どこにいても「外国人」っていう意識がある
――メジャーになるということは、今までより多くの不特定多数の人から理不尽な非難を受け続けることでもあると思いますが、それについては今どんなふうに受け止めてますか?
ちゃんみな:それはもう、仕方ないかなと思います。やっぱり『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』の直後は意味わかんないくらいディスられて、ツイッターとかでも超嫌なこと言われて落ち込んだりしました。でも、今はそういうのは基本、見ない(笑)。見たとしても、逆にそういう心無い言葉をエネルギーにしてやっていこうと思ってます。
――ちゃんみなさんに対する反応って極端ですよね。すごく好きか、めちゃくちゃ嫌いになるか。
ちゃんみな:そうなんですよね〜(笑)。本当に『She’s Gone』の歌詞に書いたように、「死ねクソブス」みたいなの多いんですよ。でも私のことを好きでいてくれるファンの子って、むしろ私より強い人が多くて、「死ねクソブス」とか言う人に怒ってくれるんです。それは勇気付けられますね。……まあ、ケンカはしないでほしいけど(笑)。
――好きになるにしろ嫌いになるにしろ、それだけ強い感情を喚起させることができるという時点で、ある程度成功しているのではないかと思います。ちゃんみなさんの曲は、聴く人の心に何かしらの爪痕を残します。
ちゃんみな:見てるところはもっと先なので、それくらいで成功してるとは思わないですけど、でも、リアクションがあるっていうのはありがたいことだと思います。
――ところで、ちゃんみなさんの母語は韓国語ですよね。でも今回、アルバムに韓国語は一切入ってない。それはなぜでしょう?
ちゃんみな:韓国語を入れることも最初は考えました。ひとつの曲に韓国語と日本語と英語を混ぜるとか。でもそれをやるとわかりにくくなる可能性もあって、今回はやらないことにしました。どうせ入れるなら、中途半端に韓国語を混ぜるんじゃなくて、まるまる全部韓国語のアルバムを作る方がいいかもしれないですし。将来的にはそういうことをやろうと、リアルな計画として真剣に考えてます。
――言語について聞きたいことがあります。ちゃんみなさんのラップは「聞き取りやすい」ってよく言われませんか?
ちゃんみな:えっ、そうですか? むしろ「こいつのラップ何言ってるかわかんねー」とか言われますよ。
――そういう人は、単にちゃんみなさんをディスりたいだけであって、そもそもヒップホップとかラップには興味がないんじゃないですか?
ちゃんみな:ああ、ディスりたいだけか(笑)。
――たぶんその人は、どのようなラップも聞き取れないと思います……というくらい、ちゃんみなさんのラップは聞き取りやすい。で、それがなぜか考えたんですけど、それって、子供の頃から複数言語で話さなければならない状況で生きてきたことが関係してるんじゃないかと思いました。ちゃんみなさんは、韓国とアメリカを往復する幼少時代を過ごし、それから日本にやって来たんですよね。日本で生まれ育って日本人ばかりの中で生きてきた人よりも、そういった生い立ちの方が、「伝えよう」という意識が強くなると思いませんか?
ちゃんみな:あ、それはかなりあります。常に「伝えよう」って強く思ってました。私、常に外国語を使ってる意識があるんですよ。日本に来たばっかの頃は、やっぱり言葉がわからなくて辛い思いをたくさんした。そういう中で「どうしたら伝わるんだろう?」ってのは、音楽関係なくずっと考えてました。
――そもそも「伝わらない」という壁を実感してるから、「伝えよう」という意識が無意識のレベルでも強く働く。それが言葉選びや、音への言葉の乗せ方、発声の仕方に繋がってるんじゃないかと思ったんです。声だって曲の中でかなり変えてますよね?
ちゃんみな:そうですね。それを気づいてもらえるのは嬉しいな。
それと、私には、どこにいても「外国人」っていう意識もあるんです。アメリカに行けばもちろん外国人だし、日本にいてもそう。韓国でさえ、幼い頃に離れたから、外国に行くような感覚があるんです。ホームがない、本当の意味で地元がない。そう感じて寂しい気持ちになることもあります。だから「生まれはKOREA 育ちは練馬」って言ってるんですけど、本当に東京の練馬を地元と言っていいのか?って考えることもありました。
ただ最近、超嬉しいことがあったんです。中学の時の友達から久しぶりに連絡が来て。私、中学の頃ちょっとヤンチャしてたんですけど、ある時を境に「こんなことはやめよう、真剣に音楽の道に進もう」って決めたんですね。そう決めた日から、一緒にヤンチャしてた友達とは会わないようにして、連絡もとらないようにしたんです。携帯まで変えて連絡取れないようにしましたから。
で、久々に呼び出されたんです。
そしたら、みんなで「メジャーデビューおめでとう!」って祝ってくれて……。
ヤンチャしてた友達が、実はみんな私と同じ頃にヤンチャをやめて、今はそれぞれの道に進んでたんですよね。そうして私を地元の仲間だって言ってくれて。「ああ、胸張って地元って言っていいんだな」って思えました。
(ラップCM『世界一周サイファー韓国編』。韓国語でのサイファーや、rude-αと言×THEANSWERによる「ちゃんみな口説きバトル」も見ものです)
次のページは「私らしくいるために/ちゃんみなの運命の出会い」。
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