11月23日にリリースされたGRANRODEO、25枚目のシングル『少年の果て』は、キャリア11年目にして初めての『機動戦士ガンダム』との主題歌コラボレーションだ。10代の若者たちが、熾烈な闘いのまっただ中に否応なく引き摺り込まれ、成長と変革が交錯するガンダムストーリーに寄り添いながら、少年時代に想いを馳せるノスタルジックなリリックとメロディックなサウンド。GRANRODEOを知らなかった人の胸にもグッと入り込む、ハードなロックバラード『少年の果て』とカップリング2曲を、リリース後の反響とともにKISHOW(Vo.)とe-ZUKA(Gt.)が語ってくれた。
TEXT_MIKA ABE
『鉄血のオルフェンズ』オンエアで曲の評判を知り、ホッと安心しました。
――ニューシングル『少年の果て』は、TVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期エンディング主題歌ですね。ガンダムシリーズの主題歌を担当するのは初だったわけですが、リリース後の反響はいかがですか?
e-ZUKA 楽曲制作は今年の夏、ツアーの合間を縫ってやったんですが、短期間に今の『少年の果て』を入れた数曲をアニメのスタッフさんに送って選んでもらったんですよ。じつはその中で、いちばん自信がなかったのが『少年の果て』で(苦笑)。10月から『鉄血のオルフェンズ』の放送が始まって、これがエンディング主題歌として流れたとき、「エンディング、いいじゃん」というSNSの反応がたくさんあって、ホッとしたというのが正直な感想ですね(苦笑)。
KISHOW 僕ら、リリース日でありデビュー記念日の11月23日は、横浜アリーナで「ANIMAX MUSIX 2016 YOKOHAMA」というイベントフェスに出たんですけど、生演奏もそこで初披露しましてね。発売当日にライブでお披露目する機会はとても珍しい。さらにうちのスタッフ調べによりますと、生歌のほうもSNSあたりで非常に評判がよろしかったと聞き、安心しておりますね(笑)。
――そもそも『機動戦士ガンダム』シリーズは、マニアックなアニメファンでなくとも、ガンダムやザクというモビルスーツを知っていたり、プラモデルを作ったことがあったりと、男の子のたしなみ的な部分があるのかなと。おふたりにとっては、ガンダムってどんな存在なんですか?
e-ZUKA じつは、楽曲としてはGRANRODEOでも過去、劇場版(『機動戦士ガンダムIII・めぐりあい宇宙編』)の主題歌をトリビュートアルバム用にカバーしたり、TVシリーズ(『機動戦士ガンダムAGE』1期)のエンディング主題歌「君の中の英雄」という曲を編曲したり、縁がないわけじゃなかったんですけど……。
KISHOW e-ZUKAさんはアニメやゲームの曲をいっぱい書いているわりに、どっちのジャンルも得意じゃないという、ただの音楽バカですからね。あ、もちろんいい意味で!(笑)
e-ZUKA いい意味じゃなかったら、二度とGRANRODEOの曲なんか書きませんけどね!(笑) だからガンダムも……友人ギタリストのISAO(Spark7)くんが大変なガンダム好きなので、そこから得た知識のほうが多かったりしますよね。
KISHOW 僕ももちろん、ガンダムは折々で見聞きしていますし、好きなモビルスーツもあったりしますけど……今回、『少年の果て』を歌うことになって、いちばん感じたのはガンダムというコンテンツのすごさ。僕は声優という仕事もしているので、『鉄血のオルフェンズ』のエンディング主題歌と担当すると発表になったとき、役者仲間に「ガンダムやるんだ、すごいね!」と続々と声をかけられ、ガンダムブランドの力を再確認しましたね。
いくら心は少年のままでも、あの頃には絶対に戻れない。
――『少年の果て』はそもそもタイトルがとても印象的ですね。
KISHOW そうですね。我ながら「『少年の果て』……いいフレーズだな、これは!」と思いましたよね(笑)。いつの時代もガンダムは、多感な10代の少年たちが戦う物語だという確固としたコンセプトがある。その戦いの中で、何かを得たり、気づいたり、傷ついたりするお話なので、キーワードは最初から「少年」だなと思って書いていきましたね。
――その歌詞には、「たまには空を飛んで違う世界の青を見たい」ですとか、「少年のように高く見下ろしていたい 戻れないなんて強がりさ」といった、大人の視点から少年時代を追想する世界が描かれています。
KISHOW うん、まぁそれが『少年の果て』という言葉に無意識に繋がったのかな。いってしまえばノスタルジーだし、僕はけっこうノスタルジーが好きで。e-ZUKAさんの書いてくれた曲がそもそも泣けるメロディーだったんで、最終的にはガンダムに寄せたというより、e-ZUKAさんの曲に寄り添えればいいなと思いました。
――だからこの曲は少年少女より、大人が聴くほうが絶対に心に浸みますね。
KISHOW まぁ僕もね、見かけによらずもう40歳なわけだし(笑)、年を取れば取るほど人生を振り返ることが最近多くなって。いくら心はまだ少年のままだと言っても、確実にあの頃には戻れない。そういう風景を映像的にこの曲でも歌っていますけど……その追想と共にあるのが後悔なのか、いい思い出なのかは、聴く人それぞれが自分に照らし合わせて、感じ取ってくれればいいなと。精神的な部分では、僕らも少年時代から基本的には何も変わってないかも知れないけど(笑)。
e-ZUKA 僕なんか、そもそも大人になった感覚が未だにないですからね(笑)。
KISHOW 俺より年上なのに!?(笑)
e-ZUKA 本当は、少年から大人に変わらなくちゃいけなかったんだろうけど、変わらず来てしまったんで。だから……『少年の果て』に今いるんだけど、ちゃんと少年時代をやり直したい(笑)。
KISHOW そんな「少年のなれの果て」が、今のGRANRODEOなんですね、つまり(笑)。
――KISHOWさんは、『少年の果て』にあるものが何なのかは、それぞれで想いを巡らせてほしいとおっしゃいましたが、MVもかなり泣ける作品に仕上がりましたよね。外国人俳優出演によるショートドラマ仕立てになっていて。少年と老人との切ないストーリーが繰り広げられています。
KISHOW 今ネットで公開しているのはショートバージョンで、シングルにはフルバージョンが収録されてるんですけど……フルバージョンを最初に観たとき、ほんとに泣けましたね。年を取って涙もろくなったという理由だけじゃなく(苦笑)、おじいちゃん役の俳優さんがね、ほんといい表情をするんですよ。映像もノスタルジックで雰囲気がある。ドラマ仕立ては久々だし。
e-ZUKA 『The Other self』が学園ドラマ風だった以来かもね。僕らのMVとしては、珍しいタイプで。映画っぽい作りにしていただいて、良かったです。
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