3回目となったコラム、ライカヒーロー。
最近、一緒にユニットとして活動する事もある名MPCプレーヤー、プロデューサーの熊井吾郎氏からコラムについて「おもしろい!」という感想を頂き、嬉しく思うと共にB-BOYは皆少年でオタクなんだと確信しました。
さて、前回までに紹介した仮面ライダー作品やウルトラマン作品に限らず、戦隊ヒーローやメタルヒーロー、アメコミヒーロー、ゲーム、コミック、はたまたヒロインまで・・・色んなヒーローを紹介していきたいのだが、あえて今回は第1話が放送されたばかりの生まれたての進行形ヒーローを紹介したい。
第1回の仮面ライダークウガを綴った記事からあまり時間が経っていないため仮面ライダーシリーズの作品紹介はしばらく控えるつもりだったのだが、何かの縁なのかこのタイミングで仮面ライダーの新シリーズが放送開始されたので前言撤回させて頂き、今回は仮面ライダー生誕45周年、平成仮面ライダー18作目の新番組「仮面ライダーエグゼイド」を題材にライカヒーロー的考察をしていきたい。
待ちに待った(勝手に)アメトーーク!で放送された「仮面ライダー芸人」。そこで番宣として登場した仮面ライダーエグゼイドを一目見てド肝を抜かれたのは仮面ライダーに興味のないアメトーーク!視聴者だけではない。ファンでも(むしろファンだからこそ尚更)受け入れ難いデザイン、フォルム、設定。エグゼイドの第一印象はパンチに溢れていた。
今まで平成仮面ライダーでパンチの効いた作品がいくつも存在したのは確かだ。
・USBメモリで変身し、“2人の青年”が“合体”し(微々たるBL要素有)1人の仮面ライダーに変身する「仮面ライダーW(ダブル)」
・仮面ライダーの代名詞であるバイクを必要としない電車移動の「仮面ライダー電王」に車移動の「仮面ライダードライブ」
・みかんにバナナ、メロンにブドウとおなじみのフルーツがモチーフの「仮面ライダー鎧武(ガイム)」
文章におこすと尚更おかしな平成の仮面ライダーたち。しかしこんな設定やモチーフ、デザインでも放送を追っていると不思議と慣れてしまい、第一印象の時よりカッコよく見えてきてしまうのがお決まり。
しかしそんなお決まりも今回ばかりは不安になってしまう程インパクトのある仮面ライダーの登場だ。
謎のコンピュータウイルス「バグスター」がコンピュータでなく実際に人をターゲットに蝕みはじめる。この事態に日本政府はとある大学病院に電脳救命センター(CR)を設置し、バグスターを倒し患者をオペするために必要な「仮面ライダー」に変身できる適合者を探す。そんな仮面ライダーの1人である仮面ライダーエグゼイドの適合者として任命された正体不明の天才ゲーマーM。そんなMを名乗る研修医の青年、宝生永夢がCRの開発したゲーマドライバーを使い見事エグゼイドに変身しバグスターと闘う運命に・・・。
要約し過ぎると、研修医なのに超ゲーマーな青年が、リアルにやばいウイルス除去のために変身するというお話。
確かに医者ものでゲームものなヒーローは珍しいが、上手にまとめた設定であらすじだけだと別に驚きはしない。(感覚が麻痺してしまっているのか)やはり衝撃的すぎて不安を煽るのはそのフォルムや演出。
主人公がはじめに変身するのは“2頭身ほどしかないずんぐりむっくりでゆるキャラの様な仮面ライダー”。戦闘中にレベルアップというイベントを経てやっと仮面ライダーらしい頭身へ・・・まずその2段階方式の姿に戸惑う。そしてどちらの姿にも共通するクリクリの目にも違和感。更に紫や黄緑とビビット過ぎる色使いに、胸元にばっちりハマっているスーパーファミコン風のコントローラーにコレジャナイ感が襲う。
そしてしつこい程のゲーム縛りの演出。敵を攻撃する度に出てくる「HIT!」や「PERFECT!」等のアクションゲームではお馴染みのアニメーション。所々鳴るピコピコサウンドにビット感・・・。
あまりにも冒険しすぎた第1話で、ネットの感想も大荒れ。「わざわざ仮面ライダーシリーズとしてやらなくても良い作品なのでは」「正直ダサい」など賛否の否が圧倒的に多い。
しかしそんな仮面ライダーエグゼイドは、今まで特撮で成功してきた色んな方程式が沢山隠された作品なんだとこのコラムでは考察したい。
・デフォルメされた2頭身のキャラクターと、仮面ライダーらしい頭身の2段階方式の採用
こちら、仮面ライダーのTVのみのファンはびっくりの設定だが、2頭身にデフォルメされたライダー姿というのは過去90年代前半に玩具やゲーム等で展開されていた「SDシリーズ」で既に成功している。当時仮面ライダーのみならずウルトラマンやガンダムなどをデフォルメしていたが、その中でも瞳を持つSDガンダムと今回の仮面ライダーエグゼイドのデザインを照らし合わせればピンとくる筈。特にSDシリーズゲームのオリジナルキャラ「ファイターロア」は逆立った髪の毛のデザインなどエグゼイドに瓜二つだ。
そして可愛らしい姿からヒーローらしいスタイリッシュな姿になり本気モードを出す2段階方式は、この平成ライダーシリーズが始まる少し前に同じ朝8時のテレ朝の枠を彩っていた「メタルヒーロー」と「東映不思議特撮シリーズ」の間に挑戦した意欲的な作品「カブタック」、「ロボタック」に共通する設定。分かりやすい配色でボテっとした愛くるしい姿は、特撮が少し苦手だった幼児層の心も掴んだ。
更にこの2段階方式の設定があれば変形フィギュアの展開が可能。トランスフォーマーや戦隊ロボ、1stガンダムでなくzガンダムと、いつの時代も少年達は変形するおもちゃには目が無い。
・平成仮面ライダーは流行り物に敏感
実は平成仮面ライダーが子ども達の目を奪って離さないのには訳がある。それは流行り物を取り入れる姿勢。その目の付け所にはやはりコツがあった。
携帯電話が一般化され、子ども達も携帯電話を触りたい!そんな時期には仮面ライダー555で変身アイテムを携帯電話に。
スマートフォンが流行り倒し、子ども達もスマホを触りたい!とういう時期には仮面ライダーディケイドでスマホをアイテムに。
遊戯王やデュエル系のカードゲームが流行れば仮面ライダー龍騎はカードを駆使しバトル。
太鼓で闘う仮面ライダー響鬼はさながらゲーム太鼓の達人。
ムシキングが流行れば仮面ライダーカブトで虫をモチーフとしたライダーが勢ぞろい。
妖怪ウォッチブームにしっかり乗っかった仮面ライダーゴースト。
と出るは出るはの元ネタの数々。これだけ流行り物に便乗・・・いや敏感なら、子ども達の心を掴む事に関してはさすがだ。
そして今回最新作の仮面ライダーエグゼイドのモチーフはゲーム。何を今更?と思うが昨今、街を歩けば親や自分のスマホで簡単にゲームをする子ども達。ゲームが昔に比べより身近にある世の中なのだ。
そしてブームを巻き起こした任天堂社のヒットゲーム「スプラトゥーン」。このスプラトゥーンはビビットなカラーで縄張り争いしフィールドを駆け巡るアクションゲームで、操作感も爽快で子どものみならず大人にも大人気のゲーム。このスプラトゥーンのビジュアル要素も取り入れられているのでは?と睨んでいる。
しかし初めに掴めなかったのが、エグゼイドの胸の部分のコントローラーのデザインや、少しビットなサウンド、横スクロールを模したアクションシーン。この辺りの設定は今のソシャゲーや奥行きのあるゲーム世代にはピンとこない筈。しかし20代後半からおおよそ30代半ばまでの仮面ライダーを見る子ども達の親世代。この世代にはドンピシャのゲーム感なのではないだろうか。親の心も掴めば玩具が売れる。これは昨今の仮面ライダーの常套手段。
何よりエグゼイドを演じる日本のスーツアクターの第一人者である高岩氏のアドリブで演出された、カセットを模したアイテムをフーフーする姿は全く子どもには通じないジェスチャー。しかし大人には最高のあるある表現だ。
と、お披露目してすぐに大荒れコメント続出だった仮面ライダーエグゼイドだが、ここまで緻密に、意図的に設定や構成、企画を練って生まれたライダーなのではないかと思われる。
そして90年代に特撮ものを見て、おもちゃを触っていた方には、SDシリーズ要素や、カブタック、変形おもちゃに少し古めのゲーム感等、意外とすんなり受け入れられる要素が沢山あるのがエグゼイドなのではないだろうか。
今後もRPGに特化したライダーや、シューティングゲームのライダーや、レーシングゲームのライダー等色んな仮面ライダーが劇中に登場する予定とあるが、恋愛シュミレーションものライダーや、際どい画像が出てくる麻雀ものライダーが出だしたらいよいよ大人向けだが、子どもの教育に悪いので是非避けていただきたい。
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