自称評論家の類はまとめて削除
――仮に『after that』のようにすべてが過ぎ去った後の世界がこれからやってくるとしたら、いまは過渡期ですよね。ぼくりりさんはオウンドメディアを始めたことで、メディアの立場とミュージシャンの立場の2つを手に入れたわけですが、まずはメディアの人間として考えた時に、過渡期の時代にメディアがやるべきことがあるとしたら何だと思いますか?
ぼくのりりっくのぼうよみ:僕、単にやりたいことをやってるだけなので、自分の立場とか役割ってよく分かってなくて。これをやらなければっていうよりは、自分がやりたいなっていう、あくまでそこが第一なので。携わって長くなるとそういうことも考えるようになるかもしれないですけど。
――逆に、メディアに期待することってありますか? こういうメディアは本当はめっちゃ嫌なんだよね、とかでもいいです。
ぼくのりりっくのぼうよみ:ああ、メディアが嫌か……、自称評論家の類はまとめて削除すれば良いんじゃないですかね。よく「アーティストには狂気が必要だ」とか言う人いるじゃないですか。2017年にもなってそんなこと言ってる時点で終わり過ぎでしょ、と思います。「狂気」って、自分がわからないことをわからないですって言わないようにするための上手なツールというか。そんなことの上にアートはないと思うし、だったら音楽理論とかを無視しためちゃくちゃなただの不協和音の方が狂気性が漂っていると思うし。だって、「狂気」って、評論家が一番言っちゃいけない言葉じゃないですか? そういうのを優しく「君たちには狂気っぽく感じられるかもしれないけどこれはこういう意図があってこんな風になっててこうなんですよ」って教えるのが、たぶん評論家の役割なんで。だからそういう意味では、役割を果たさないと音楽評論家とか要らないんじゃない?って気がしますけどね。
――ミュージシャンとしての役割はどうですか?
ぼくのりりっくのぼうよみ:自分のトラックを作ってもらってる人たちの音楽はめっちゃ好きで、それが広まればすごく嬉しいなと思っていて。雲のすみかってアーティストがめっちゃ好きで今回のアルバムにも参加してもらってるんですけど(『在り処』と『Liar』の作曲で参加)、これがきっかけでみんなに知ってもらえたらすごい嬉しいなと思います。そういう部分と、音楽をやっていると他業種の人と関われることがある。普通、落合陽一さんと直接1時間半も喋ったりできないと思うんですね。でも音楽をやっていたがためにそういうことができる。それはすごく嬉しいし、便利なことだと思うので、そういう部分で、打算的な音楽のやり方というか……、なんか悲しい感じになってきてますけど(笑)。まあ、もちろん音作ってて楽しいって部分もあるんですけど、どちらかというと便利になるなって気持ちが最近は強いと思いますね。
――「音楽をやってる自分ウケる(笑)」みたいな感覚ってありますか?
ぼくのりりっくのぼうよみ:ライブしてる時とかありますね。この前、テレビの歌番組の収録があったんですけど、そういう時とかに「えっなんでこんなめっちゃ豪華なステージに立って歌って、それをみんながカメラに撮って、なんだこの状況?」って思って(笑)。すごい笑っちゃったっていうのはありますね。そういう俯瞰はあります。
――じゃあ今後、音楽じゃないものをたくさんやっていく可能性はありそうですか?
ぼくのりりっくのぼうよみ:そうですね。実際結構やってますし。最近はゲーム作りたくて。『かまいたちの夜』とかがめっちゃ好きで、スパイク・チュンソフトのゲームをめっちゃやってるんですけど。ダンガンロンパとか。ゲーム自体が本質じゃなくて、ストーリーを共有するためのツールとしてのゲームっていう側面が大きいなと思ってて、それはすごく面白いことだなと思います。
――小説もそのひとつ?(※『伊藤計劃トリビュート2』に短編『guilty』が掲載)
ぼくのりりっくのぼうよみ:そうですね。小説も書いてみたり。あれって自分の都合の良い世界を作っていいんですよね? それすごいなと思って。たとえば『ダンガンロンパ』には七海ちゃんって女の子が出てくるんですけど、めっちゃ可愛くて、もうほんとめっちゃ可愛くて超付き合いたいんですけど実際は付き合えないわけじゃないですか、ゲームのキャラだから。でも小説書いたら小説の中で付き合えるっていう。「僕は七海ちゃんとキスをした」とか書けば、キスしてるわけじゃないですか。それ最高だなと思って。今後はどっちかと言うと、もっと虚構の方に行ってしまうかもしれないです。
ぼくのりりっくのぼうよみの「運命の出会い」
――最後の質問です。ぼくりりさんの「運命の出会い」って、何でしたか? ……七海ちゃん以外でお願いします(笑)。
ぼくのりりっくのぼうよみ:なんだろう……あ! 文章ですかね。僕、すごく人の目を気にして生きてた時期があったんです。自分がこうしたいとかじゃなくて、こうしたら人はどう思うんだろうみたいなことしか考えられなかった時期があって。中学校とか、小学校終わりくらいですかね。そういう時に、「思ったより人は自分のこと気にしてないし、とりあえず思ったらやってみればいいじゃん」的な文章にネットでたまたま触れて。まあ、こういうのって結構ネットに氾濫してると思うんですけどね。でもそれから、「何でもとりあえずやって、やってみて駄目だったらって捨てればいいか」っていう方にシフトできたんですよね。誰の言葉だったのか全然わかんない、意識高い系の人のブログかもしれない。でも本当にその通りだなと思って。だから僕は割と今そういうメッセージを発信してると思いますし。とりあえずやればいいじゃんって。それこそ初期費用というか、最初のハードルがどんどん下がってるじゃないですか。音楽だって、パソコンと、歌を録りたければ1万円ちょいくらいで機材買えるし、それで結構なクオリティのものできるわけだし。じゃあやればいいじゃんって。そういうところは発信していきたいなって思います。
(ぼくのりりっくのぼうよみ2nd Album『Noah’s Ark』全曲視聴トレーラー映像)
リリース情報
2nd ALBUM「Noah’s Ark」
収録曲
01. Be Noble
02. shadow
03. 在り処
04. 予告編
05. Water boarding -Noah’s Ark edition-
06. Newspeak
07. noiseful world
08. liar
09. Noah’s Ark
10. after that
ぼくのりりっくのぼうよみ:
早くより「ぼくのりりっくのぼうよみ」、「紫外線」の名前で動画サイト等に投稿を開始。
高校2年生の時、10 代向けでは日本最大級のオーディションである「閃光ライオット」に応募、ファイナリストに選ばれる。提携番組であるTOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」で才能を高く評価されたことで一躍脚光を浴び、まだ高校3年生だった2015年12月、1stアルバム『hollow world』でメジャー・デビュー。“sub/objective”や“Sunrise(re-build)”等のヒットと共に、大きな話題を集める。言葉を縦横無尽に操る文学性の高いリリックは多方面から注目を集めており、雑誌「文學界」にエッセイを寄稿するなど、音楽フィールド以外でも才能を発揮している。
2016年7月、EP『ディストピア』をリリース。CDの遺影を模したアートワークや、EPの限定盤用に書き下ろした短編小説で再び大きな話題を集めている。
(公式サイトから抜粋)
ぼくのりりっくのぼうよみ公式サイト
Twitter
オウンドメディア『NOAH’S ARK』
SHARE
Written by