細江慎治(三日目 西よ28b TROUBADOUR RECORD)
株式会社スーパースィープ代表。日本のゲーム音楽の基盤を築いた作曲家で、「ゲーム音楽の父」とも呼ばれています。『リッジレーサー』シリーズなどで細江さんの曲を聴いたことがある人は多いのではないでしょうか。コミケにも30年近く出展している大ベテランです!
(2014年に発表された『細江慎治音楽作品集第四弾』)
ーー細江さんは、ゲーム音楽にロッテルダムテクノを取り込んだ人物として知られます。どのようにしてロッテルダムテクノと出会ったのでしょうか?
細江:友達に「こんな凄い曲あるよ」とCDを渡されたのがロッテルダムテクノ(当時のジャンル)でした。初めて聞いた時はこんなに間違ったものがあるのか?と思いつつも、どこが良い部分なのか気になって、3回ほどローテーションしたあたりで突然気持ちよくなってきて、そこからは輸入レコードを扱ってる店にいっては、山のようにジャケ買いしてました。ヒット率は凄く低いという事に気が付きましたが。
ーー上の質問に関連して、ロッテルダムテクノをゲーム音楽に取り込もうと思ったきっかけなどあればお聞きしたいです。
細江:多くのゲームは殺る殺られるみたいな感じだと思うのですが、そのハイライトに「ワーグナー」をバックにプレイするか「ロッテルダムテクノ」をプレイするかと同じだったようなきがします。陶酔とか、狂気とかそういうものを通じて共感度が湧くかなと思いました。また、最初に試みたゲームハードがプアな基板で沢山の理由があって最終的に選んだ手段になります。大容量扱えるハードだったら選ばなかったかもしれません。
ーー上の質問に関連してもう一つ、細江さんにとってロッテルダムテクノの魅力とは何でしょうか?
細江:頭をカラッポにして縦ノリできる理解し易い音楽。赤ん坊にも子供にもウケるんですよ。小難しい音楽や、歌詞がないとか解らないと面白くないとかじゃなくて、単純にリズムに身をまかせればOKなところが一番の魅力じゃないですかね?
ーー細江さんにとって、音楽的なルーツになったアーティストを教えてください。
細江:まったくロッテルダムテクノに繋がらないのですが、ジャン・ミッシェル・ジャール、富田勲、細野晴臣を始めY.M.O.とか、当時のテクノポップ、ニューウェーブや、ニューロマンティックからインディーズテクノ関係です。
ーー細江さんにとって、コミックマーケットの魅力とは何でしょうか? また、本業でお忙しい中、インディーズレーベルとしてコミケに参加し続ける理由は何でしょうか?
細江:音楽で参加する前に友達の手伝いとかで参加していてコミケ歴は30ウン年経ちますが、多種多様なファンが集まって、もの凄く深い趣向もった人達の集合体の見ていくだけでも楽しい、ものを生み出す人達との出会いもあったり色んな魅力があります。CDを作る時の最初の動機は「ボーナス倍増化計画」って呼んでましたが、そうはうまくいかないですよね。普段仕事では言われて作るに過ぎないっていうケースが大半なので、自分たちで好き勝手に作りたいっていう思いを持って今も作ってます。その計画段階も面白いし、仕事じゃないから損益もシビアじゃない。ストレス無く作れるって素晴らしいです。(仕事はストレスばかりとは言いませんが)
ーー今回の新譜、もしくはイチオシの作品について教えてください。
細江:「NanoSweep 23」「ヒズミ天国・俺様は魔女」の2枚が次の新譜になります。前者は後輩のサウンドユニット「NanoSounds」と我々スーパースィープの共同作品で今回で23枚目になります。ジャンルとしては主にダンス物ですが、特に縛ってる訳ではないので過去作品には別ジャンルも混ざってます。後者はガバや、スピードコアを中心としたSampling Mastersとしてのアルバムで年4枚出た時期もあって同じくシリーズ23枚目となります。俺様(男)なのに魔女とはこれ如何に?というところではありますが、あとはご想像にお任せします。どちらもCDの盤面(バルク)での販売になります。宜しくお願いいたします。
はるまきごはん(三日目 西れ39b)
今年1月にニコニコ動画に投稿した『銀河録』がスマッシュヒット、VOCALOID殿堂入りを果たし、今もっとも注目を集めるボカロPのはるまきごはんさん。自ら手がけるアートワークも特徴的で「銀河のように」美しいです。11月には1st同人アルバムも発売されました。今回は、ボカロPとして有名な宇宙人のナユタン星人さんと共同出展とのことで、その意気込みを語ってもらいました!
ーーまず初めに、「はるまきごはん」というアーティスト名、おいしそうな名前ですよね……。アーティスト名の由来をお聞かせいただけますか。
はるまきごはん:アンパンマンのような人間になりたかったので……。
ーーコミックマーケットに出展する事になった経緯について、お聞かせください。
はるまきごはん:コミケ出たいな~と思っていたら、突然目の前にナユタン星人さんが現れて「コミケ出ませんか?」と言われました。
ーーコミックマーケットというイベントにどのような印象をお持ちですか?
はるまきごはん:人がすごそうです。それだけ見る人、聴く人が沢山いるんだなと実感させられるイベントでもあります。コミケ始発組が改札をものすごいスピードで通り抜けてく動画が好きです!
ーーコミックマーケットやM3のような同人音楽シーンは、メジャーな音楽シーンと比較し、どういった特性や良さがあると思いますか?
はるまきごはん:作り手と聴き手の距離が近くて、気軽にSNSとかを通じて感想を伝えられたりできる環境が好きです。僕は昔から同人音楽が好きで聴いていたんですけど、好きな同人音楽をやっている人にTwitterでリプをしたら返信が来たりして、すごい嬉しかったんです。そういうのはなかなかメジャー音楽では味わえないのかなと思います。
ーー今回のコミックマーケット、他の出展者さんで気になる方がいれば、教えてください。
はるまきごはん:気になるサークルばかりなので書ききれないんですけど、大好きなボーカリストのめらみぽっぷさんという方が歌ってみたのアルバムを出すらしいので、買いに行きます。新譜のあるピノキオPさん、ざわそさんのスペースにも行きたいな~と思っています。あと、歌い手のりするさん&しるばーなさんや、ボカロ界隈で活躍してるアーティストのナナヲアカリさんなど、僕の曲を歌ったものが入っているアルバムを頒布する人たちもいるので楽しみです。
ーー現在1st同人アルバム『BLUE ENDING NOVA』がリリースされているということで。今回のアルバムではタイトルのとおり藍色を主したアートワークス・MVが目立ちますが、「BLUE」をコンセプトにされている理由と、このアルバムの聴きどころ、イチオシの1曲などもお伺いしたいです。
(アルバム『BLUE ENDING NOVA』より先行投稿曲『フォトンブルー』。美しいです……)
はるまきごはん:青色が好きなのもあるんですけど、ここ数年ずっと青色っぽかったな~と思って…。夕方、日が沈んだあと、空が藍色になる時みたいな切ない雰囲気です。個人的にはTr.13の『ルナ』がお気に入りです。アルバム最後のトラックで、優しい曲です。でもハッピーエンドではなくて、寂しさを受け入れているような。地球から離陸して、宇宙をぶっ飛んでいる彗星の女の子が主人公なので、それを踏まえて聴いてみてもらえたら嬉しいな~と思ってます。
ーー今回のコミックマーケットではナユタン星人さんと共同出展とのことで。なんでもナユタン星人さんはまだ地球に来て1年程だそうですが、ナユタン星人さんに教えてあげたことがあれば、お聞かせいただけますか……?地球での暮らしの知恵・おすすめの音楽・おいしい食べ物についてなど、何でも構いません。
はるまきごはん:地球では主に春巻とご飯が主食とされている事を教えてあげました。
ーーそんなナユタン星人さんとの注目のコラボグッズについても、気になっている読者が沢山いると思います。そちらについてもぜひぜひ教えていただきたいです!
はるまきごはん:僕がメダ子(ナユタン星人さんのオリジナルキャラ)のイラストを描いて、クリアファイル・ポストカード・缶バッジを作りました。いつものナユタンさんメダ子とは一風変わったメダ子になってます。特にクリアファイルなんかは普段でも使えそうな感じに仕上がったので、ぜひ使って欲しいな~と思います。
ナナヲアカリ(三日目 西れ-65a)
M3特集記事でも取材させていただいたナナヲアカリさん。1stミニアルバム『ネクラロイドのつくりかた』をリリースし、ノッています!『ネクラロイドのつくりかた』は、ナナヲさんを「ネクラなボーカロイド」に見立て、有名ボカロPたちがプロデュースするという贅沢な作品です。前述したはるまきごはんさんやナユタン星人さんもアルバムに参加しているとか。そんなナナヲさんと今回は「電波交信」してみました!
ーーコミケに出展することになった経緯を教えてください。
ナナヲ:CDができた!売りたいなぁ!コミケだ!!
ーーコミケというイベントにはどういった印象がありますか?
ナナヲ:戦場。
ーーコミケに初めて行く読者へ、楽しみ方のアドバイスを教えてください。
ナナヲ:僕も初めてですがウキウキしていればいいと思います。
ーー今回の冬コミではじめて頒布する作品や冬コミ限定で頒布する作品などあればおしえてください。
ナナヲ:『ネクラロイドのつくりかた』という豪華ボカロPの方々に書き下ろして頂いた6楽曲を収録したミニアルバムを持っていきます。缶バッジもあります。
ーー歌詞を思いつくのはどんなときですか?
ナナヲ:この気持ちをわかってくれる人が自分の他にもいるんじゃなかろうかとふと思った時。愛or憎悪が溢れた時。うたいたーい、ってなった時。
ーー冬コミで気になっているサークルさんなどあれば教えてください。
ナナヲ: ナユタンさんとはるまきごはんさんのコラボサークル気になります。
ーーコミケ参加への意気込みをおねがいします。
ナナヲ:自分の歌を聞いてくれる方と直接お会いできることを本当に楽しみにしています。『ネクラロイドのつくりかた』をどうぞよろしくお願いします!!
ぷにぷに電機(三日目 西よ-03b)
EDM、シンセウェイブ、シティポップ、ダブステップ、トランス、R&B、jazzとジャンルレスな曲を発信するアーティストのぷにぷに電機さん。編集メンバーの一人がM3-2016春にプライベートで行った時、『おとめごころの多世界解釈』を偶然手にし、その80年代っぽいアートワークとキラキラなサウンドに惚れたことから、今回取材を申し込むことに。そもそも「ぷにぷに電機」ってどういう意味があるのか? そのあたりについても聞いてみました。
ーーまず初めに、正直に申し上げて、初めて『Call Of Sea(Osanzi Remix)』を聴いた際、「ぷにぷに電機」というアーティスト名からは(Remixとはいえ!)想像もできないEDM感に圧倒されてしまいました。かわいいだけじゃなく、かっこいい楽曲も配信していらっしゃるぷにぷに電機さんのアーティスト名の由来について、お聞かせいただけますか。
ぷにぷに電機:『Call Of Sea』聴いてくださってありがとうございます!うれしい~。わたしはそれまでjazz等のアナログな音楽をやっていたのですが、ぷにぷに電機では電子音楽やってみたいと思いました。弐瓶勉先生の漫画が大好きで作中に登場する架空の企業『東亞重工』みたいな名前にしたいな、というのは最初から考えていて、かつそんな硬い単語のなかにやわらかい触感の単語を混ぜると二物衝突的な面白さがあるかな?と思い「ぷにぷに」をくっつけました。あと単純に、かわいいかな、と思って。作品も、この”ギャップを抱える”ということを大事に制作しています。『Call Of Sea』なら、クトゥルフ神話とEDMと女の子とかですね。楽曲をトラックメイカーさんにRemixしてもらうというスタイルもこの活動コンセプトの一環なんです。実は他にも「ふわふわ重工」とか「もこも工業」とか色々考えたんですが、「ぷにぷに電機」がなんだか一番しっくりきたのでこちらに決めました。
ーーコミックマーケットに出展する事になった経緯について、お聞かせいただけますか。
ぷにぷに電機:どちらかというと、コミケでCDを出したい!と思ったことがぷにぷに電機発足のひとつの動機なんです。サークル参加ってあこがれるじゃないですか?
ーーコミックマーケットというイベントについて、どのようなイメージをお持ちですか?
ぷにぷに電機:わたしは地方出身なので、ずっとコミケに参加することに憧れていました。来場者さんも、サークル参加者さんも、全員が「参加者」だという考え方がとても好きです。なんだかストイックでかつ貪欲な感じが良いですよね!
ーーコミックマーケットやM3のような同人音楽シーンは、メジャーな音楽シーンと比較し、どういった特性や良さがあると思いますか?
ぷにぷに電機:自分の責任で自分の作品を作れるところでしょうか。規模が小さい分、より柔軟な作品が多いと思います。流行っているジャンルなんかも独特で面白いですよ!とはいえ、正直にいうと今はメジャーとインディーズ・同人音楽って境界線が徐々になくなってきている気がしています。今後はもっとそうなっていくんじゃないでしょうか。
ーー今回のコミックマーケット、他の出展者さんで気になる方がいれば、教えてください。
ぷにぷに電機:まずはやっぱり、『Call Of Sea(Osanzi Remix)』を手掛けてくれたOsanziさんのサークル「3 0’Clock!」さんですね。新譜はボーカロイドを使用したEDMなどのめちゃくちゃカッコイイダンスミュージックが沢山入ってるみたいです。あと、コミケの醍醐味はやっぱり自分の足で作品に出会えるところなので、当日は私も色んなサークルを回って漫画も音楽もその他のグッズもいろいろ掘りたいな!って思っています。
ーー昨年11月にはKONAMI音楽ゲーム『pop’n music éclale』にご自身が手掛けた楽曲『albedo』が収録されたそうですね。それから1年経って、何かご自身で変化を感じたことはありますか?
ぷにぷに電機:音楽にジャンルがあるということを『beatmania』や『pop’n music』に教えていただいたので、『pop’n music』に自分の楽曲が収録されたことは人生のなかでも最もうれしい事のひとつです。なるべく幅広いジャンルに挑戦しているのもこの影響です。ぷにぷに電機を始めてすぐに収録が決まったのですが、それまでのわたし自身の音楽への取り組み方とは大きく変わりました。『albedo』もmyremyくんというトラックメイカーさんとのコラボレーションですが、彼をはじめ色んな方とコラボすることがものすごく刺激的で。前はどちらかというと全部自分でやってしまいたい!と思っていたのですが、今は色んな方の力を借りて、自分が「これが自分だ」と思い込んでいたものをどんどん壊してもらっていますね。
ーー今年の6月には、アートワークスを手掛けるF*Kaoriさんと、人気ファッションブランドgalaxxxyさんのギャラリーにて展示を行ったそうですね。twitterにも「ファッションのことがとっても気になってます」と記載がありましたが、具体的に、好きな、または今気になっているブランドやキャラクターについて、教えて頂けますか?
ぷにぷに電機:それこそgalaxxxyさんは漫画やアニメのキャラクターをちゃんとカッコいいファッションとして身体にフィットさせているのが凄いな~!と思っています。私としては、ファッションは表面ににじみ出ている自我の一部だと考えていて「そのひとの何が、このファッションに至らしめたのか」ということにとても興味があるんです。F*Kaoriちゃんのイラストもそうですが、アートワークを手掛けて下さるイラストレーターさん方は本当にアルバムのコンセプトをよく感じてくれて、それを目で見て分かるように表現して下さって。アートワークは音楽のファッションですから、バチッとハマるラフを頂くたびに物凄く感動します!
ーー今回の出展では、先程の質問にもあげさせていただいた『Call Of Sea(Osanzi Remix)』も収録されている新譜『東京クリーチャーガール』頒布があるそうですね。このアルバムのコンセプトや、聴きどころ、イチオシの曲などをお聞かせください。
ぷにぷに電機:今回の新譜では「ファッション×クリーチャー」をコンセプトにしています。東京で開催されているクリーチャーたちの架空のファッションウィーク、っていうイメージで。アートワークにはイラストレーターの諏訪さやかさんやsoda designの柴田ユウスケさんも参加して下さっていて、すごくファッショナブルな仕上がりになっています。楽曲はOsanziさん、DJ KUBUSくん、パソコン音楽クラブさん、LAZさん、zukijimaさん、それからayutthayaやnenemのベーシストmigita makotoくんと、同人音楽というくくりなく素敵なアーティストさんたちが集まってくれました。彼らと一緒に様々なクリーチャーをイメージしたトラックを作ったので、聴きながら何のクリーチャーがモチーフになっているか想像して頂くと楽しいんじゃないかなと思います。どのトラックも最高なのでどれがイチオシ……とは言い切れないのですが、今回もEDMからCityPop、Funkotなどなど多彩なジャンルがぎゅぎゅっと詰まってますよ!
ーー最後に、今回のコミックマーケットについて、意気込みを一言、お願いします!!!
ぷにぷに電機:コミックマーケットは全員が参加者ですから、皆でマナーを守って楽しく盛り上げたいですね。同人音楽に興味があったり、好きだったりするたくさんの参加者さんと会えるのがとっても楽しみです。新譜『東京クリーチャーガール』も、とってもいい出来になっていますので、ぜひぜひ、スペースに遊びに来てくださいね!
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(C)諏訪さやか×soda design柴田ユウスケ
(ぷにぷに電機「冬コミで頒布予定の新譜。クリーチャー向けの架空のファッションウィークをイメージ。イラストのアナログな質感と真っ赤な背景が印象的に」)
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