2016年6月にテンテンコはトイズファクトリーへの所属が決定したことを発表した。
8月31日にはニューシングル『放課後シンパシー』が配信にて、リリースされる。
インディーズ・カルチャー誌『アヴァンギャルドでいこう』では、2016年5月1日に発売したVol.5にてテンテンコにロング・インタビューを行った。
本稿ではロング・インタビューの内容を振り返りながら(※1)、改めてミュージシャン、テンテンコの魅力について考えてみたい。
今回は、テンテンコの影響を受けた音楽や「自由さ」について迫る。
テンテンコは、パーソナルな時間をとても大切にする人だ。
人と関わることを好みつつも、マイペースで、一人で過ごす時間を大事にしている。
――先程、一人でいることが大好きだとおっしゃっていましたが、そういった性格なら、じゃあBiSの時はかなり大変だったんじゃないですか?
「めっちゃ大変だったんですけど、六人とも結構そういうタイプでした。だから割とみんなマイペースで、一人でいたい時は一人でいれたし、すごい助かりましたね。(略)」
彼女は影響を受けた人物として、篠原ともえの名前を挙げる。
特に1990年代の篠原ともえはポップでありながら、エキセントリックさを持ち合わせたパブリック・イメージの持ち主だったと言えるであろう。
そうした篠原ともえのパーソナリティは、ソロに転向した後のノイズ・ミュージックのシーンに接近し、ジャンル横断的な取り組みに一層力を注ぎ始めたテンテンコに相通じる部分があるのではないだろうか。
――自分から表現していくことと、依頼されたイメージを表現していくことでは、心持ちが違いますか?
「違うけど、それはそれで楽しんでました。そこが嫌じゃなかったからできたのかも。元々変わった音楽が好きだったり、自分で表現するのが好きだったけど、歌謡曲とかも大好きなので。あと、私の世代だと、篠原ともえさんとかも大好きで。篠原ともえさんて、ご自分で服作られたりもしてますけど、曲は書いてもらってるじゃないですか? そういうのも見て育ってるから、人が作った服を着て人が作った曲を歌うことに関しては全然抵抗なかったです。(略)」
BiS時代の彼女のファンと、いまの彼女のファンではその顔ぶれが大きく入れ替わっているという。
彼女自身は、『アヴァンギャルドでいこう』のインタビューにて「全員ファンがいなくなると思ってた」と語る。
テンテンコは自身のブログで、このようにも書いている。
何が正しいとかでは無く、ただ私は、たとえ誰が見ていないとしても、やれることをやっていたいと思ったのです。
それって、じゃあ何かなと言いますと、やっぱり音楽しかありません。
私の本棚に並んでいるCDやレコード、カセットテープが宝物だし、入り込んでみたいとずっと思っていました。BiSが解散して、24歳の私は良い機会だなと思い、そこに入り込む決心をしました。
今までほぼ全くと言って良いほど、やったことが無かった音楽を作るということを少しずつ始めました。
――2016年6月18日付 テンテンコの日記『テンテンコから重要なお知らせ』
「音楽を作る」と決意を固めたテンテンコは、フリーに転向してから作曲を開始する。
もっとも、昔から音楽に対して強い関心を抱いていた彼女は、高校生の頃、カセットテープ作りなどを行っていたという。
――自分で曲を作るようになったのはフリーになってからですか?
「そうです。でもすごい音楽好きでローファイなものとかが好きだったから、遊びでカセットテープ作ったりしてたんですよ、高校生の時。(略)」
テンテンコの活動を追うときに、驚かされるのはその音楽に対するあくなき探究心の強さである。
――(略)ノイズも昔から好きだったんですか?
「自分ではそれをノイズだって認識してなかったんですけど、高校生の時に通ってたレコード屋でThrobbing Gristleを聴いたのが最初かな……ノイズともちょっと違うんですけど、メロディがあってリズムがあってAメロBメロがあって、っていうのじゃない音楽の入口がそれでした」
――(略)Throbbing Gristleってポップミュージックではないし、タワレコとかに必ずあるCDでもないですよね。そういうものが置いてあるレコード屋に高校生の頃から通っていたというのは、世の中の主流から外れたものを求めていたようなとこがあるんでしょうか。
「うーん、全部たまたまなんですけどね。そのレコード屋さんもたまたま置いてあったチラシもらって見つけて。(略)で、その時最高だと思ってたYoutubeでしか聴かなかった音楽が、そのレコード屋に行ったらあったんですよ。(略)」
――じゃあそれが音楽的な土壌になったんですね。
「そうですね。めっちゃ広げてくれました。時代とか国とかを飛び越えさせてくれました」
――その他にもテンテンコさんが影響を受けたものはどんなものがありますか? たとえば、好きな映画とか。
「めっちゃいっぱいあるんで……どういう系だろ……。繰り返し見てるのは、ティム・バートンの『ビートルジュース』とか。あとはゾンビっぽいのとか。超能力系とかも好きです。ブライアン・デ・パルマの『キャリー』とか『フューリー』とか。最後めちゃくちゃにして終わるの好きですね」
Aメロ、Bメロ、サビというような定形にはまることの無い、幅広い音楽。「最後めちゃくちゃにして終わる」ような映画。
そうしたものに、テンテンコは一人の受け手として積極的に触れていく。
そして、自身の表現にも積極的に取り入れていく。
リスナーが、テンテンコの表現に触れるときに感じる新鮮さ。
そうしたものの源泉は彼女の既存の常識にとらわれることの無い、自由さにあるのかもしれない。
ニューシングルの配信が決定したテンテンコ。
今後の彼女の活動に、一層注目だ。
※1:文中のインタビュー箇所は全て、インディーズ・カルチャー誌『アヴァンギャルドでいこう Vol.5』(2016年5月1日発売 発行元:Shiny Books)掲載記事『テンテンコ インタビュー~ただ自分がカッコ良いと思う音を~』からの引用。
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構成:九十現音(https://twitter.com/kujujuju0206)
写真:和田東雲(https://www.instagram.com/wadatouun/)
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