サンリオの人気キャラクター・シナモロール、 愛称「シナモン」がCDデビューを果たした。『ふれーふれーがんばれー!』と『しあわせのラベル』の2曲をパッケージ。どちらもマジカルな音色に彩られた踊れるポップソングであり、コロナ禍を過ごすリスナーへのメッセージもそっと忍ばせた楽曲である。作家のイマジネーションと、シナモンのキュートな魅力がミックスされた心優しい2曲と言えるだろう。
その制作を手掛けたのが、Felion Sounds(フェリオンサウンズ)である。彼らは楽曲の作詞・作曲・編曲にとどまらず、アーティストの魅力を引き出す企画発案までを行うなど、包括的なクリエイティブを請け負うクリエイター・チームである。これまでにもPileや久保ユリカ、水樹奈々をはじめとした、声優やアイドルへの楽曲提供から、ゲーム音楽やアニメ音楽の制作など、着実に実績を伸ばしている。今回はシナモロールの楽曲を手掛けたプロデューサーの釼持昌義、Yugo Ichikawa、HAMA-kgnの3人に、その創作の背景を語ってもらい、多角的なクリエイティブを行うFelion Soundsの理念を聞いた。
Photography_Kiruke
Interview & Text_Ryutaro Kuroda
Edit:Miwo Tsuji
――サンリオのキャラクター、シナモロールのアイドルデビューシングルがリリースされます。どのような経緯で楽曲の制作が始まっていきましたか。
釼持 昌義(以下、釼持) : 去年ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにシナモンがエントリーしていて、そこでステージパフォーマンスをするためのアイドルソングが欲しい、というお話を、サンリオさんからいただいたんです。いくつか曲を提案し、実際にジュノン・スーパーボーイ・コンテストで披露されたのがYugo Ichikawaが担当した『ふれーふれーがんばれー!』でした。
左から、Yugo Ichikawa、釼持昌義、HAMA-kgn
――それからCDシングルの制作に向かっていったと。
釼持 : アイドルとしてのシナモンを広めていきたいというお話があったので、「じゃあCDとか作りたいですよね」ってお話をしてまして。どういう曲がいいかサンリオさんと相談しながら、社内と外部のクリエイターのコンペ形式で僕のほうから提案させてもらって。そこで決まったのがHAMA-kgnが担当した『しあわせのラベル』でした。それからポニーキャニオン、サンリオ、フェリオンの3社でデビューシングルを作っていきました。
――「シナモン」というキャラクターに曲を提供することになった時、どういうイメージで楽曲を作っていきましたか。
Yugo Ichikawa(以下、Yugo) : サンリオさんがシナモンを発表されたのが2001年くらいなので、そこから20年くらい経っているんですよね。なのでシナモンを当初から愛しているファンに向けて、どんなメッセージを書けば楽しんでもらえるかを想像しながら書きました。ただ、それだけだとシナモンファンだけに向けた閉鎖的なイメージになってしまうと思ったので、2番以降は夢を追っている人へのメッセージを書きたいと思って。2番のサビ終わり、間奏の時に<ひとりになっても「ひとり」じゃないよ>っていう歌詞があるんですけど、コロナ禍で孤独を抱えてしまうことが多くなってきた中で、このメッセージが深くユーザーさんに届けばいいなと思っています。
――音楽的なところで意識したことはありますか。
Yugo : アイドルソングということで、サンリオさんからは“今人気のアイドル風・みんなに踊ってもらえるような曲”というお話をいただいてたので、その感じは意識していましたね。その上でシナモンらしさも出せたらいいなと思い、編曲の音を足していくところで、木琴のかわいい音やイントロやサビに笛の音を入れていって、シナモンらしい曲が書けたかなと思っています。
――マジカルな音が印象的ですね。
釼持 : まさにマジカルですね(笑)。世の中に出ている男性アイドル曲を意識しつつ、そこにプラスアルファ、「シナモンならではの曲」をイメージして作っていったのかなと思います。
――そして2曲目の『しあわせのラベル』はHAMA-kgnさんが作られた曲ですね。
HAMA-kgn : 『しあわせのラベル』も歌って踊れる楽しい曲と言われていたので、そこは踏まえて制作を進めていきました。
――その上でHAMA-kgnさんが意識したことは?
HAMA-kgn : 歌詞にシナモンのふわふわした優しい感じが出せたらなと思っていました。なので、歌詞ではひらがなを多めに使っているんですけど、内容としては、あんまり深く考えず楽しく生きていってもいいんじゃないかなってことを綴っていて。そういうメッセージも、シナモンが歌ってくれることでより届きやすくなるのかなと思って書きました。コロナ禍でずっと家に籠りがちだといろいろ考えることも増えていって、鬱々としてくることもあると思うので。
――なるほど。それで考え過ぎずにいようよと。
HAMA-kgn : そうですね。なので「しあわせのラベル」というタイトルは、いろんなことがあるけど、自分の解釈次第だよねっていう意味を込めていて。
釼持 : 自分の考え方や捉え方次第だから、どんどん「しあわせ」のラベルを貼っていっちゃおうよっていう思いが書かれていますね。
――ここからはFelion Soundsの活動についてお話を伺えればと思います。いつ頃作られた会社なんでしょうか。
釼持 : 株式会社フェリオンは2012年に僕が立ち上げて、はじめはひとりで好きなことをやっていたんですけど。やっぱりひとりだと出来ないことも多いので、仲間を集めようと思いまして、そこで出会ったのがHAMA-kgnとYugoでした。彼らの作っている楽曲にも惹かれましたし、人間性にも惹かれたので、これは新しい風が起こせるのではと思い是非一緒にやろうと声をかけたんです。
――どういう価値観やビジョンを持って動いているチームなんでしょうか。
釼持 : 僕らは3人とも、元々は個人で曲を作って発表していたんですよね。年代的には僕が上なんですけど、いわゆる同人活動で自主制作してきたという点では3人共通していて。ふたりもボーカロイドの曲をプロデュースしたり、自分の作品を発表してきた経緯があるので、それぞれが自分の楽曲における世界観だったり、オリジナリティを既に持っていて。そうした3人が集まることで、新たな風が起きるんじゃないかと思ったんです。なのでFelionのロゴも風車を模したデザインになっているんですけど、それも一人ひとりが合わさった時に新しい風が起きるっていうモチーフから来ています。
――おふたりは釼持さんのどこにシンパシーを感じて一緒にやっていこうと思いましたか。
HAMA-kgn : 僕は元々はバンドをやっていて、その後同人活動に入っていったんですけど、そこで活動していく中で、自分が一番やりたいことは制作だなっていう思いがどんどん強くなっていったんですよね。それでずっとひとりで自主制作をやっていたんですけど、釼持さんと出会って色々話していく中で凄く気が合うなということに気づきまして。
釼持 : 気が合うのは大事だね(笑)。
――つまり、人間的なところで繋がっていったと。
HAMA-kgn : 釼持さんと年は離れているんですけど、同じ目線に立ってくれる感じがあって、そういうところで惹かれたのかなと思います。
――Yugoさんはどうですか?
Yugo : 僕も音楽を始めたきっかけはバンドでした。ただ、長年やっても、鳴かず飛ばずというか、結果も出せないし人間関係も難しくなってしまって。それでバンドを抜けてボーカロイドの楽曲を自分で作っていくようになったんですけど。制作していく中で、やっぱり自分は音楽を仕事にしたいなと思って、兵庫県から東京に友達と一緒に出てきたんですよね。で、そこでルームシェアしていた友達の知り合いが、釼持さんでした。
釼持 : 友達の友達みたいな感じです(笑)。
Yugo : なので最初の出会いは、僕の家でやったたこ焼きパーティにいらっしゃった時ですね(笑)。そこで釼持さんに出会って、HAMA-kgnが言っていたように、僕も釼持さんとは気が合うのを感じていたし、年上なのに気負いしないというか、良い意味で社長感がなかったんですよね。それから外注で仕事をいただいていく中で、フェリオン・サウンズというチームで一緒にやっていかないかとお声がけいただいて。今は5年くらい一緒にやっています。
――クリエイターとして、ひとりでやるよりチームで動くことにどんなメリットを感じますか。
HAMA-kgn : 僕は制作に関しては自己完結するのが好きなんですけど、それ以外の部分が苦手なんですよね。
――それこそ、プロモーションとか?
HAMA-kgn : はい。そういうところを汲んでいただいたのも嬉しかったですし、みんなでやったほうが楽しいですね。
Yugo : 僕も挨拶回りとかが本当に苦手で、東京に出てきた時も、音楽の仕事をしようと決めたけど、どうすればいいんだろうって考えている時に釼持さんと出会ったんですよね。今は仕事を作ってくれる存在がいるからこそ、自分もクリエイトでお返しできるし、釼持さんの人間性でいろんな人と繋がっていってる実感が凄くあります。そういう環境にいられることは、幸せなことですね。
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