「浪費家で借金まみれの女好き。前代未聞のシャンゼリオン」
ハロウィンで街が賑わっているが、仮装する人達のバカ騒ぎっぷりを見てるとモラルが低く少し残念に感じる。ましてやヒーローの仮装をしながら道端にポイ捨てをする男性を見かけた時には腹が立って仕方がない!
ヒーローはポイ捨てなどしない!
さて、ライカヒーロー第5回目です。ヒーローはポイ捨てしないと冒頭から高らかに言ったがヒーローだって人間。一口にヒーローと言っても堅実で正義感に溢れるヒーローというのはあくまでも“よくあるヒーローのイメージ”であり、全てのヒーローに言える事ではない。
今回ライカヒーローで紹介したい作品は、ポイ捨てこそしないが“超”が付く程ノリが軽くて大の女性好き、多額の借金の返済に追われ、極度の甘党、そんなとんでもないクセを持ったヒーロー「超光戦士シャンゼリオン」。「仮面ライダー」や「戦隊ヒーロー」、ギャバンなどの「メタルヒーロー」シリーズとは違った全く新しいヒーローシリーズとして1996年に東映が製作した作品。シリーズ化こそしなかったが異色のヒーローとして今も特撮好きに人気のある作品だ。
ストーリーはシンプル。闇次元の怪人ダークザイドが人間界を支配しようと攻撃を開始。企みを知った秘密機関SAIDOCは世界を守る為、新種のエネルギー「クリスタルパワー」を開発し、隊員の速水克彦を超光戦士シャンゼリオンに変身させダークザイドに立ち向かう!
という計画のハズだったのだが、たまたまクリスタルパワーを運搬するトラックの事故に居合わせ、たまたまクリスタルパワーを浴びた私立探偵の涼村 暁(すずむらあきら)が、たまたまシャンゼリオンに変身。何も分からないままダークザイドと戦う事になる。そんな偶然でシャンゼリオンのパワーを手に入れた探偵 涼村 暁。こいつが本当に酷い!ヒーロー史に残る程ダメ人間でノリの軽い男なのだ。もう一度言うが本当に酷い!(良い!)
・探偵としてはほぼ機能していない。
・秘書(♀)を口説く。
・秘書に給料を払わない。
・多額の借金。
・更に借りて大金を持った気になり豪遊。
・秘書に浪費癖を怒られると「文句があるなら消えろ。女はお前だけじゃ無いんだぜ。」
・持ち金が無さ過ぎて小学生に1000円で雇われる。
・敵を倒した後の決め台詞は「俺って決まりすぎだぜ」
・食べ過ぎて変身出来ない。
・警察に暴力。
・借金の返済を求める男性2人を銀行員A、銀行員B呼ばわり。
・SAIDOCの法人クレジットカードをデート(相手の女性は結局怪人だった)で使い倒す。第6話だけでも3回「支払いはカードだ!」と叫ぶ。
・人妻もイケる。
・変な匂いがする!という子供の証言に「敵は怪物だ。臭かろう。」で終了。
・女装した仲間(♂)と気付かず口説く。
・女装した仲間(♂)だったと気付いても口説く。
・怪人を目の前にして「ちょっとタイム」→逃亡。
・睡眠不足で戦闘中落ちる。
・・・と、ほんの一部だけ羅列しただけでもダメ人間っぷりが分かる。
こんなキャラクターを主人公にするだけでも異色のヒーロー作品という事が分かるが、キャラクターの作り方以外にも当時のヒーローに比べ異色な部分が多く、作品を通して茶番なシーンやコミカル設定が詰め込まれているのもその一つ。
ダークザイドと戦う機関SAIDOCは政府の支援で活動していたが、途中資金援助が打ち切り。SAIDOCの基地はチーフの宗方が個人の財産で「家を抵当に入れて」建設。シャンゼリオンが倒れた時も「君の体には私の全財産がかかってる」と貧乏っぷりをあらわにする。
怪人のダークザイドもかなりクセのあるやつが多い。
・靴に入れた液体を拉致した女性に飲ませるフェチズムが過ぎる怪人。
・箸袋集めに一生懸命な怪人。
・人間界に潜伏中、人間にいじめられ胃に穴が空くストレスに弱い怪人。
・自殺する怪人。
・シャンゼリオンに憧れ過ぎてシャンゼリオンに殺されたい。と究極の愛を掲げるもダメ人間だった事に酷く激怒。ヒーローマニュアル本を持参し理想のヒーロー像を押し付けた怪人。
・登場してすぐウンチクを言う怪人。
・東京都知事に当選。その後東京を独立し東京国を建国。教育を徹底しなおし消費税を廃止。国民を信用させて支配を企むもまさかの小学生がテロを起こし死亡する怪人。
こんな個性的なダークザイド達もシャンゼリオンの魅力のひとつだが今こうやって並べるとツッコミ所が多すぎる。コミカルな特撮作品として良く挙げられるシャンゼリオンだが、色々意欲的な部分もある。
一番の特徴はシャンゼリオンのスーツ。ヒーロースーツであまり見かけない透けたスケルトン仕様のクリスタルボディはシャンゼリオンのギラギラ感に拍車をかける。しかしこのスーツ、造形がかなり難しいらしく試作を繰り返し無事完成するもバトルシーン用のスーツは40kg強の重量に!(撮影用アップスーツは90kg!)常人が着用すると首の骨が折れてしまうらしいこのスーツ。ただ1人強固な肉体を持つスーツアクターの岡元次郎氏だけが抜擢された。
そしてメインの脚本を手掛けるのが「鳥人戦隊ジェットマン」「仮面ライダーアギト」「仮面ライダーキバ」「仮面ライダー555」に至っては全話を担当する等、エモ〜い脚本を手掛けるのが得意な井上敏樹氏。コミカルでチャラいシャンゼリオンは井上氏の作品らしくなく見えるが、どこかアダルトで急にシリアスな展開が挟み込まれるのもシャンゼリオン。結果井上氏らしい作品と言える。
そして何より、井上氏初め平成仮面ライダーシリーズでお馴染みの白倉伸一郎プロデューサーが手掛けた作品とあって、構成やキャラクター像等、シャンゼリオンは今も続く平成仮面ライダー作品達に大きな影響を与えている。
ちなみにこんなダメ男=涼村 暁=シャンゼリオンを演じる萩野 崇氏は「仮面ライダー龍騎」で残忍、最狂、最凶の仮面ライダー王蛇に変身する殺人犯の浅倉 威も演じたが、こちらは親や弟(奇しくも名前が暁君!笑)に警官を笑いながら平気で殺す恐ろしい悪人で、シャンゼリオンの時の暁の能天気さは見る影もない。役者としては素晴らしい程に陰と陽を演じ分けた。
とにかくツッコミ所をあえて作風として多く作っているこの作品。クールでストイックなヒーロー像とは全く違ったチャラくてダメダメな男が変身するヒーロー作品だが、どことなく癖になるストーリーやキャラクターの愛嬌はある。しかし色んな性格のヒーローがいるが、ここまでダメな男だと“近くに置きたくないヒーローNo.1”である事は間違い無いかもしれない・・・。
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