東京の奥へ。
東京のなかでも、23区外の西にあたる多摩エリアがこれからますます面白くなるのではないか?という予感のもと『たまら・び』編集部のお二人に「多摩とは何ぞや?」を教えていただいた前回。
よりディープな多摩に触れるべく、『たまら・び』を熟読するなどしてリサーチを進めるなかで、気になる情報を見つけました。
「東京に泊まろう。」特集に掲載されていた、囲炉裏を囲んで昔話が聞ける旅館「荒澤屋」。
ここに宿泊すると、語りの名人である荒澤弘さんこと“ひろじい”が、民話を語り聞かせてくれるというのです。旅館の創業は明治41年(1908年)。100年以上の歴史を持つ宿です。
タップひとつで世界中のあらゆるコンテンツにアクセスできるようになった今、「囲炉裏で民話」は体験できる場所が非常に限られた、原初的エンターテインメントだといえます。東京にいながらこのような体験はなかなかできるものではありません。
ひろじいに会ってきました。
というわけで今回、実際に荒澤屋に宿泊して、「囲炉裏で民話」を体験してきました。結論から申し上げると囲炉裏もひろじいのお話もエキサイティングすぎて夜更けまで話し込んでしまいました。
<目次>
・絶品料理に温泉。多摩の魅力が凝縮した旅館 荒澤屋
・民話の語りきかせを体験!
・【インタビュー】なぜ、民話の語りきかせをはじめたのか
中央線で奥多摩へ。
荒澤屋は多摩の奥、すなわち奥多摩にあります。車で奥多摩までキャンプ行ってきたよ〜とよく聞いていましたが、電車でもアクセスしやすいことに今回気づきました。
筆者の自宅、江戸川区・葛西からだと、東京都をほぼ横断する形に
新宿からであれば、奥多摩駅まではJR中央線で1時間40分ほど。そこそこ時間はかかりますが、中央線にひたすら乗っていると着くので、旅行行くぞ!みたいな気合を入れることなく気軽に来ることができます。
ホームや駅構内の時点でほとばしる奥多摩感。
駅前にはちらほらお店がありますが、まわりを見渡す限り山。遠いところにきた実感が押し寄せます。
旅館への道中は、外観が趣深い商店があったり
電柱を見上げると、猿のファミリーがいたり
このような山河を目の当たりにして「うわぁ…」などとため息を漏らしつつ、5分ほど歩くと
荒澤屋の姿がみえました。川を渡る橋の上から特徴的な外観が見えるため迷わずたどり着くことができました。
民話のみならず、多摩の魅力が凝縮した旅館・荒澤屋
今回は囲炉裏での民話を主な目的として訪れたのですが、旅館そのものがすばらしかったのでやや駆け足気味になりますが全容をご紹介します。
2名〜4名用のお部屋が3種類あり、宿泊は1日3組限定。こたつが中央に配置されており、晩御飯を食べ終わったときには、サイドにふっかふかのお布団が設置される形式です。
創業してから100年以上経っている歴史ある旅館ですが、現在の建物は昭和41年に建て替えたもので、その後もリフォームなど手を入れていて全体的に行き届いている感が半端なかったです。
お風呂は2つあって、お部屋ごとに貸し切りになっています。
2名用のお風呂は、もともとは檜風呂だったそうですが、耐久性をふまえて石造りにリフォーム。檜の壁面と石造りの浴槽の異素材MIX感が味になっています。
お湯は「美人の湯」と称される奥多摩“鶴の湯温泉”の汲み湯です。お肌トゥルトゥルになりました。効能などの詳細はコチラをご参照ください。
お部屋にはお茶セットやタオル、館内着なども完備。
洗面台やトイレなど、水回りも綺麗です。
2Fには憩いの場としての囲炉裏ルームがあり、民話の語りはここで行われます。民話タイム以外も、宿泊者は自由にくつろぐことができます。
奥の本棚には民話・昔話・民俗学や風土記などの本がずらり。
館内のところどころに、民話にまつわる小物や挿絵などがあり「民話の宿」気分を高めてくれます。
絶品!奥多摩料理に舌鼓。
日が暮れると、荒澤屋 正面の大きな提灯に明かりが灯ります。1Fの「炉ばた あかべこ」では、宿泊者が朝食や夕食を楽しめるほか、居酒屋としても営業しており地元の方々も通い詰める人気店です。
もとは厨房だったスペースを、2013年に改装。カウンターも美しく、割烹のような雰囲気。
荒澤屋 4代目の若旦那が、料理を担当しています。板前として数々のお店で研鑽を重ねた若旦那の腕は確かで、「炉ばた あかべこ」では奥多摩のヤマメや柚子、わさびなど地のものを活かした新鮮で味わい深い料理をいただくことができます。
この日の一泊二食付きの夕食内容は
・前菜(ホタテの子、ウドの皮のきんぴら、旬のホタルイカ、黒豆、枝豆)
・手作りこんにゃく刺身(柚子、ひじき、山葵の葉)
・焚き合わせ
・紀州蒸し
・奥多摩ヤマメの炭火焼 山椒味噌入り
・季節の揚物(奥多摩わかさぎ / 檜原村まいたけ / ふきのとう)
・ずいきと黄金ニシンの酢の物
・ひら茸のお鍋
・お食事、自家製ぬか漬け
・デザート(奥多摩わさびのジェラート)
と画面に収まらない豪勢っぷりでした。
どれも絶品だったのですが、自家製こんにゃくのお刺身(ゆずを練り込んだもの / ひじきの粉入り / 山葵の葉入りのもの)がぷるぷるの食感とさわやかな香り、酢味噌の酸味と旨味があわさって驚きの美味しさでした。
奥多摩の隣町・青梅の酒造「澤乃井」の日本酒を中心に、全国から選りすぐりの日本酒をラインナップ。
接客を担当する若女将の梢さんは利き酒師でもあり、こんなのが飲みたいなーなどというとおすすめをしてくれます。ちゃきちゃきと手際がよくもあたたかい見事な接客は、まさしく若女将!というほかなく、お風呂に入って晩御飯を堪能した時点で「奥多摩、最高や、荒澤屋、最高や…」という状態になります。
ご近所のお寺「慈眼寺」のご住職さんも晩御飯を食べにふらりと来店。
旅館の受付の脇に飾られていた、梢さんが一時期働いていた会社のみなさんから贈られた賞状。
>>次ページ:いよいよ囲炉裏を囲んでの民話タイム!
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