人以上と異例な存在となる。(公式サイトより抜粋)
公式サイト
伊東歌詞太郎Twitter
宮田“レフティ”リョウTwitter
<「さいごまで / カナデアイ」先行配信中!>
2月1日(水)よりイトヲカシ「さいごまで/カナデアイ」配信中
【iTunes】
https://itunes.apple.com/jp/album/id1196134073?app=itunes&ls=1
【レコチョク】
ハイレゾ : http://recochoku.com/a0/itowokashi_saigo-kanade-HR/
通常版 : http://recochoku.com/a0/itowokashi_saigo-kanade/
【mu-mo】
http://q.mu-mo.net/of/itowokashi_170201/
<リリースイベント開催決定!>
【神奈川】
○日程 2月11日(土) 15:00~
○場所 ラゾーナ川崎プラザ2F ルーファ広場 グランドステージ
【大阪】
○日程 2月12日(日) 15:00~
○場所 もりのみやキューズモールBASE1F BASEパーク
※イベント観覧はフリーとなります)
<LIVE情報>
【イトヲカシ “second one-man tour 2017”】
4月29日(土) 函館 クラブココア
4月30日(日) 札幌 PENNY LANE 24
5月7日(日) 横浜BAYHALL
5月13日(土) 仙台Rensa
5月14日(日) 水戸ライトハウス
5月20日(土) 広島クラブクアトロ
5月21日(日) 名古屋 ボトムライン
5月27日(土) 松山サロンキティ
5月28日(日) 高松DIME
6月2日(金) 大阪 BIGCAT
6月3日(土) 神戸 チキンジョージ
6月10日(土) Drum LOGOS
6月11日(日) 熊本 B-9V1
7月2日(日) 沖縄 桜坂セントラル
7月9日(日) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
7月16日(日) 東京ZEPP TOKYO
【チケット料金】
スタンディング¥4,000
※整理番号順の入場となります。
※別途ドリンク代(各地による)
※小学生以上有料。未就学児童は入場不可。
【イトヲカシCD封入先行】
イトヲカシCD封入先行 決定!2017年2月8日(水)15:00より受付スタート!
※ 2017年2月8日(水)発売の2ndシングル「さいごまで / カナデアイ」(初回盤)に同封されたシリアルナンバーを入力しお申込みいただきます。
◆受付期間:2017年2月8日(水)15:00~2017年2月13日(月)23:59
その他お申込みに関する詳細は、2月8日発売のCDにてご案内いたします。
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