古くて高い機材より、最近のもののほうが合うこともあるんです
ーーでは『Next One』についてですが、まずはサウンド面で成長を感じます。
松尾:前回の1stアルバム『SUNRISE JOURNEY』は少ない音数で生々しくというテーマがあったんですけど、今回はシンセを入れたり、生ドラムと打ち込みのドラムを合わせてみたり、ストリングスを入れたり。色々と挑戦できました。例えば「grand port」で、EDMのDJとかがよくやる1小節でドラムを4つ刻んで、次の小節は8、次は16と倍にしていくのを生ドラムでやってみたり。これはブラック・キーズもやっている手法です。日本の4つ打ちカルチャーって賛否両論ありますけど、GLIM SPANKYがやっちゃうとこうなるんだよ、カッコ良いっしょ?という感じで。
ーーギターもビンテージではなく現行製品を使っていますし、いなたいルーツを今の音で表現するところがおもしろいです。
亀本:ワンピース映画主題歌の「怒りをくれよ」を録った時に、オールドマーシャル系のロッカフォルテというアンプを使ってみたんですけどイマイチで。結局定番のマーシャルJCM2000にしました。古くて高い機材より、最近のもののほうが合うこともあるんです。
松尾:あとアレンジでは、シンガロングできるところを増やしましたね。それはフェスに出たり、ライブをしていくにつれて先輩バンドに学んだことも大きいです。一緒に歌える曲がもっとあるといいなと思って。歌詞の面では、前作はシンプルに感情を歌う曲が多かったんですけど、今回は物語チックな曲を意識して書きました。
ーー物語チックな歌詞というのは「grand port」や「いざメキシコへ」だと思いますが、曲の世界へトリップできるような魅力がありますね。
松尾:ぶっちゃけこういう曲が一番得意なので、今回はそういう面を押し出していきたいなと。衝撃的な強い言葉というのは数曲でいいと思って。「怒りをくれよ」、「ワイルド・サイドを行け」とか、そういう曲は初めと終わりにあるから、あとはどれだけ好きな世界を好き勝手作れるかというところで自由に作りました。「grand port」は、ツアーで北海道に行ったんですけど、初めてフェリーに乗ったんですね。それでその日の夜にホテルで書いたんです。自分の体験したことから物語がどんどん生まれて完成しました。
こどもは親に絵本を読んでもらいますけど、私にとってはそれがギンズバーグの詩集だった
ーー「いざメキシコへ」は歌詞にアレン・ギンズバーグというビートニクの詩人が登場しますが、出会ったきっかけは?
松尾:私の父親はポエトリーリーディングもする人だったんです。だからごはんを食べながらギンズバーグの話をしてくれたり、昔から馴染みがあって。今までは作品にする機会がなかったけど、ちょうど今、個人的に旅行に行きたいモードで。とにかく刺激を求めて海外へ行きたい私の気持ちと、ギンズバーグの、若者たちが新しい時代を作ろうとする、マリファナを握って自由を求める風景が重なって。「いざメキシコへ」は一瞬で、超楽しんで書けましたね。
ーーやはりビートやヒッピーの精神には共感しますか?
松尾:出身が田舎なので、周りにヒッピーみたいな人がいましたから。彼らの集まりに行くと、太鼓を叩いている人がいたり、詩を読んでいる人がいたりしたんです。こどもは親に絵本を読んでもらいますけど、私にとってはそれがギンズバーグの詩集だったという感覚ですかね。
ーー育ちからしてただ者ではないですね。亀本さんは制作時、どんなことを考えていました?
亀本:メロディはレミさんが作るので、僕は心にしっかり残るようなフレーズをと思っていました。曲が終わった時に「あのフレーズ良かったな」と感じてもらえたらうれしいですね。特に「怒りをくれよ」のイントロ・テーマはすごく気に入ってます。
ーー亀本さんの演奏からは、以前にも増して呼吸したり歌ったりしているようなニュアンスを感じます。
亀本:常にそういうギタリストでありたいと思いますね。最近、スラッシュがすごく好きで。彼は速いフレーズを弾きますけど、なんか……わかるよねレミさん?
松尾:あんまスラッシュは……(笑)。
ーー(笑)彼のプレイはハードロックというよりブルースですもんね。
亀本:そう、かなりブルース色が濃くて、フレーズというよりメロディだったりする。そういうところが好きで、僕のギターに反映されている気もします。でもさっきの話に戻ると、今まではギターを持ってフレーズを考えていたんですけど、今回はそうじゃないというのも大きいかもしれない。ギターを持っちゃうと意識が頭より手にいってしまうので、ほぼ鼻歌というか、風呂とかで考えました。全体のアレンジを作ったあと「間奏どうしようかな」と思いながら風呂で歌って、それをギターで弾いてみるという感じでしたね。
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