たった3人でも盤石なカーネーション
幾度のメンバー交代を重ね、現在では直枝政広(Vo./Gt.)と大田譲(Vo./Ba.)の2人体制で活動しているカーネーション。この日はサポートに岡本啓佑(Dr./黒猫チェルシー)を加えたトリオ編成でのライブでした。まず出音から違う。こんなに低音出るんですね。「さみだれ」から始まり、最新アルバム『Suburban Baroque』から「Little Jetty」も演奏されるなど、非常にバラエティ豊かなセットリストでライブを展開。トータル的な意味で“技術”が高すぎた。ギターのテクニックが優れているとか、ベースラインがカッコイイとか、ドラムの手数が多いとか、そういう表層的な技術のことではなく、バンドとしての実力が半端じゃない。35年も続けられる理由はそこにこそあるわけです。
カーネーション – 「スペードのエース」
かっこいいなぁ…。この曲もたった3人で再現するわけですが、この日筆者は、演奏する人間の数は音楽の迫力の指標にはならぬと改めて気付きました。そもそも原曲の音のバランスからして完璧なのですけれども、ライブで全くそれが崩れないという。今回の編成ではホーンセクションもピアニストもおりませんでしたが、ただただ圧倒されるばかりでした。だからこそ、次回は「いつかここで会いましょう」や「Peanut Butter & Jelly」などもライブで聴きたいですね。
感慨深いのは、直枝氏(カーネーション)のキャリア初ライブがLa.mamaであったという事実。1982年に誕生した老舗は、一体どれだけのアーティストのライブを実現させてきたのでしょう。そして今回のカーネーションのライブがさらに特別だったのは、バレーボウイズという次世代を代表するようなバンドとの共演であったからであります。紡がれてきた歴史とこれから続く未来が、目の前で握手をしているような感覚を覚えました。
カーネーションのアンコール「夜の煙突」では、実際にバレーボウイズとステージ上で邂逅を果たします。日本の歌謡曲をベースにした両者が、ついに世代を超えて同じ舞台に立つ瞬間。鳥肌が立ちましたね。サビにある「はしごをのぼる途中で 振り返ると僕の家の灯りが見える」という一節を二つのバンドがコーラスする光景には、音楽の何たるかが見えた気がしました。世の中にろくなことがなくても、人々がいがみ合っているように見えても、音楽だけは変わらずそこにある。
よく見たら、アンコールの時にバレーボウイズの前田氏が着ているTシャツがハーモニー・コリン監督の映画「ガンモ」であった…。やはり音楽を制作する上で、彼らの周辺には映画があるのでしょうね。ふとした瞬間に他の領域から何かが紛れ込んでくるのも、リアルな場の醍醐味かもしれませんね。自分で好き勝手に取捨選択できるオンラインとは違う。
いやはや、様々な方角からライブハウスの良さを再確認した夜でありました。「夜の煙突」、本当に名曲なので森高千里Ver.のMV(直枝氏も出演)を最後にご紹介します。
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