同人音楽のジャンルとは?
――話題が音ゲーの方に行ってしまったので、同人音楽に戻します。同人音楽にはどういうジャンルのものが多いんでしょう?
「やっぱりテクノ系の電子音楽が多いと思います」
――それはなぜですか?
「Wikipediaの受け売りになってしまいますが、パソコンを使って制作できる環境が年々そろえやすくなっているからだと思います。また、個人的な見解ですが前述の音ゲーも少なからず影響はあると思います」
――そうなんですね。ではAさん自体はどういうジャンルの曲が好きですか?
「基本的におなかに響くような重低音が好きなので、ドラムンベースとかダブステップとか好きですね。あとは泣けるようなメロディーに弱いので、トランスとかハウスとか。今はそれらを包括してEDMとも呼ばれているそうですね」
――いわゆるクラブミュージックがお好きなんですね。生で聴くために現場には行きますか?
「まだ行ったことはありません。でも一度は行ってみたいですね!」
同人音楽と出会える場所
――最近は同人音楽のイベントが盛んになってきているらしいですね。
「最近というか主要なイベントに、通称コミケといわれている有名なコミックマーケットと、M3という音系同人に特化したものがあります。他にもオンラインで開催されているアポロってイベントがありますよ」
――コミケは知っていましたが、ほかにもそういったイベントがあるんですね。ではAさんは一回のイベントにつきどれ位購入しますか?
「結構バラつきがありますが、大体10~20の間ですね」
――普通にCDを買う時を考えると、その数は多いですね。イベントには年に何回行かれるのですか?
「コミケは年2回、M3も年2回なのであわせて4回ですね。そう考えると年に最低でも40枚は買っているのか……。どうりで増えるわけですね……」
――ご自身のCDの購入量にがく然としていますが、コミケとM3とでは、出店者やジャンルに特徴の違いがあるんですか?
「あんまりハッキリとした違いはないと思いますね。ただ、M3の方が一般とサークルとの距離が近い気がします。コミケは広いし、人も多いので」
――M3といば開催地が東京流通センターですが、アヴァンギャルドでいこうが出展している文学フリマも同じところで開催しています。使用しているスペース自体は、M3は文学フリマの二倍ですね。とすると、1200くらいのサークルが参加しているんですね。視聴コーナーもあるんですか?
「ありますよ。普通に机の上に試聴機が置いてあって『聴いていいですか?』『はい、どうぞ』みたいな会話をして。それとは別に、パフォーマンスをしてるサークルもいますけど」
――パフォーマンスとは? 具体的に教えてください。
「一般的に机を挟んでCDを手売りするタイプではなくて、決められたスペースに実際に楽器や機材を持ち込んで演奏してその合間に売るといった感じです」
――面白いですね。試聴機で聴くよりも生で演奏していると購買意欲がさらに高まりますね。
「そういえば、おきあがりこぼしをズラッと並べてそれをひたすら揺らしている人もいましたね」
――すごい興味があります(笑)。それが音楽になっているんですか?
「自分もそれは思いました。ただ、それから気になって本人がアップしているYouTubeで視聴したんですが、インドネシアのガムランをほうふつとさせるような現代音楽でした」
――おぉ、ますます興味が出てきました!
情報はどこで得る?
――同人音楽についての情報はどうやって集めるんですか?
「イベント直前にググって調べることが多いですね。ホント直前にならないと告知しないサークルも多いので。あとはM3だとウェブサイトで参加サークルが告知されるのでそれチェックします」
――情報を集めるのに苦労しそうですね。
「そうですね。『同人音楽超まとめ』(http://dm-matome.com)っていうサイトがあるんですけど、現状ではそれくらいしかないので」
――面倒じゃないですか?
「いや、これが結構楽しかったりするんですよね。イベント前日の夜中に『あ、今日このサークル出るんだ! 買わなきゃ!』ってリストアップするのは楽しいですよ。遠足の前日みたいな気分です。そのリストを元に、イベント会場をどう回るか考える。明け方までチェックして、三時間くらい寝てから行く。M3でもコミケでも、朝そんなに急がなくても、開場時間に間に合えば大体欲しいCDは買えるし。リストアップするところからイベントは始まってるんですよ。で、会場行ってみると、全然告知してなかったサークルが新譜出したりしてて、それ見つけて『やったー!』って思ったり」
――Aさんがリストアップするのは、だいたいプロの方ですか?
「半々くらいだと思います。でもそういう方々も買い始めた当初はアマチュアでしたよ」
――そういう世間からしたらほぼ無名に近い人たちのことはどうやって見つけるんでしょう? 現場で聴いてみて良かったから買う、というパターンですか?
「いや、それは本当にまれですね。好きなアーティストが参加しているコンピレーションを買って、そこから知ることが多いと思います」
――ちなみに、同人音楽イベントには誰かと一緒に行くんですか?
「イベントは一人で行きます」
――それはなぜですか? また、同人音楽の話をする友達はいますか?
「そういう共通の話題を持つ友人がいないので、結果的に一人で行きます(笑)。やっぱり周りの人で同人音楽が好きな人ってほぼ見たことないですね。2chとか、昔は『いちごびびえす』っていう掲示板があったんですけど、そういうとこってだいたい罵り合いになっちゃうんですよね。ちょっとでも褒めると『自演乙』とか言われて。だからネットでも誰かと同人音楽について話し合うってことはほぼないです。だから今こうしてリアルで誰かに同人音楽の話をするのって新鮮です」
――同人音楽の雑誌ってないんですか?
「ないですね。同人誌で出してる人はいますけど。メディアでもまだあまり取り上げられてないんですよね。ネットだとKAI-YOU『新世紀の音楽たちへ』とかITmedia『音のコミケ「M3」 1万人動員のイベント主催者に聞く「同人音楽の20年」』ぐらいじゃないですか。あとは個人のブログしかないですね」
――同人音楽への注目度は高まっても、それを伝える人はまだまだ少ないようですね。
「そうですね。同人音楽CD自体、流通される数がそれほど多くないので、買うタイミングを逃せばすぐに廃盤になってしまいますし、サークルといっても個人で活動していることがほとんどなので、活動を止めてしまえば、情報がすぐにネットの海に消えてしまうため、そうなると知る機会や聴く機会がほとんどなくなってしまうんですよね。そういうものを逐一もらさずに集めていた結果がファン歴十数年かもしれません」
――なるほど……同人音楽の沼は深いですね……。
【イベント情報】
M3-2016秋<第38回即売会>
開催日時 2016年10月30日(日) 11:00~15:30
会 場 東京流通センター(TRC)第一展示場、第二展示場 アクセス
入場料(カタログ代含む) 1,000円 (当日会場で販売)
http://www.m3net.jp/index.html
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