『大乱闘スマッシュブラザーズ』いまもっとも熱いゲームをカルチャーの目線から紐解く
今年2018年12月7日に発売され、日本中で大きな話題となったゲームタイトル『大乱闘スマッシュブラザーズ』、通称『スマブラ』。日々のカルチャーニュースを気にしている人であれば、このゲームが「難しい」「難しくない」といったトピックを幾度となく目にしたはずだ。
これまではゲームフリークのみの専売特許だったこの手の話題。それが界隈にとどまらず、Yahooのトップニュースに何度も取り上げられた。このことからは、このタイトルに対する社会の熱狂をうかがい知ることができる。普段ゲームをプレイしない層までこのタイトルのことを話題にし、さらには実際に手に取ってプレイしたのだ。
いったいなぜこれほどまでに社会全体を巻き込んで話題となったのか。『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの魅力を、カルチャーの目線から紐解いていく。
『大乱闘スマッシュブラザーズ』の歴史
『大乱闘スマッシュブラザーズ』のはじまりは、1999年(平成11年)にまでさかのぼる。任天堂のハードで言えばNINTENDO64の時代、ソニーのハードで言えば初代プレイステーションの発売から約4年後だ。
当時は「任天堂ハード=ファミリー機」「ソニーハード=コアゲーマー機」というような棲み分けがまだなく、おなじ土俵の上で双方のハードが覇権を争っていた。もちろんいまのようにオンラインで対戦するシステムはなく、その時代にあってコントローラを持ち寄れば4人で対戦できるNINTENDO64は画期的なハードだった。まさに思春期真っ只中だったぼくも、友達の家に集まり毎日のようにプレイしていた。
ご存知のとおり、初代である『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』は大ヒットを記録。その後、『大乱闘スマッシュブラザーズDX(2001年、ニンテンドーゲームキューブ)』、『大乱闘スマッシュブラザーズX(2008年、Wii)』、『大乱闘スマッシュブラザーズ for 〇〇(2014年、ニンテンドー3DS・Wii U)』と続き、2018年12月7日に第4作目となる『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL(Nintendo Switch)』が発売された格好だ。
余談だが、初代である『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』は、社内でのコンペに負けた企画だったそう。当時進行していたビッグタイトルの開発が頓挫していなければ、その歴史がはじまらなかったかとおもうと感慨深いものがある。
『スマブラ』が持つ、オリジナルで稀有なゲーム性
「わかりやすさ」という対戦型格闘ゲームへのアンチテーゼ
『スマブラ』シリーズが生まれた2000年ごろは、対戦型格闘ゲームやRPGが全盛の時代だった。先にも述べたプレイステーションの登場などにより、ゲームはハイグラフィック化。臨場感をより表現できる対戦型格闘ゲームやRPGが流行するのは必然的ともいえる状況で、デフォルメされたキャラクターが売りの任天堂ゲームにとっては向かい風ともいえる時代だった。
1994年にはセガサターンでバーチャファイターが、1997年にはプレイステーションでファイナルファンタジーⅦが登場している。それらよりものちに『スマブラ』が発売されることは、ある種、時代錯誤的で、いま思えば大きなチャレンジだったのかもしれない。
『スマブラ』シリーズのゲームシステムには、HP(体力)の概念がない。このシステムは当時流行していた対戦型格闘ゲームに真っ向からぶつかるもので、ベーゴマのようにステージ外へはじき出すことによって決着するルールの「わかりやすさ」は抜群だった。
『スマブラ』シリーズは、一般的にこそ対戦型格闘ゲームに分類されることがあるが、公式には対戦アクションゲームと表現されている。このスタンスは2018年となったいまでも変わっておらず、システムが複雑化していく格闘ゲームへのアンチテーゼが開発当初から込められていたようだ。
常識をくつがえす豊かな参戦キャラクター。お祭りタイトルとしての『スマブラ』の立ち位置
『スマブラ』シリーズには、ゲームタイトルの垣根をこえて、さまざまなキャラクターが登場する。本来であれば、シリーズの主人公や主要キャラクターは、そのシリーズにしか登場しない。マリオはマリオシリーズに、カービィはカービィシリーズに、というのが一般的だろう。
しかし、『スマブラ』シリーズでは、さまざまなキャラクターが一堂に会するのだ。このお祭り的なゲーム性も『スマブラ』シリーズが広く受け入れられた背景にあるだろう。
また最近では、任天堂に限らず、メーカーを越えてキャラクターが参戦してくることも珍しくない。先駆けとなったのは、大乱闘スマッシュブラザーズXに参戦した、ソニック・ザ・ヘッジホッグとソリッド・スネークの2キャラ。前者はセガの名作アクションタイトル『ソニック』シリーズの主人公、後者はコナミが放った金字塔的アクションゲーム『メタルギア』シリーズの主人公だ。
最新作の『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』には、過去作に登場したすべてのキャラクターが登場しており、そのなかには、
『ロックマン』シリーズ(カプコン)からロックマン
『ストリートファイター』シリーズ(カプコン)からリュウとケン
『パックマン』シリーズ(バンダイナムコ)からパックマン
『ファイナルファンタジー』シリーズ(スクウェア・エニックス)からクラウド
『ベヨネッタ』シリーズ(セガ)からベヨネッタ
『悪魔城ドラキュラ』シリーズ(コナミ)からシモンとリヒター
といった別メーカーからの参戦キャラクターがいる。
さらに今後は、このコラムシリーズで扱ったあのシリーズの主人公も参戦予定。参戦予告の時点でたいへんな話題を呼んだが、日程が決まれば、またさまざまなニュースサイトなどで取り上げられることになるだろう。
あのゲームからこのゲームへ。異なるカルチャーの交点であり続ける『スマッシュブラザーズ』の存在
『スマッシュブラザーズ』は世代や性別を問わず広く愛されているゲームだ。任天堂ハードで発売されるファミリーゲーム的な側面を持ちながら、対戦型アクションというゲーム性でe-Sports競技としても地位を確立している。
このようなゲームは任天堂内にはもちろん、ゲーム業界全体を見渡してもほかに例がない。これからe-Sportsが広まっていく時代にあって、『スマッシュブラザーズ』に求められる役割は小さくないだろう。
また、メーカーの垣根を越えてさまざまなキャラクターが参戦することで、ゲームカルチャーの活性化に一役買っている面もある。
原作のキャラクターが『スマッシュブラザーズ』へ参戦することで、原作ファンが『スマッシュブラザーズ』のファンとなる。
『スマッシュブラザーズ』で原作を知り、原作タイトルをプレイする人が増える。
この役割を担えるタイトルがほかにあるだろうか。
発売からおよそ1か月。まだまだ普及途上にある最新タイトルがカルチャーに与える影響は、間違いなく大きい。
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