クウガへの愛が溢れすぎた第一回のコラム。後で読見返すと、自分で少し気持ち悪さも感じました。しかしこのコラム連載をさせて頂くからには読者の方に僕の好きなヒーロー達にどっぷり浸かって頂きたい。
ISSEIのライカヒーロー!第1回「クウガというリアリティヒーローと出会った少年」
ハリウッドが初代ウルトラマンをもはやリミックスした作品、「ウルトラマンパワード」
ヒップホップやテクノ、J-POPシングルのB面などではお馴染みの「REMIX」(以下リミックス)。既存の楽曲を再編集して新しい曲をつくりだす手法として知られるこのリミックス。聴き慣れた曲がアーティスト、プロデューサーの手によって破壊や再構築されたリミックスは気持ちがいいものもあれば、違和感だけが残る事も多々ある。
そんな「ギリギリの冒険」であるがワクワクさせてくれるリミックスは、映画やドラマの世界でも良く使われるリメイクという言葉に似ている。
日本の特撮を代表する作品で知らない人はほぼいないであろう「ウルトラマン」。今回はそんなウルトラマンシリーズの一作で、ハリウッドが初代ウルトラマンをもはやリミックスした作品、「ウルトラマンパワード」を紹介したい。
円谷プロがオーストラリアで製作した初の海外版ウルトラマン「ウルトラマングレート」のアメリカでの放送を突破口に、ハリウッドと手を組み製作され93年に初お目見えとなったパワード。内容自体は単純過ぎる程のウルトラもので、地球に現れた怪獣や宇宙人を怪獣対特殊戦力チームW.I.N.Rの隊員カイ(ケイン・コスギ)がパワードに変身し闘うといったシンプルな運び。
ストーリーはシンプルだが注目したいのはパワードの洗練されたデザイン。一目見るだけだとシンプルなのだが、筋肉質なボディやこけた頬、妙にシャドーかかった顔、ウルトラマンで今まで起用されていなかったブルーの目など、アメコミのそれを感じるテイストに仕上がっている。ちなみに平成のテレビシリーズ「ウルトラマンティガ」以降ウルトラマンのデザインには当たり前となったカラー、ブルーの使い方を印象的に取り入れたのはこのパワードが初ではないでしょうか。
怪獣や宇宙人は全て初代ウルトラマンに登場したものばかりでリメイクされていて、先程話したリミックスの面白さと同じ。馴染みある怪獣がデザインを変え、鳴き声を変え、動きを変え活躍するのは中々オリジナルには出せない面白さがある。(もう少し言えばサンプリングに似た面白さも)
しかしいくらリメイクとはいえ第一話のオープニングから早速今後出てくる全ての怪獣たちをネタバラシするのはどうかと思う。第一話に登場するバルタン星人は勿論、レッドキング、ゴモラ、ピグモン、挙げ句の果てには初代ラスボスのゼットンまでご丁寧にご挨拶。ただこのオープニングで救われるのが怪獣達を全て影絵で表現する初代ラバーにも納得の演出。(ちなみに日本での逆輸入版はこのオープニングは差し替えられていて、良くある主題歌と共にパワードや隊員の活躍をダイジェストでまとめた映像になっている)
初代ウルトラマンが放つスペシウム光線の4倍のパワーがある
さてそんなパワードだがウルトラマンを作り続けた円谷プロ製作とはいえハリウッドを軸にアメリカのスタッフで製作された作品。良くあるハリウッド版なんちゃら…などと同じく賛否両論が付きまとう。
ウルトラマンの見どころといえばやはり怪獣とのスピード感ある戦闘。ウルトラマンが登場するやいなやチョップ、キック、パンチ、仕上げにスペシウム光線!と怪獣たちに圧倒的な力をお見舞いするウルトラマンに子供たちは釘付けになる。
しかし放送コード上、殴る蹴るなどの激しい格闘が出来ないアメリカの子供番組。そんなルールがある中パワードが敵に放った攻撃方法は・・・押す。街や荒野に現れた怪獣を、押す。ひたすらに押すのだ。それもそっと。しかし急にとどめにお決まりのスペシウム光線なども。しかも初代ウルトラマンが放つスペシウム光線の4倍のパワーがあるとか。攻撃の高低差が広すぎる(笑)
そんなアクションが突っ込みどころ満載のパワードだが素晴らしい演出も多々ある。ひとつは「スロー撮影」の導入。ウルトラマンと怪獣の死闘をスローで表現する事によって、重量感がものすごく出るのだ。ただ当たり前だがこの演出のデメリットはバトルにスピード感が出ない事。程よいスローシーンの分配が分からぬまま番組が終わってしまう。しかしこちらも「ウルトラマンティガ」以降にかなりうまい具合にスロー撮影は導入されている。
そして初代からは考えれなかったリミックス具合を発している技法が「オープンセットでの撮影」である。要はバトルシーンを外ロケで行うのだ。太陽が輝った青空の下にセットを組み、そこでウルトラマンと怪獣が死闘を繰り広げる。これはアメリカの広大な土地ならでは?な技法で、自然光で撮影する事によりスタジオでは出せないリアル感を、そして下から見上げて撮影しても空が広がっているので、スタジオの天井が見えていたデメリットを解消。スローな動きと相まって巨大っぽさに拍車がかかる。
怪獣のデザイン面も注目したい部分。円谷プロ内では不評だったみたいだが、過去の怪獣たちを「リミックス」した姿は昭和独特の愛嬌は少し欠けるものの、仰々しくリアルなクリーチャーっぽさを表現出来ている。妙にリアルな怖さはそれもその筈、今年公開された「シン・ゴジラ」とスタッフが同じだとか!そんな怪獣の中でも特にこの作品で好きなデザインが「ジャミラ」である。ジャミラと言えば初代ウルトラマンでも人気の鬱回怪獣。事故にあった宇宙飛行士がその星の環境と一体化し、怪獣として帰って来た姿なのだが、この作品でのジャミラは宇宙服の身なりを残しつつジャミラのシルエットもしっかり感じさせるミックス具合が優れたデザインが特徴。あの口も目も省かれているので多分ジャミラファンには不評だろうが、宇宙服を着たまま途方に暮れたジャミラの悲しい過去を考えると、すんなり受け入れられるデザインなのではないだろうか。
さて、そんな魅力と突っ込みどころが両立するパワードだが、着ぐるみ型の巨大ヒーローにまだ慣れていなかった90年代前半のハリウッド。怪獣のスーツ内に冷却装置を入れ込むハイテクさを出すも、その装置のせいで激しく動けない為に動きが遅く制限されてしまう矛盾。顔が半分出ている事が多いアメリカのヒーローに比べ、ガッツリと顔が隠れてしまうウルトラマン。日本では動きと声によって何処と無く怒りや悲しみを表現出来ていたが、到底日本のベテランスーツアクターの演技には敵わず、どこか淡白なパワード。
ウルトラマンのみならず、戦隊ヒーローも「パワーレンジャー」と称しハリウッド化された90年代。こちらもかなり中途半端な出来だったが、現代ではパシフィック・リムや、NEWハリウッド版ゴジラなど日本の特撮を大いにリスペクトし消化している良作と増えて来ているので、そんな製作陣や監督に今の技術を使い(CG使いまくれという意味ではない)またウルトラマンの様な日本を代表する特撮作品を手がけて欲しいところだ。
・・・恐る恐るではあるが。
『ウルトラマングレート』 / 『ウルトラマンパワード』
出典:Tsuburaya Prod. Official Channel Youtube
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