「国境のない音楽集団」を目指している若きトリオ「yahyel」(ヤイエル)。だが、本当に彼らが飛び越えようとしているのはどうやら単なる「国家」というボーダーだけではなさそうだ。たとえばそのプレイスタイルを聴いて、MVを見て、できればライブで体感してほしい。ジェネレーションとかジャンルとか、「どこかで見たような枠」から解放された「yahyel」は、エンターテインメントのスタイルすら変えかねないニューエイジだ。
感度の高い音楽ファンの度肝を抜いて、英仏・海外ツアーから凱旋
一瞬、どこの言葉なのかわからない。意味合い的には、「異星人」だという。「yahyel」(ヤイエル)の独特な距離感は、ちょっと意味深なバンド名にも表れているように思える。結成されたのは、2015年3月のこと。メンバー3人の平均年齢は、当時22歳ほどだった。その若さが、そのまま勢いづいて走り出せば、もう止まらない。結成2ヶ月後には、Bandcampで公開した「Midnight Run」や「Fool」などの4曲とライブ活動が、コアな音楽ファンの間で話題になっていく。2016年には早くも海外ツアーを敢行し、欧州圏の音楽シーンで最先端を走るUKとフランスでパフォーマンスを披露。独特の世界観は、現地の「抜群に感度が鋭い」人々に喝采を受けた。「国境のない音楽集団」の野望は、着実に第一歩を踏み出したワケだ。
クラブミュージックの味をシンセポップの「打ち込み感」で包む
メンバーは3人でスタート。その編成自体が、またひと味違う。メンバーのひとり、杉本亘は、やはり新世代バンドとして注目されている「DATS」でギター&ボーカルを担当しているけれど、yahyelではシンセやパッドによるDTMを駆使してみせる。同様に池貝峻、篠田ミルもDTMを自在に使いこなす。クラブシーンにたゆたうような少し気だるげな歌声に、デジタルチューンドなテンポが絡まる。そのさじ加減が、絶妙でオイシイ。2016年3月、海外ツアーの「凱旋」イベントとして開催されたインストアライブの告知には、「ポスト・ダブステップ〜チル・ウェイブ注目の若手グループ」と謳われていた。なるほど…確かに、21世紀に入ってロンドンのクラブミュージックを席巻した「ダブステップ」の流れを汲みながら、「幻想的・耽美的」と評される斬新なシンセポップ系の魅力まで取り込んでいる。なかなかツボを射たキャッチコピーだ。
速くて広い進化の法則。壁を飛び越えることにも、躊躇なし!
ライブでは、VJ(山田健人)で演出されたステージが、とっても蠱惑的なのだとか。生ドラム(大井一彌)も入るので、「そこ」でしか聴けないのは嬉しいような、ちょっと残念なような…。なによりも短い間に驚くほど伸びた。両A面7インチのEPリリース、海外遠征と凱旋などを経て、独特の世界観は急激に進化している。フジロックの新人枠「Rookie A GoGo」への出演で日本での存在感をアピールしながら、新曲「Once」の製作を通して海外のサウンドクリエーターたちとのコラボレーションも深まりつつある。待望の1stアルバムも、ほどなく完成するハズ。たとえるなら乾いているのに熱い。構えていないのに挑戦的。なにより、根拠など置き去りにした自信、潔さには、見えない壁を飛び越えることに躊躇しない新人類らしさが溢れている。いやいや、彼ら自身の言葉を借りるなら…「異星人らしさ」と、言うべきなのかな。
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