ちゃんみなが2ndフルアルバム『Never Grow Up』をリリース。約2年ぶりに届けられたアルバムには、明らかにこの2年の進化が反映されている。楽曲はより幅広くなり、歌詞は具体性と普遍性を帯びた。彼女が表現したい本質的なメッセージは濃縮・洗練され、本作が新たなリスナーを呼び込むことが容易に想像できる。全編通して愛に溢れた作品であることも特徴で、本人の言葉を借りれば「いろんな愛の形が詰まっている」。つまり本作は、ちゃんみながこれまでに経験してきた様々な愛の副産物だと言えるのかもしれない。インタビューを通して、彼女を取り巻く様々な愛の形を紐解いてみよう。
Photography_Takaki Iwata
Interview & Text_Sotaro Yamada
Edit_Shu Nissen
(ちゃんみな『Never Grow Up』MV)
この2年で、自分の考えを明確に曲に込められるようになった
――前回のアルバム『CHOCOLATE』から2年空きました。ずっと精力的に活動していましたが、この2年間はどんな2年間だったのでしょう。率直に、長かったと感じていますか?
ちゃんみな : 「もう2年も経った」という気持ちと「まだ2年しか経っていない」という気持ちの両方があるけど、「やっとできた」という感じはないですね。というのも、その時その時でいつもやりたいことをやっていたから。それに、今の方がより自分の考えを明確に曲に込めることができるようになったんです。
――ということは、2年間空いたことがプラスに作用したと。
ちゃんみな : そう思います。
――これまでのアルバムは、制作の時点で、自分のなかに「カラー」があったそうですね。『未成年』ならピンク、『CHOCOLATE』ならブラックというように。今回はどうでしたか。
ちゃんみな : 今回はレインボーですね。ジャケットはクリスタルだけど、ほのかにレインボーを混ぜています。いろんな感情やいろんな表情を表現したくて、それを表すのにふさわしいのはレインボーだと思ったんです。
いろんな形の愛が詰まったアルバム
――では収録曲について、具体的に聞かせてください。
ちゃんみな : どこかで話したかったエピソードがあるんだけど、『Yesterday』という曲、これはライブチームメンバーが仕事で大きなミスをしてしまったときに書いた曲なんです。ミスをしてしまった後の彼は本当に見たことないくらい落ち込んでいて。その子はいつも笑ってるイメージだったから、あんなに落ち込んでいるのを見ていたら、なんだか愛おしくなってきちゃったんです。その時の気持ちで書きました。そんなふうに、今回のアルバムにはいろんな形の愛が詰まっています。どの曲も、具体的に「誰に歌っているか」という対象がいるんです。
――『君が勝った』はどうでしょう? 『Doctor』などに近いトラップビートだと思いますが。
ちゃんみな : あれは、「モテる女子になりたいな」と思って。
――ええっ、こんなにドープなビートで?
ちゃんみな : 黒髪で華奢で、あまり強い発言をしないような女の子っているじゃないですか。そういう子になれたらもっと人生がラクになるんじゃないかなあと思った瞬間があったんです。それで「私が負けた、君が勝ったよ」と思っちゃったんですよね。
――でも実際には負けていないからこそ、あのビートになったわけですよね。
ちゃんみな : たしかに(笑)。やっぱり負けを認めたくないからビートだけは強くなったのかも(笑)。
――ちゃんみなには、これからも言いたいことを言ってもらいたいですよ。それが同世代の女の子に強烈に支持される理由のひとつだと思うし。
ちゃんみな : それはありがとう。でもわたしも傷付く時は傷付くし、恋愛だってしますからね。
「付き合っちゃいなよ(あの子と)/浮気されろ(されろ)」
(ちゃんみな『Call』MV)
――ぶっちゃけて言うと、今のちゃんみなは恋愛モードなんじゃないですか? 恋の曲が多いです。『Call』なんてその最たるものだと思いました。
ちゃんみな : 『Call』は、まさに恋愛真っ最中で書いたものです。もうね、書かずにはいられなかったの、この時は。
――「付き合っちゃいなよ(あの子と)/浮気されろ(されろ)」は大変なパワーワードですよ。
ちゃんみな : まあ、うまくいってなかったんですよ(笑)。ハッピーじゃない時の方が曲は書けるので。その時の恋はこうして良い曲を生み出してくれたから、素直に感謝していますけどね。
――人称が「あなた」ではなく「君」になっているところに、ちゃんみなの気持ちが象徴的に現れているように思いました。
ちゃんみな : そうそう。わたし恋人や好きな人のことは「あなた」って書くんです。友だちに対しては「君」って書く。
――その発言を真に受けるとすれば、『Call』は終わった相手、もう好きではない相手について歌っている曲ですね。「just friends」(※ただの友達、の意)という歌詞もあります。一方、今回のアルバムタイトルである『Never Grow Up』は「あなた」に対して歌っています。
ちゃんみな : これも終わった相手に対して歌っているんだけど、すごく長いあいだ一緒にいた人に対して歌っているんです。過去の恋に区切りをつける曲ですね。あなたとはこれで最後、ということですね。
――それはきっと、大きな変化ですね。
ちゃんみな : そうですね。そう思う。
――だからこそ「月が綺麗だね」という少しひねった言い方で終わっているんですね。そしてだからこそ、こんなに切ないメロディなんですね。
ちゃんみな : そうそう。隠語を使いたかった気持ちを想像してほしいな。
女の子たちが表現できるようになった。でも、違和感もある。
――ちゃんみなの活躍は、昨今世界的に盛り上がっているガールポップの流れに位置付けることができると思っています。アリアナ・グランデ、テイラー・スウィフト、カーディ・B、カーリー・レイ・ジェプセン、ビリー・アイリッシュ、そしてもちろんビヨンセ……。なぜこれほど女性アーティストが活躍していると思いますか?
ちゃんみな : 立ち上がる人が増えたんでしょうね。それで勇気をもらってみんな後に続いていく。
――ということは、女性は立ち上がらざるを得ない状況にあるということなんでしょうか。
ちゃんみな : というより、単純に「立ち上がることができるようになった」ということだと思います。
――といいますと?
ちゃんみな : アリアナ・グランデもカーディ・Bも、べつに立ち上がる必要はそんなにないと思うんです。まあ、アリアナは元彼を亡くしたとかいろいろあったけど、「男性と戦う」みたいなイメージはないですよね。そうではなく、ただ純粋に自分を表現したいからやっているんだと思う。それに女の子たちが憧れて、どんどんムーブメントになっていく。昔はそれができなかったけど、できるようになったから。
――男性女性という区分けをすること自体がナンセンスだとわかった上でこういう話をするんですが、今の時代、男性と同様女性も伝えるべきメッセージを持っているからなのかな、と思ったんです。ちゃんみなはそうは思わないですか?
ちゃんみな : わたしはみんな平等であるべきだと思っているから、あまりそうは考えないかな。むしろ最近は、行き過ぎて女性が甘え過ぎでは?と思うこともありますよ。
――それは面白い視点ですね。具体的にどういうことでしょう?
ちゃんみな : 誤解されたくないから言葉を選ぶんだけど、何かに対して物言いをする人って、女性が多い気がしませんか? テレビ番組に対して「子どもが見たらどうするんですか」とか、これならまだしも、「最近犬を飼い始めました」と言ったYouTuberに対して「ちゃんと教育できてんの!? 犬がかわいそう!!」とクレームをつけた人もいます。そういう人の多くは、わたしが見た限り、ほぼ女性でした。
――なるほど、続けてください。
ちゃんみな : 女性が声をあげた時に、その声をちゃんと掬ってくれる国は素晴らしいと思います。でもそれに甘えきっている女性もかなりいるんじゃないかと思うんです。一部の人の問題を拡大解釈して男性全体の問題であるかのように大きな声を出すことにも違和感を抱きます。女性同士で結託して男性を攻撃するようなムードは危険だと思う。でもそれも、いろんなことに圧迫されて、心が硬くなってしまったからだと思うけど。
こんなに愛情を注がれてきたから
――ちゃんみなの心は「硬くなってしまった」の真逆ですよね。ライブなどを見ていても、仲間に対しての愛情がすごく深いように感じます。どうしてそれほど愛情深い人間になれたと思いますか?
ちゃんみな : もしわたしが愛情深い人間なのだとしたら、それはもう間違いなく母親の影響ですね。小さい頃から厳しかったけど、めちゃくちゃ愛情をくれたんです。たとえば一緒にスーパーに行って離れ離れになってしまっても、絶対に探してくれないんです。「住所わかってるんだから、自分で家まで帰って来なさい」って。ほんの子供なのにですよ?
――ええ……それはすごい。よっぽど娘を信頼していないとそんなことはできないです。
ちゃんみな : ありえないですよね(笑)。でもそれって超~~~~愛情深いんです。
――自信を持ってこんなに母親に愛情を注がれてきたと言えるのは、本当に素晴らしいことですね。そんなことを言える人はなかなかいません。
ちゃんみな : そうやってひたすら厳しさと愛情を注がれてきたから、心の奥のやわらかいところがしっかり守られてきたんだと思います。……なんか、いつも母親に感謝してインタビューを締めてない? でも大事なことだから、まあいっか(笑)。
作品情報
ちゃんみな 2nd Album
2019.08.07
『Never Grow Up』
初回限定盤:WPZL-31633~4/4,200円+税
通常盤:WPCL-13069/3,000円+税
[収録曲]
01. Call
02. I’m a Pop
03. PAIN IS BEAUTY
04. Never Grow Up
05. Yesterday
06. 君が勝った
07. My Own Lane
08. GIRLS
09. Can U Love Me
10. Like This
11. Doctor
12. CAFE
13. アーカイブに保存した曲
14. SAD SONG ※Bonus track
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