人工知能を使った作品からバイオアート作品まで。メディアアートの世界を原宿で楽しめる「calculated Imagination」

左から、IAMAS学長・吉田茂樹さん、山城大督さん、クワクボリョウタさん、村山誠さん、菅野創さん、三原聡一郎さん、ラフォーレ原宿館長・清水寛さん
1ページ目で取材をしたクワクボリョウタさん以外にも三原聡一郎さん、菅野創さん、山城大督さん、村山誠さん、石塚千晃さんらIAMASに関わるさまざまな方のメディアアートが「calculated Imagination」では展示されていました。

「calculated Imagination」会場の様子
[空白]プロジェクトを進めている三原聡一郎さんの2013年の作品「 鈴」、人工知能によって文字の形状とパターンを学習し、意味をなさない文字のような線を書き連ねていく菅野創さんの「形骸化する言語」、会場直前に山城さんが設定した空間に1歳と5歳と7歳の子どもたちを登場させ、複数台のカメラで撮影した映像を同じ場で「再生可能な空間」として展示した映像インスタレーション作品「HUMAN EMOTIONS/ヒューマン・エモーションズ」、採取した花々のスケッチを重ね、自ら解剖した花の断片をルーペや顕微鏡で徹底的に観察した後、その構造をCGモデリングしていくことによって植物のビジョンを作品に落とし込んだ村山誠さんの「Lathyrus odoratus L. – top view – b」、「Sunflower -ⅰ- bc」、「Botech Composition 1-MV」。自然と人工の境界を問う石塚千晃さんの「Portrait of Daucus carota」。人工知能などを取り入れた作品から、バイオアート作品までさまざまなメディアアートが並びます。
■三原聡一郎「 鈴」2013年


三原聡一郎の[空白]のプロジェクト「 鈴」(2013)は、作品に内蔵された放射線センサーが感知した瞬間に鳴るガラスベルの音が主題となっている。ガラスドームの中に剥き出しのまま設置されている機構には、音を聴く体験を特別なものにする喚起力がある。
■菅野創「形骸化する言語」2016年

菅野創の《Asemic Languages》(2016)は、人工知能によって、複数の人が書き記した文字の形状とパターンだけを学習し、意味をなさないが文字のように見える線を書き連ねていく作品である。文字とは本来、伝達や記録を目的とするが、その意味を読み取ることなく学習され生成される線には、それぞれの書き手の手癖の痕跡だけが浮かび上がる。
■山城大督「HUMAN EMOTIONS/ヒューマン・エモーションズ」2015年

山城大督の《HUMAN EMOTIONS/ヒューマン・エモーションズ》(2015)は、会期直前に山城が設定した空間に1歳と5歳と7歳の3人の子どもたちを登場させ、複数台のカメラで撮影した映像を同じ場で「再生可能な空間」として展示した映像インスタレーション作品である。この作品における「再生可能な空間」とは社会を模倣した空間と言えよう。人間が自我の芽生えや社会性を身につけていく過程でのコミュニケーションや感情のあり様を考えさせる作品である。
■村山誠「Lathyrus odoratus L. – top view – b」 2012年 「Sunflower -ⅰ- bc」 2008年 「Botech Composition 1-MV」 2014年


村山誠の「Lathyrus odoratus L. – top view – b」、「Sunflower -ⅰ- bc」、「Botech Composition 1-MV」は、採取した花々のスケッチを重ね、自ら解剖した花の断片をルーペや顕微鏡で徹底的に観察した後、その構造をCG上でモデリングしていくことによって得られる植物のヴィジョンである。
■石塚千晃「Portrait of Daucus carota」2015年


石塚千晃は《The Portrait of daucus carota》(2015)において、「野菜のニンジン」、その野生化した姿としての「ノラニンジン」、そして自然環境では存在し得ないニンジンのある姿を組織培養によって現前させた「細胞塊(カルス)」の形態観察を行っている。人間の経済的・美的価値観を決定づけているもの、自然と人工の境界を問う。
若者が多く集まるラフォーレ原宿でこのような企画展を行うというのは非常に面白い試みで、さらにメディアアートに関心を持つ人が増える一つの契機になるように感じました。クワクボさんの作品をはじめ、それぞれの作品はメディアアートの文脈を知らない人でも楽しめるフォーマットを持っており、作品を見ているだけでこれから来る未来を予感させ、考えさせてくれました。岐阜県にあるIAMASから、多くの才能が育っていっているというのも楽しみな話です。
■Calculated Imagination IAMASが発信するメディアアート展
会 場: ラフォーレミュージアム原宿 (東京都渋谷区神宮前1丁目11番6号ラフォーレ原宿6F)
主催/企画制作:ラフォーレ原宿/情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
問合先:03-3475-0411(ラフォーレ原宿代表番号)
展示アーティスト :
クワクボリョウタ「風景と映像」2016年、三原聡一郎「 鈴」 2013年、菅野創「形骸化する言語」2015年 菅野創+やんツー、山城大督「HUMAN EMOTIONS/ヒューマン・エモーションズ」2015年、村山誠「Lathyrus odoratus L.-top view – b」2012年、「Sunflower -ⅰ- bc」2008年、「Botech Composition 1-MV」2014年、石塚千晃「Portrait of Daucus carota」2015年
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