時代やジャンルを越えた9曲。選曲の基準とは?
――『PICK POP!』の収録曲は、どういった基準で選ばれたんでしょうか?
三浦 : 『チョコレイト・ディスコ』が2007年の曲だから、2000年以降のJ-POPで統一しようという話もあったんです。でも、やってみたい曲を出し合うなかで、YMOの『テクノポリス』をやってみようという話になって。それは面白いなと思って、となると幅が広くなる。じゃあいろんな世代をちょっとずつ入れよう、と変わっていきました。
――やってみたい曲を3人で出し合ったんですね。誰がどの曲を提案しましたか?
押尾 : 『テクノポリス』は1978年の曲で、僕が小学生の時に聴いて衝撃を受けた曲。『チョコレイト・ディスコ』とテクノつながりということもあって、この曲は僕がぜひやりたいと言いました。これもイントロが3弦の開放弦を使ったもので、三浦くんが弾けるなと。開放弦を活かせて弾き応えのあるものをと考えていたら出てきた曲です。
徳岡 : 僕は『夢芝居』を選びました。
――そうだったんですか! これは押尾さんのチョイスかと思ってました。
徳岡 : 僕も三浦もこの曲が好きなんです。スナックに行くと、三浦がこの曲をめっちゃ歌うんですよ。
――なるほど!スナックで見つけた曲だったのですね。
徳岡 : 三浦が歌ってる時にふと「これDEPAPEKOでやったらカッコ良いんちゃうか?」と閃きました。僕は三浦の歌はぜんぜん聴いてなかったけど(笑)、アコギでイントロを弾くイメージはすごく沸いてきたんですよね。
三浦 : 僕は「これ」という曲は出してないんですけど、たとえばゴスペラーズの『ひとり』のように、アカペラの曲をアコギでやるのは面白いねというアイデアを出しました。
――ということは、自分たちに影響を与えた曲を選んだのではなくて、あくまで「アコギでカバーしたら面白そう」という観点で選んだということですね。
三浦 : そうです。もしくはさっき押尾さんが言ったみたいに、チューニングとかフレーズでイケると思った曲ですね。
徳岡 : 少女時代の『Gee』も押尾さんが提案してくれた曲ですね。これもアコギでできるのか?という曲ですけど、やってみたらすごくカッコ良かった。
3人だからこそ生み出せる化学反応。
――『PICK POP!』のなかで、特にお気に入りの曲はどれですか?
徳岡 : 僕は『Gee』ですね。単純に曲がカッコ良いのと、アコギでこれをやりきる潔さが好きです。ボーカルが応酬する感じを3人で弾けるのが楽しいです。
押尾 : 僕はどれも好きだけど、『Dragon Night』は結構好きですね。この曲は、僕と三浦くんでヘッドアレンジをして、徳ちゃんがまとめてくれたんですけど、最初につくったものと違う展開になったのがすごく新鮮で。3人で一緒につくった感じがしていて気に入ってます。
三浦 : 弾き応えがあるという点でいうと、『恋』。この曲では、自分が弾いているパートはすごく細かいことをしているんです。原曲ではいろんな楽器が入っているところを、全部アコギに置き換えて何人ぶんも演奏している。もう1曲選んでいいのなら『恋するフォーチュンクッキー』を選びたいです。リフものなので、すごく気持ちよく弾ける。
――『Dragon Night』は、良い意味で原曲と離れているような気がしました。ヨーロッパのお祭りで鳴っているような、祝祭的な音が聴こえてきます。
押尾 : 僕は原曲に忠実にいこうとするタイプで、三浦くんも譜面通りに一生懸命トライするタイプなんですけど、徳ちゃんは結構、アーティスティックに「もっとこうしたら良いんじゃないか」って全然違うものをポンと持ってくるんです。とくに『Dragon Night』はそうでした。そこで化学変化がうまれてDEPAPEKOサウンドになっている。『ラブストーリーは突然に』でも、イントロのオルゴールが鳴っているような雰囲気は徳ちゃんのアイデアで、僕と三浦くんにはそういう発想がまったくなかったんです。
徳岡 : それは押尾さんが『チョコレイト・ディスコ』という大枠をつくってくれたからですよ。「原曲がやっていることをアコギで全部やってみたらこんなに面白くなる」ということがメインで、それがあるからこそ僕はちょっとだけ遊ばせてもらった。でも『Dragon Night』は、もともとカントリーの曲だと思って僕は聴いていたので、自分のなかではそれほど変化はなかったですけどね。
押尾 : 徳ちゃんはカントリーって言うけど、僕は『Dragon Night』の世界はスネアドラムとEDMだったんですよ。
――「どう聴いているか」が「どう弾くか」に反映されるんですね。
徳岡 : それが3人いて、3つの意見が合わさるから面白いですよね。
代表曲のカバーに込められた想いと、オリジナル曲制作秘話。
――アルバムにはお互いのカバー曲も収録されています。この2曲を選んだ理由は?
三浦 : 僕のなかでは、8ビートをひとりでやってポップなメロディを奏でる、っていうのが押尾さんの代名詞。『翼 ~you are the HERO~』は、一緒にライブをするようになった初期からずっとカバーさせてもらっている思い出の曲です。僕らのアレンジが今回ようやく収録できたっていう意味では、DEPAPEKOとして1枚目のアルバムにこの曲を入れられたのは、ライブの思い出もふくめてすごく嬉しいですね。
押尾コータロー “15th Anniversary LIVE” Digest
徳岡 : 僕も、押尾さんといえば『翼 ~you are the HERO~』というくらいこの曲が好きで。ひとりで弾いているのにメロディがずっと聴こえてくる。コードを弾いている合間にもメロディが聴こえてきて、押尾さんがメロディを大事にしていることがわかる。
――アルバムのラストは『For You』というオリジナル曲です。
押尾 : 最初は「オリジナル曲は必要かな?」と思ったんですけど、せっかく機会をいただけたならつくろうと。いちばん最後に仕上げたんですけど、案外ささっとできましたね。僕がヘッドアレンジを決めて、徳ちゃんと三浦くんが後から詰めていく。徳ちゃんは細かいところをガーッと書いていくのが得意。三浦くんは、僕がアレンジした通りに真面目に一生懸命やってくれる。あまりにも真面目にメカニカルにやりすぎるから、徳ちゃんには「もっとこうしたほうがスタイリッシュだしスムーズじゃない?」とか言われたりして。僕も「じゃあこれもできるのかな、あれもできるのかな」って色々アレンジしてしまう。
三浦 : たしかにどんどん難しくなっていきましたね。このレコーディングでギターちょっとうまくなりました(笑)。
――『For You』は今作の収録曲のなかでもいちばん落ち着いた曲ですよね。これがDEPAPEKOのオリジナル曲だからでもあるけど、明らかに他とは異質な曲が最後にあるという感じがします。どういうことを意識してつくったんでしょう? もしくは意図せずこういう曲になったんでしょうか。
押尾 : 曲をつくろうとなったとき、三浦くんが「こんなんどうですか?」ってコード進行を持ってきてくれて。じゃあそれでやってみよう、となって徳ちゃんがメロディを弾き出して。それに自分はベースラインを合わせて、残りはなんとなくつくってみて。最後は徳ちゃんと三浦くんが膨らましてくれました。『START』と『翼 ~you are the HERO~』がアップテンポだったので、オリジナルはゆったりしっとりとした、広がりのあるバラードにしようと思ったんですよね。結果的に、すごく男前な曲ができた。
三浦 : 「道の先に明かりがあり、そこへ向かっていこう」みたいなテーマでいこうという共通認識がみんなのなかにあったんです。
奏でる人の文化が音に乗って響く、アコースティックギターの可能性。
――押尾さんもDEPAPEPEもデビュー直後に海外進出していて、どちらも特にアジアでの人気が高いですよね。ご自身では、それはなぜだと思いますか?
三浦 : まず、歌がないことはひとつの強みだったと思います。歌詞の壁がなくて、音として伝わること、しかもポップでキャッチーで聴き馴染みやすい音だったということ。それから、アコースティックギターだということもかなり強みだと思います。いろいろと機材を揃えなければいけない楽器と違って、アコースティックギターは、それだけあればいろんな音を奏でられるから、若い層から人気みたいなんです。だからアコースティックギターはアジアの人にとっていちばん馴染みのある楽器のひとつなんですよね。そのアコギでこれだけ楽しそうにやってる人がいるから、ということが大きな要因だと思います。
徳岡 : ヨーロッパやアメリカでは、アコースティックのデュオやソロはそれほど珍しくないと思うんです。ブルースやカントリーなどのルーツミュージックがそこら中にあって、インストというものはあふれている。でもアジアに限って言えば、そういうスタイルはなかなかなかった。だから余地があったんだと思います。そういうタイミングで押尾さんやDEPAPEPEが出てきた。それに加えて、動画やSNSのスピード感があいまって広がってくれたんだと思います。
押尾 : アジアの人とは感性が近いのかもしれないですね。アメリカに行くと、現地の人に「お前、カントリーは弾けないのか? カントリーを弾けなきゃダメだよ」ってよく言われるんですよ。だからカントリーをやるとすごく盛り上がる。テイラー・スウィフトがはじめはカントリーをやっていたということが象徴しているように、まずはカントリーありきなんですよね。『モントルージャズフェスティバル』に行った時は、「うまいのはわかったけど、ブルースは弾けないのか?」と言われました。アメリカにはカントリーやブルースが根付いているんですね。でもそういう文化はアジアにはそれほど根付いていない。だけれど音楽には飢えているし、リズム感やメロディへの感性、心にグッとくる琴線が近いものがある。僕たちはアコースティックギターで、インストだからこそその可能性に気づかせてもらっているように思います。
DEPAPEKO 最新リリース情報
DEPAPEKO(押尾コータロー×DEPAPEPE)
Concept Album
PICK POP! ~J-Hits Acoustic Covers~
2018.9.19 Release!
【初回生産限定盤A】CD + Blu-ray / SECL2316-7 / \3,500 +税
【初回生産限定盤B】CD + DVD / SECL2318-9 / \3,500 +税
【通常盤】CD only / SECL2320 / \3,000 +税
[CD]
※収録曲 (オリジナルアーティスト名)
01. チョコレイト・ディスコ (Perfume)
02. 恋 (星野 源)
03. Gee (少女時代)
04. 夢芝居 (梅沢富美男)
05. Dragon Night (SEKAI NO OWARI)
06. TECHNOPOLIS (Yellow Magic Orchestra)
07. 恋するフォーチュンクッキー (AKB48)
08. ラブ・ストーリーは突然に (小田和正)
09. ひとり (ゴスペラーズ)
10. START (DEPAPEPE)
11. 翼 ~you are the HERO~ (押尾コータロー)
12. For You (DEPAPEKO)
[Blu-ray/DVD] ※初回生産限定盤のみ
・チョコレイト・ディスコ (Music Video)
・For You (Music Video)
・Making Movie
DEPAPEKOツアー情報
DEPAPEKO Club Circuit 2018 “PICK POP!”
・11/19(月) 渋谷 CLUB QUATTRO
・11/26(月) 名古屋 CLUB QUATTRO
・11/27(火) 梅田 CLUB QUATTRO
Open 18:00 / Start 19:00
チケット:自由席 \6,500 立見 \5,500 (整理番号付/ドリンク代別途600円)
一般発売日 10/13(土)
※未就学児童入場不可
※整理番号順の入場となります。自由席→立見の順にご案内します。
※立見エリアは入場時間によってはステージが見えにくい可能性があります。
押尾コータロー:http://www.kotaro-oshio.com/
DEPAPEPE:http://www.sonymusic.co.jp/depapepe/
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