「十三機兵防衛圏」がついに発売。話題のヴァニラウェア最新作を紐解く
2019年5月のコラムでも取り上げたタイトル「十三機兵防衛圏」が、2019年11月28日に発売された。大きく話題にはならないものの、コアなゲームプレイヤーにずっと注目されてきた同作。今月のゲームコラムでは十三機兵防衛圏の本編発売を受け、前回よりさらに踏み込んだ内容で同作を掘り下げていく。2019年屈指の作品をさまざまな角度から感じてほしい。
ヴァニラウェア最新作、十三機兵防衛圏とは
「十三機兵防衛圏」は、「オーディンスフィア」「朧村正」「ドラゴンズクラウン」などの作品で知られるゲーム開発会社・ヴァニラウェアによるPS4用ゲームタイトル。2015年秋に開発が発表され、発売日の延期を経て2019年11月28日に発売された。
地球を救うために奔走する“13人”の少年少女たちを描いたSF群像劇で、彼らはタイムトラベルを繰り返しながら、世界の仕組みや自分たちの役割を知り、“機兵”と呼ばれるロボットで侵略者との“防衛戦”に挑む。これまでヴァニラウェアが得意としてきた「アクション」「ファンタジー」「RPG」といったカテゴリーに属するものではなく、「アドベンチャー×リアルタイムストラテジー」というあたらしい切り口を軸とした挑戦的とも言えるタイトルだ。
公式は同タイトルのゲームジャンルを「ドラマチックアドベンチャー」と謳っている。2019年を代表するタイトルのひとつとして、頻繁に名前の挙がる注目作となっている。
十三機兵防衛圏をプレイして
先に紹介した5月公開のコラムでぼくは、同作の有料体験版「十三機兵防衛圏 プロローグ」をプレイし、「安心感を得るまでには至らなかった」と表現している。
- ヴァニラウェアが十八番を捨てて挑むあたらしい取り組みであること
- 親和性が高いとは想像しにくい、アドベンチャーとストラテジーの融合であること
- 13人もの登場人物が主人公として扱われること
などを理由に、悪い意味で雑多なタイトルとなってしまう可能性を心配していたからだ。
けれど、それは杞憂だった。
十三機兵防衛圏でヴァニラウェアは、ノウハウの少ないであろうジャンルを見事に融合させていた。アドベンチャーパートでは13人全員を過不足なく描き、バトルパートではシンプルながらクセになるシステムでプレイヤーを楽しませる。タイトルのメインコンテンツをアドベンチャーパートに置いていることが想像できる設計で、ゲーム制作におけるヴァニラウェアのバランス感覚を随所に感じられた。
一部ではバトルパートにおける演出の少なさを不満点とする意見が挙がっているが、技を実行するたびに演出が入る仕様はゲーム全体のリズムを悪くする。アドベンチャーパートをメインとする方向性、両パートを並行して進めていくゲームデザイン、バトルパートのスピード感などを考えると、ベターな選択だったのではないだろうか。
また、時間軸が交錯する難解なシナリオは、用語解説やイベントアーカイブ、シーンのリプレイ機能などで補完され、一度のプレイでも十分に理解できるものとなっている。シナリオを追うアドベンチャーパートは細かく章立てられているので、都度振り返りながらのプレイが可能だ。おそらく二度、三度とプレイを重ねることで、より味わい深いものになっていくのだろう。一切ストレスを感じないUIにも驚いた。
もちろんヴァニラウェア作品が武器とする美しい2Dグラフィック(いまどき2Dグラフィックで勝負できるのは、ヴァニラウェアくらいでは。)や、恒例となっている“あれ”の描写も健在。主人公たちが機兵を起動し乗り込むシーンでは、ロボットものに嗜みのないぼくでも、ぞくぞくするような感動があった。十三機兵防衛圏は、「SFアドベンチャー+魅力的な13人によるキャラクターゲーム+リアルタイムストラテジー」を高次元で融合させた、とても完成度の高い作品だった。
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