DAOKOと文学
――DAOKOさんはすごく本好きですよね?
DAOKO:そうですね、元々活字自体は好きだったんですけど、最近は特によく読んでいます。今は、自分の栄養になるものを日常的に取り込むようにしてるんです。本だけではなく、映画もなるべく観るようにしてるんですけど、最近は映画よりも本が多いですね。
――今年読んだ本の中で良かったものは何でしたか?
DAOKO:今年読んだものだと……、綿谷りささんの『蹴りたい背中』とか。
――おお! まさかの綿谷りさ!
DAOKO:自分と近い年齢でデビューされてるんです。当時19歳の頃に書かれた文章で、今の自分と共通点もあるし、読んでみたらすごい初期衝動感があって、何とも言い表せない気持ちがちゃんと表現されているんです。女性の文章は読みやすいですね。男性ですと、森見登美彦さんが好きです。あと今年は村田沙耶香さんの『コンビニ人間』も面白かった。
――おおお! まさかのクレイジー沙耶香! 純文学系の本がお好きなんですね!(※村田沙耶香はその独特な感性から、作家仲間に『クレイジー沙耶香』と呼ばれている)
DAOKO:最近はそうですね。純文学系じゃない本も読んでいます。
――っていうか今の会話で芥川賞作品二つも出て来ちゃいましたよ!
DAOKO:ふふふ(笑)。芥川賞は短編なので、あのくらいの文章量がちょうど読みやすいです。、できれば一日一冊くらい読みたいですね。
――映画も芸術系の作品が好きですか?
DAOKO:そうですね、世界観が強いものが好きなんです。映画監督だと、ミシェル・ゴンドリーとか、今敏監督が好きです。過剰な表現をされる人が好き。あ、でも、血が出る映画は苦手です!
DAOKOと渋谷系
――最近、LINE BLOGでたくさんMVを紹介されてますけど、あれもインプットの一環なんでしょうか?
DAOKO:あれは毎週放送してるラジオ番組の内容を追っかけてブログでも紹介してる感じなんですけど、普段聴いてる音楽です。私がリスナーだったら、好きなアーティストがどんな音楽を聴いているのか気になるし。私の好きな音楽を私の音楽が好きだと言ってくれる方に知ってほしいですし、こんなに良い音楽あるよってのは積極的に伝えていきたいと思います。
――90年代のアーティストが多いのが特徴ですよね。
DAOKO:90年代の音楽にハマってます。90年代といっても、シーンやジャンルによって全然違うので、すごいギュッと濃縮されている時代だと思います。ムーブメント的に90年代は、音楽にとって大事な、キーになる時期だと思います。当時をリアルタイムで経験してないからこそ新しさを感じるのかもしれないですね。90年代に生まれてますけど、生まれは97年だから、当時ギリギリ聴けなかったので。
――Corneliusの『Clash』のMVが好きだと書かれていたのが印象的でした。
DAOKO:Corneliusさんのライブ演出は、アーティスティックで、参考になるんです。よく好きなアーティストのライブ映像を観て、勉強しています。渋谷系の音楽も好きですしね。
――曲作っちゃうくらいですもんね、『ShibuyaK』っていう。
DAOKO:そうですね(笑)。あれはオマージュというか。“渋谷系”の現代解釈版という感じです。
――「渋谷系」って言葉、ぜひDAOKOさんにアップデートしてほしいです。
DAOKO:あはは(笑)。渋谷も進化しつつありますし、渋谷はホーム感があります。毎日渋谷にいるので、思い入れもより深くなりつつありますね。
(DAOKO初の顔出し作品となった『ShibuyaK』。)
――先ほど名前があがったミシェル・ゴンドリーとCorneliusなど渋谷系の共通点というと、ひとつには、コラージュ感覚が強いことなのかなあと思いました。DAOKOさんはそういったものに魅力を感じたり影響を受けたりしているのかなと思ったのですが、いかがでしょう?
DAOKO:コラージュは好きですね。音楽でもそういう感覚は大事にしてます。ニコニコ動画出身の自分がクラブカルチャーを取り入れてるって面白いなと思っていて。ニコニコ動画って、打ち込み音楽が主流だけど、ある意味ではクラブカルチャーと真逆の位置にあるじゃないですか。(自分は)それを繋ぐ存在なのかなと思っています。そういう存在は他にあまりいないので、(自分の音楽は)ミクスチャーされてて面白さがあるのかなと思います。
――ニコニコ動画とクラブカルチャーやダンスミュージックなどの素養があるということは、言い換えれば、中と外を繋ぐ存在であるということですもんね。
DAOKO:そうですね。それから最近はブラックミュージック、70年代ソウル/ファンクにも影響受けてます。J-POPに、実はコアだったり、普段街中では聴けないような音楽が取り込まれていたら、すごい面白いなと思うんです。そういうところにロマンを感じたりします。だから、星野源さんは本当にすごいんですよ。ブラックミュージックを取り入れてあたらしいJ-POPを生みだした。星野源さんが畑を耕してくれたというか、シーン的にもそういう音楽がやりやすくなっていると思います。
DAOKOとアート
――さっきもコラージュって話が出ましたが、Instagramに投稿されてる初期の絵だと、ガチのコラージュ作品も載っけてますよね。そういったアート面、絵画やイラストで影響を受けた人っていますか?
DAOKO:絵で影響受けた人は、あんまり浮かばないです。模写も、幼い頃は星のカービイとか、キャラクターは描いたりとかはしましたけど、直接的に「この人みたいになりたい!」というのはなかったです。オディロン・ルドンとかは好きですけど。
――ルドン? 象徴主義のですか? ユイスマンス『さかしま』のカバーの?
DAOKO:そうです! 暗いですよね(笑)。最近は線画が結構好きで、あんまり色を使うことがなくなっちゃったんですけど、本来はビビッドな絵が好きです。あとは佐伯俊男さんの絵は父の影響で好きになりました。絵は、衝動として音楽と似てるけど、表現の仕方が当然違うじゃないですか。絵の方が頭を空っぽにして描ける。だから「こういう絵を描こう」とか考えて描くんじゃなくて、描きながら広がっていく感じです。
――DAOKOさんの絵って、二面性を表した絵が多いと感じてて。曲も、やはり二面性を表したものが多い気がします。9月にリリースした『ダイスキ with TeddyLoid』はその最たるものでしたよね。だから、曲を聴いてから絵を見ると、納得感があります。
(こちらは学校法人・専門学校HAL(東京・大阪・名古屋)2016年度TVCMソングの『ダイスキ with TeddyLoid』。裏DAOKOと表DAOKOが非常に印象的。2分を過ぎたあたりのメタル調、からのラップが最高に上がる
一曲!)
DAOKO:絵をアップする時、無題のまま上げるんです。そうすると、絵のテーマやタイトルを教えてくださいって聞かれたりするんですけど、タイトルは、あえてつけないことが多いです。絵にはどうにでも受け取れる自由さがあって、それが好きなところです。音楽もそういう志向ではあるんですけど、言葉がある分メッセージ性が生まれるので、直接的に伝わりやすい。
――だとしたら、絵の方がDAOKOさんの無意識が強く出ていて、本質に近いのかもしれないですね。
DAOKO:そうですね、そうかもしれないです。絵はほんと、作品として仕上げるとかじゃなくて、今は、息抜きで描いてるんで……。
――息抜きということは、あれらの絵は一日くらいでパッと描いてるんですか?
DAOKO:2~3時間くらいです。
――え! あんな細い絵をそんな短時間で描いてるんですか!
DAOKO:もうパパッと、衝動的に描いています。
――ブログも書くの早いですか?
DAOKO:そんなにじっくり書いてるわけじゃないです。歌詞も、インディーズの時は三時間くらいで書いてましたけど、今は練る時間が長いので、一日でも終わらないんです。瞬発的にアウトプットできる場所も、精神バランス的には必要だと思います。絵に関して自信はないけど、いつか自分のジャケットとか描けるといいなあとは思います。DIYで全部できるといいなあって。
――DIYっていうワードが出ましたけど、DAOKOさんって、音楽とビジュアルイメージのどちらにもこだわりの強いアーティストだと思うんですね。単に音楽だけを出してるだけじゃなくて、総合的なものとしてリリースしているという印象があります。
DAOKO:顔を出してからはよりビジュアルイメージ込みで考えるようになりました。難しいものを噛み砕いて簡潔にするってことがポップスだと思うんで、わかりやすい見せ方を意識してます。トータルプロデュース的なことをしたいなとは思っています。
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