Dead by Daylightと既存カルチャーの交わり
Dead by Daylightには、キラー・サバイバーそれぞれの立場で多数のキャラクターが登場する。これほどまでに認められるタイトルとなった理由には、プレイヤーが没入できるキャラクターエピソードの存在もあるだろう。この項では、キラー側のプレアブルキャラクター(プレイヤーが操作可能なキャラクター)に焦点を当て、Dead by Daylightと既存カルチャーの交わりについて掘り下げる。
この画像に映っているキャラクターは、Dead by Daylightの中でも1番人気のキラーであるマイケル・マイヤーズ(シェイプ)。不気味な仮面と作業着をまとった姿が印象的なキャラクターだ。公式のキラーキャラクター紹介ページには、彼のバイオグラフィーがこう書かれている。
Some humans are simply bad seeds. Seeds infused with a distilled and pure form of evil. Michael Myers is one of those seeds. He had no issues with causing the pain of others. Instead, it was exactly what he sought. But even life can be tough on those with minds filled with terror. The difference is just how one goes about to solve those problems. For Michael, he had to kill to find some inner peace. As he took his sister’s life, the police found a silent boy dressed as a clown at the scene. When one stumbles upon a growing fire, one does not pour gasoline on it. But this was an action taken by officials that had no idea how it would shape this demon in the boy’s body. Sending Michael to a mental institution was a feeble attempt to save the child. Unsuccessful therapy and nightly screams just made him even more introvert and deranged. People hoped that Michael Myers would end up a parenthesis, soon to be forgotten and buried, a failure that soon were to rot away. But then…he escaped.
人間の中には、悪の性質を抱えて生まれてきた者がいる。純粋で曇りのない、真の邪悪で満たされた者だ。マイケル・マイヤーズはそのように生まれてきた人間のうちの1人である。
彼は他人を傷つけることに何の疑問も持たないどころか、傷つけることを望んでさえいた。しかしこのような恐るべき精神の持ち主にも、常人と同じように人生の困難は訪れる。困難を乗り越えようとするとき、どのような方法をとるか。それだけが常人との明確な違いだ。
マイケルが心の平穏を得るためには、人を殺す必要があった。彼が姉の命を奪ったとき、警察はピエロの格好をした大人しい少年(幼いマイケル)を現場で見つけた。
燃え広がる炎(マイケルの歪んだ感情へのたとえ)を見て、ガソリンをかける人間はどこにもいない。しかし警察はそのように行動してしまった。少年の内に潜む悪魔がその後どのような姿へ成長するのか想像できなかったのだ。マイケルを単に精神病院へ送るという行動は、その子を守るにあたり、あまりに軟弱な対応だった。精神病院における治療の失敗と、夜な夜な響く叫び声は、彼をさらに内向的にし、混乱させた。人々は「マイケル・マイヤーズ」が特筆すべき犯罪者とならないこと、やがて記憶に埋没し封印されること、失敗が風化していくことを望んでいた。しかし彼は精神病院を脱走してしまうのだった。
マイケル・マイヤーズのバイオグラフィーを見てわかるとおり、Dead by Daylightに登場するキラーのキャラクター設定は、非常によく練られている。それもそのはず、ほぼすべてのキラーには、元ネタとなる既存カルチャーが存在するのだ。
マイケル・マイヤーズの元ネタとなったのは、1978年に第1作が公開された映画『ハロウィン』シリーズ。ゲーム内におけるマイケル・マイヤーズの能力や音楽も、元ネタである映画『ハロウィン』に着想を得ている。
サバイバー側のキャラクターとして登場するローリー・ストロードは、映画に登場するマイケル・マイヤーズの妹だ。
こちらはカニバルというキャラクター。エプロン姿でチェーンソーを振り回すキラーだ。カニバルにももちろん元ネタが存在する。映画『悪魔のいけにえ』に登場するレザーフェイスだ。
カニバルという名前をはじめ、叫び声や挙動までもがレザーフェイスのキャラクター設定を意識させるものとなっている。映画にはゲーム内に登場する「肉フック」の描写(予告動画0:40ごろ)もあり、吊られているときの挙動もまた、Dead by Daylightでサバイバーが見せる動作とそっくりだ。
このようにキラーキャラクターのほとんどが、既存のカルチャーと交わりを持っている。映画だけでなく、ゲームや民間伝承、民謡など、そのバリエーションは幅広い。『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』『ソウ』といった有名映画をモチーフにしたキャラクターも登場するので、気になった方は調べてみてほしい。
オンラインの時代、ゲームは人と心を通わせるカルチャーとなる
昨今、オンラインプレイを前提に作られるゲームタイトルは少なくない。Dead by Daylightもまた、そのようなタイトルのひとつだ。この時代背景を踏まえてゲームカルチャーのこれからを語るとき、その価値や優劣にはプレイヤーの民度も大きくかかわってくる。ゲームが、音楽や映画のように第一線のカルチャーとして浸透しきらない理由、野球やサッカーのように第一線のスポーツとして浸透しきらない理由は、この点に問題があるからなのではないだろうか。
Dead by Daylightにおいても、一部の心ないプレイヤーによる迷惑行為が散見される。オンラインの時代、ゲームは人と心を通わせるカルチャーとなる。人の気持ちに寄り添えないプレイヤーがこのカルチャーに関与する権利はない。悪質なプレイヤーがDead by Daylightの価値を貶めていること、さらにはゲームカルチャーの価値を貶めていることに警鐘を鳴らしたい。
前項で紹介したキャラクターの生い立ちを見ていくと、キラーの蛮行は、周囲の人間からされた仕打ちによって引き金がひかれていることがわかる。負の行動が正のエネルギーに変わることはない。ぼくたちはDead by Daylightを通じて、ゲームにおける自分たちの行動を見つめ直さなければならない。
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