Queenがデビューした70年代、それは音楽の黄金期だった。
様々なジャンルを越境しながらお届けしております「MEETIA PLAY!」。前回以前のプレイリストはコチラから。
英国ロンドン出身のロックバンド「Queen」を題材にした映画『ボヘミアン・ラプソディ』が絶賛公開中であります。11月9日に公開されてから今日に至るまで、まるで止まらぬ快進撃。最終興行収入は50億円に届くのでは、という勢いです。公開4週目にして、2週目の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』と大激戦を繰り広げております。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』 予告
僭越ながら映画の感想を申し上げますと、サントラを買うほど良かったです。近年稀に見るアツい作品でした。タイトルの「ボヘミアン・ラプソディ」以外にも要所要所で使われるQueenの名曲たち。“20世紀最大のチャリティー・コンサート”と言われた「ライヴエイド」も完全再現され、伝記映画の域を超えた熱量を感じることが出来ました。この世に生まれてから何度も耳にしている「We Are the Champions」ですが、本作で初めてその神髄を理解できたような気がしますね。
それで…。今回の「MEETIA PLAY!」では、そんな「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットに便乗し、70年代の音楽にフォーカスします。Queenがデビューしたのが1973年、代表作『News Of The World』がリリースされたのが1977年。彼らが黄金期を迎えた70年代は、音楽シーン全体を見渡しても素晴らしい時代でした。ジャンル問わず、尋常ならざる才能が山ほど居たのです。
懐古趣味ではなく、筆者と同世代(二十代半ば)から下の世代にこそ、この時代の音楽を聴いていただきたい。「ボヘミアン・ラプソディ」を観てからというものの、「コレは我々の世代にこそ伝えねば…!」と使命感に駆られている次第です。偉大な歴史を知ることは、時に今を知ることに繋がりますから。(並びはリリースされた順)
ビートルズの解散によって幕を開けた1970年
1970年、音楽シーンを揺るがす大事件が起きました。それがThe Beatlesの解散。10年間、シーンにエンターテイメントと前衛性の両方をもたらし、名実ともに世界最高のバンドがその活動を終える。その衝撃たるや、あらゆる国がセンセーショナルに報じたほどです。以降、4人はそれぞれソロや別のバンドでの活動が本格化してゆくのですが、いずれも他とは一線を画す作品を作り続けておりました。ジョージ・ハリスンの『All Things Must Pass』しかり、ジョン・レノンの『John Lennon/Plastic Ono Band』しかり、音楽史に残る傑作です。個人的にはヴァン・モリソンの『Moondance』も激推ししたいところです(ビートルズ無関係ですけれども)。
ファンクにロックにR&Bに…
アメリカ南部の音楽と言えば、今はヒップホップが想起されるでしょうか。特にジョージア州アトランタでは21 Savageを筆頭に若手ラッパーの台頭が著しく、ヒップホップが主体のフェスやクラブが多く存在します。けれども、その昔ロックが隆盛を極めた時代がありました。“サザン・ロック(南部のロック)”という言葉もあるぐらいです。そしてその代表格のひとつがThe Allman Brothers Band。南部の土臭さ、哀愁漂うフレーズがたまりません。さらにもうひとつこの時代の特徴を挙げるのなら、白人と黒人の混在したバンドが現れ始めたことでしょうか。Sly & The Family Stoneが最たる例ですね。『There’s a Riot Goin’ On』は同バンドの最高傑作と目されているアルバムです。
追憶と(再)出発
1973年には葛藤と革新がありました。Dr. JohnはThe Metersを呼んでファンク色を打ち出すことに成功し、アルバム『In the Right Place』は自身最大のヒット作となりました。リリース当時はセールス的に全く振るわず、けれども作品としてのクオリティは非常に高かった、ダリル・ホール&ジョン・オーツのセカンドアルバム『Abandoned Lunchonette』も忘れてはいけません。それが本当に良い曲であれば必ず誰かが聴いているもので、当時大人気であったTavaresが同作に収録されている「追憶のメロディ(She’s Gone)」をカバーしました。その結果、『Abandoned Luncheonette』の再発に繋がってゆくわけです。ポール・マッカートニーの『Band On The Run』は言わずもがな。ビートルズの解散後、紆余曲折を経た彼ですが、73年にリリースされた本作によりクリティカルヒットを飛ばします。1973年はそんな年。
哀愁と夜の70年代中期
ベトナム戦争の影響か、75年前後の世間には物悲しさが漂っておりました。音楽にもそれが反映されているようで、一人で夜中に聴くような曲が非常に多い。トム・ウェイツが典型的ですね。ジャクソン・ブラウンの『Late For The Sky』も、この時代でなければ生まれなかったではと思うほど、悲しみに満ちています。けれども、個人的な感想を言わせてもらえばヴァン・モリソンの『Moondance』に次いで好きなアルバムです。現在は70年代とはまた種類の違う悲しみが世の中を覆っていますが、本作は変わらず僕らの背中を押してくれる。何よりも優しく。
さよなら70年代。Hello, 80’s
悲しみを超え、70年代も終盤に差し掛かる頃には、世の中も前を向き始めました。とはいえ、アメリカは貿易赤字に苦しんでおりましたが。そういう意味では、“開き直り”の風潮があったかもしれません。絶望や悲しみとは縁遠いダンスミュージックが台頭し始めたのもこの頃ですし。そんな背景もあり、「おや、この曲は聴いたことがあるかもしれない」と思う回数も、もしかしたらこのセクションが一番多いかもしれません。…まぁ、Fleetwood Macに関してはあえて一番有名な「Go Your Own Way」ではなく、同じく『Rumor』に収録されている「Never Going Back Again」を選びましたけれども。いつの時代も“突然ハッピーになる”ということはなく、なだらかな放物線を描いて段々違う方向に向かってゆくもの。つまり、『Rumor』にしろ、エルヴィス・コステロの『My Aim Is True』にしろ、はっきりと社会性を持った作品も多かったのです。そうして70年代後期から燃え上がりつつあったディスコシーンが、爆発的に広がってゆくのでした。Hello, 80’s。
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