2016年10月15日に、幕張メッセイベントホールにて全方位から観覧可能な360°ライブ「虚無病」を開催するamazarashi。これは、ギター/ボーカルの秋田ひろむが書き下ろした小説『虚無病』と緊密にリンクした、まったく新しいライブの試みである。ライブ直前の10月12日にミニアルバム『虚無病』をリリースすることも決定しており、すでに特設サイトにて、オリジナル小説『虚無病』第一章が公開されている。
(http://www.amazarashi.com/kyomubyo/)
アルバムリリース&360°ライブ直前特集として、MEETIAでは、秋田ひろむに対して初のメールインタビューを行った。
本インタビューでは、主に、秋田ひろむの言語感覚や言語表現に注目した。
インタビュー・文=山田宗太朗・小澤裕雪
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物語から派生したアルバム
ーー10/12に約3年ぶりとなるミニアルバム『虚無病』がリリースされます。このアルバムを制作するに至った経緯を教えてください。
幕張でのライブという、amazarashiにとってこれまででの最大規模のライブが決まり、何か特別な事ができないかと考えました。そこで何か物語を持って僕らの音楽を表現出来ないかと思い「虚無病」という物語を書きました。そこから物語にそって曲を作ったり構成したりして、ミニアルバム「虚無病」が生まれました。物語から派生したアルバムです。
ーーアルバムの全体像はどういったイメージを思い描いていたのでしょうか?
優しい曲調のものから、少しずつメッセージ性の強い曲、激しい曲になっていくようなイメージでした。感染するように徐々に内面の暗い所に焦点を合わせるみたいな。
ーー秋田さんの曲には、私小説的なものと他者に向けたものがあると思います(たとえば前者は『爆弾の作り方』『美しき思い出』など、後者は『ジュブナイル』『あんたへ』など)。アルバム『虚無病』は、前者と後者に分けるとしたら、どちらに当たるものですか?
どちらの曲も入ってます。ただ、今回は外に対する怒りの比重が大きいと思います。前作の「世界収束二一一六」もそうだったんですが、その延長線上に位置するアルバムです。
ーーアルバムリリースに先駆けて、小説『虚無病』第1章が公開されました。『虚無病』という、架空の病気が蔓延した世界を描いた小説ですが、なぜこのような小説を書こうと思ったのでしょうか?
以前までもこういう物語は幾つか書いてきたんですが、それらは全て僕の内面を表現した内省的なものでした。今回は幕張でのライブでどう僕らの音楽に引き込むかというところから考えました。より分かりやすく、音楽やライブ全体の強弱や押し引きを意識した物になりました。
ーー小説『虚無病』は、いつ、どのように着想を得たのですか?
幕張のライブが決定してから考えはじめたので、今年の初めだったと思います。ポストアポカリプスとかゾンビの映画や漫画みたいなものをamazarashiのフィルターを通してやりたいな、と漠然と考えてました。
ーー「言葉によって感染する」というアイデアを非常に面白く感じました。秋田さんにとっての「言葉による感染体験」があれば教えてください。
言葉ってコミュニケーション手法の中で最も重要なものだと思うんです。言葉で人生変わる事は多々あると思います。実際僕も好きな音楽やその歌詞で人生を変えられた人間だと思います。amazarashiの音楽を世に広めるという活動も、ある種、感染者を増やすという行為かもしれません。
ーー「虚無」という言葉は、amazarashiにとって重要なワードの一つであると思います。「虚無」という言葉に対して、秋田さんは、どのようなイメージを持っていますか?
なにが正しいかは分からないですが、僕にとっての一番の脅威が虚無です。虚無主義的に達観して、今だけを楽しく生きてく人も多くいると思いますが、僕の場合それをしてしまうと悪い方向に行ってしまうと思うので僕にとっては抗うべきものです。
ーー小説『虚無病』に登場するキャラクターには、モデルがいるんでしょうか?
なんとなくamazarashiの楽曲をモチーフに考えました。それぞれの曲のメッセージ性をキャラクターに当てはめて、それぞれの人間に意志がある、ということを考えました。
ーーネタバレできないので質問が難しいんですが、小説『虚無病』には暴力描写も登場します。これほどの描写は今までの秋田さんの歌詞や小説にはなかったものだと思いますが、何か狙いがあれば教えてください。
違う思想同士の人間がいて、主人公はどちらを選ぶかという岐路で、主人公は一つの思想を壊してもう一方の思想を選びます。その”壊す”というところに重きを置いた表現です。
ーー小説を元に、10/15には幕張メッセで単独公演が行われます。小説の内容に沿ってライブが進むという、極めて珍しい形のライブですが、どうしてこのような試みをしようと思ったのでしょうか?
amazarashiの楽曲は皆さん好きに解釈してもらって構わないんですが、一つのストーリーを追って演奏する事で、曲の意味をみんなで統一して共有することで、よりカタルシスを得られるのではないか、という試みです。音楽においてはあらゆる手法を試したいと思ってます。
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