同人音楽とは?
――色々と曲を紹介してもらったところで、基本的な質問に入りたいんですけど、同人音楽ってそもそも何ですか?
「定義が難しいですね。Wikipediaとかニコニコ大百科とか参考にしてもうまく説明できないです。だいぶザックリとした感じだと、プロ・アマを問わず自主制作された商業流通されていない楽曲でしょうか。それをCDでイベントやショップで販売しています。」
――プロのミュージシャンも同人音楽をやるんですか?
「そうですね。もともとアマチュアだった方がプロになっても続けているとか、プロの方が商業では発表できないものを作るとか」
――具体的に同人音楽をやってるプロの方は、どういう方がいますか?
「音ゲーをやっている方には有名な細江慎治さんやすわひでおさん、アニソンで有名な田中公平さんに畑亜貴さんなどがいます。また、声優のかたもやっているみたいですね。でもどうなんでしょうかね? この方たちのサークルは即売会で見かけますが、本人たちからしたらインディーズ活動かもしれません」
――では、同人音楽とインディーズの違いとは?
「これも曖昧です。自分が活動しているわけではないのでわかりません」
――そうなんですね。そういった方々がイベントにいるとなると、直接お話とかできますよね?
「どうなんですかね? 自分は話したことがないのでわかりません。ただ、好きな同人音楽レーベルに買いに行くときは、コンポーザーの人が名札をつけているので『あー、この人が○○さんなんだな!』と少しテンションが上がります(笑)」
――そういった方には声をかけないのですか?
「恥ずかしいので無理です(笑)。それに、イベント会場は広いですが、サークルの個々に割り当てられたスペースは限られているので、他の方々に迷惑にならないように買ったらすぐに立ち去りますね。あと、自分は作っている側の人間ではないので、何を話していいのかわかりません」
――それは複雑な心境ですね……。ところで気になったのですが、同人音楽にもレーベルがあるのですか?
「あります。自分が買っているところで大きなところはDiverse Systemさんですね。最近、設立15周年を記念した5枚組みのCDが発売されたので、もちろん買いました。最初期の数枚を除けば百数十枚のほとんどを持っています」
――すごいですね……。今調べたら、Wikipediaの記事もありますよ!
「自分も今知りました(笑)」
同人音楽と音ゲー
――好きになったきっかけを伺おうと思っていましたが、onokenさんのCDを紹介したときにお話されていましたね。では、Aさんはいつから同人音楽を聴いてるんですか?
「そのCDを買ったのは2003年なので、13年前からですね」
――10年以上となるともう筋金入りのファンですよ!
「気付いたらこうなってました(笑)」
――好きになったきっかけとなるBMSという音ゲーはどういったものなんでしょうか? もう少しくわしく聞きたいです。
「今でもゲームセンターで稼働していると思いますが、beatmaniaIIDX(以下、ビーマニ)というゲームがありますよね? それと同じようなルール、インターフェースのゲームです。2000年代に中高生だった人たちのパソコンには、BM98とかnazobmplay、DDRやLR2といったプレイヤーがインストールされていたと思います」
――ちょっと待ってください。BMSはビーマニと似たようなものとなると、権利関係とかどうなっているのでしょうか? また、BM98やnazobmplayといった単語が新しく出てきましたがそれは?
「自分も学生ながらそこのところはどうなっているんだ? と思いましたが、法律のことはチンプンカンプンなので『特に大きく騒がれていないので大丈夫なんだろうな』という感覚でした。ただ最近、開発者の方による権利問題に言及したネット記事を見つけたので読んだところ、わかりやすい文章で『大丈夫』と納得できるものでした。おかげで長い間少しモヤッとしていた部分が晴れました。
あと、BM98などについてはBMSを遊ぶためのプレイヤーです。mp3とiTunesみたいな関係です。BMSというのは音ゲーの核となる譜面と『どのタイミングで音が出る』『どのタイミングで画が出る』という指示が書かれている.bms形式のファイルです。なので、これを遊ぶためには.bmsファイルのほかに、音の.wavファイル、画の.bmpファイルなどが必要です。そしてそれを遊ぶためのプレイヤーがBM98などのソフトです。
いろいろなプレイヤーがありますが、そのほとんどが更新停止になっていて、現行みんなが使っていると思われるのはLR2ですね」
――なるほど、BMSとはそういうものだったのですね。でもそうすると、システムには権利関係に問題がないとしても、ビーマニと同じようなものが遊べるとなれば、そのビーマニと同じ曲をBMSでも遊べることもできるのでは? そうなると曲の著作権が……。
「そう思いますよね(笑)。自分も、最初の頃は『家でもビーマニができるじゃん!』と思いました。ただ、しばらくしてそういうものは悪、という認識が広まったので、曲を作っている人たちや流れる映像を作る人たちはコピーではなくオリジナルを作るようになっていきました。そうなる頃には、どの曲がいいかといったイベントが頻繁におこなわれるようになって、お互いに切磋琢磨してクリエイターの技術が向上したんですよね。
だから今でも大規模なイベントが開催されているのですが、そこに参加するほとんどの曲が、アーケードで稼働する商業の音ゲーとクオリティの差に違いがないと思います。実際に、そのイベントで優秀な成績を収めた曲は、次々とそのままアーケードの音ゲーに収録されたりコンポーザーが新しくアーケードに曲を提供したりという時代になりました」
――BMSって結構奥が深いですね……。では、Aさんがファンだというonokenさんたちも今はプロに?
「そうなんですよ! onokenさんは当時名前を伏せて曲の提供をしていましたが、曲調や偽名からすぐにネット上でバレましたね(笑)。まだ、BMSから本家(注:ビーマニのこと)へということがほとんどなかったので、さまざまな憶測が飛び交っていました。『やっぱりBMSと本家の関係はわるいのか?』とかね。でも、それからしばらくして本名義で提供するようになりました。あとそれ以上に驚いたのはparaokaさんですね」
――なにがあったのですか?
「『L9』っていう2001年に作られた曲があるんですけど、その14年後にセガの音ゲーmaimaiに収録されたんですよ! しかも当時の映像も使われたりして! こんなのもう『おっさんホイホイ』としか言いようがない!」
――テンションが一気に上がりましたね(笑)。もちろんonokenさんとparaokaさんの曲はプレイされました?
「あー……まぁ、それは。何曲かは遊びました。onokenさんの曲はポップンミュージック、paraokaさんの曲はチュウニズムですが」
――テンションが一気に下がりましたね。どうしました?
「基本的に自分は音ゲーがうまくないので、実際に遊ぶことはほとんどないんです。曲が好きでもほとんどが難しいので、うまくクリアできません。あと、家のパソコンをWindowsからMacに変えたので、家ではまったくやっていません(注:Macで正常に稼働するBMSプレイヤーは数少ない)」
――聴くのと遊ぶのとでは違うんですね。そういえば、カラフル・サウンズ・ポートさんは?
「まだアーケードで収録という話は聴いてないですね。でも近いうちに入るのではないかと思っています。そうしたら1回は必ず遊んでみたいです」
――なるほど。Aさんにとって音ゲーは同人音楽と密接な関係なんですね。
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