ノーナ・リーヴスが10月25日、メジャーデビュー20周年記念アルバム『MISSION』をリリースする。今作は曽我部恵一、Charisma.com、原田郁子をゲストに迎えた豪華な1枚で、西寺が「ノーナがこうして仲間たちと共鳴しながら最高傑作と呼べるアルバムが作れた事実そのものが、ぼくら自身の逃れられない“役目”。自分が信じる音楽を世に伝えてゆけ、という“使命”そのものの道のりだったんじゃないかな、と感じています」と語るように、互いに認めあうミュージシャンと作ったノーナ史上最高の傑作。
今回は、西寺郷太(にしでらごうた)とアルバム収録曲「記憶の破片」で共作した盟友・原田郁子(はらだいくこ)を迎えての対談をお届けする。なんと、2人が公の場でインタビューに答えるのはこれが初めてとのこと! レア感たっぷりのミーティア独占対談をお楽しみいただこう。
Photography_西田香織
Text_真貝聡
Edit_金井悟
そのころから郷太くんは頭がいい人だなって印象で。
――先ほど読者プレゼント用のチェキを撮らせていただきましたけど、おふたりが並んだときのぎこちない感じがすごく良かったです(笑)。
西寺 : あははは(笑)。この間、土岐麻子さんと一緒の仕事があって。久しぶりに早稲田大学へ行くっていう。
原田 : 母校だっけ?
西寺 : そうそう。5時間くらい一緒に早稲田界隈を歩き回る『ブラワセダ』って企画で。「おふたり、見つめ合って!」とか「もうちょっと、くっついていただけますか?」って。すごい前から知ってるけど、初めてふたりで写真撮るので…。
原田 : 照れるよね。
西寺 : 照れるんだよ! 「土岐さんの方を見て笑ってください」とか言われて。いまもそういう感じでしたね。
――今年は、そういうスペシャルな企画が多いかもしれないですね。
西寺 : 郁子ちゃんと公の場でしっかり話す機会なんて、本当にないですからね。
――ですよね。ノーナ・リーヴスがメジャーデビュー20周年を記念してリリースされたアルバム『MISSION』。今作に収録されている「記憶の破片」は、西寺郷太さんと原田郁子さんにとって初めて共作ということで。今回、おふたりの対談を企画させていただきました。
西寺 : よろしくお願いします。
――郷太さんと郁子さんは20年来の仲ということですけど、親交はいつから?
西寺 : 多分同じ場所にはもっと前からいたはずなんだけど、「クラムボンの原田郁子ちゃん」って感じでちゃんと認識したのは1997年初めくらいだと思います。昨日、武道館にレキシのライヴを観に行ってたんですけど、池田くんと永積くんがやっていたSUPER BUTTER DOGって、ノーナと同じ日にデビューしてるんですよ。
原田 : へえー!
西寺 : 96年12月13日に初めてのCD出したんですけど、
それでBUTTER DOGとは、よく一緒に対バンしてて。その仲間にクラムボンもいた。しかも、ワーナー(ミュージック・ジャパン)にノーナ、クラムボン、キリンジが同時期に所属。そこから意識するようになりました。
原田 : デビュー自体は、ノーナの方が少し先なんだよね。クラムボンは’99年で、ノーナは’97年だっけ?
西寺 : ただずっとシングルやEP出してて最初のアルバムが出たのは’99年だから、ほぼ一緒かな。
原田 : 顔見知りではあっても、どういう音楽をやっているバンドなのかっていうのは、ワーナーに入ってからアルバムを聴かせてもらったり、対バンさせてもらったりしてから知りました。そのころから郷太くんは頭がいい人だなっていう印象で。
西寺 : いやいやいやいや!
原田 : 頭の回転が速くて、お喋りも上手で、きっとクラスの人気者だったんだろうって(笑)。色んなことにすごく詳しくて、情熱的で、ミトくんもめちゃくちゃ詳しかったですけど、クラムボンのムードとはまた全然違いましたね。
「ノーナの20周年のときもヨロシクやで」って書いたんです。
――おふたりの歴史を遡ると、ノーナの自主イベントにクラムボンが出演したり、郁子さんのラジオ番組に郷太さんが出演されたりしたことはありましたけど。今回のように制作からガッツリご一緒されたのは…。
原田 : 初めてですね。「ノーナが新しいアルバムを出したんだな」とか「郷太くんはこういうことをやってるんだな」とかを、ネット越しに見かけることはもちろんあったんですけど、随分会ってない期間が長かったので。
西寺 : むしろ、郁子ちゃんとコラボしてた大宮エリーちゃんの方が会ってたくらいですからね。俺の弟がやってた三茶のバーとかで(笑)。
原田 : わぁ!本当?!
西寺 : それぐらい郁子ちゃんと会う頻度は低かったんだけど、会えたときの思い出は毎回強烈。さっき話に出た郁子ちゃんのラジオ番組は福岡のCROSS FMで。当時、毎週郁子ちゃんが通ってたって聞いたんだけど、たまたま東京収録のとき、虎ノ門スタジオに呼んでもらって。「VIVA! 80’s」ていうコーナーがあって。僕が大好きな少年隊の「stripe blue」をかけてブースから出たら、錦織一清さんが偶然ラジオ局にいたミラクル(笑)。
で、錦織さんと写真を撮ってもらって。それがきっかけですぐに錦織さんのラジオに呼んでもらったり、のちに少年隊の舞台「PLAYZONE " 2001" 新世紀 EMOTION」のテーマ曲をやらせてもらったりとか、錦織さんとミュージカルを3つ作ったり。その起点になったのは、そもそも郁子ちゃんなんですよね。
原田 : その話…すごいですよね!そういう偶然の出会いって、あったとしても一瞬のことだと思うんですよね。でも、そこまで深く関わるようになるっていうのは、やっぱり郷太くんがすごい。郷太くんのものすごい「好き」がご本人に伝わったんだろうな、と。そんなきっかけになれたと知って、びっくりしました。
西寺 : 回数はそんなにないんだけど、郁子ちゃんに会うと濃厚な出来事が起こる打率がものすごく高い!
――共演する機会は少ないのにインタビューでは互いに名前を挙げていて、不思議な関係だなと思ってました。そもそも、ノーナと郁子さんが共作することになったのはどうしてだったんですか?
原田 : それを話すには、おそらくいくつかの伏線があって。クラムボンが2015年に結成20周年を迎えたとき、トリビュートアルバム(『Why not Clammbon!?』)でノーナに「SUPER☆STAR」をカバーしてもらったんです。
西寺 : あれが大きかったよね。
原田 : うん。当時クラムボンはコロムビア(日本コロムビア)というレコード会社にいたんですけど、お世話になってたスタッフが「20周年の面白い企画やろうよ」って言ってくれて、トリビュート盤を作ってくれたんです。
わたしたちは『triology』ってアルバムを制作するのに集中していたので、基本的にすべてのやりとりはコロムビアのみんなに任せていて、参加してくれることになった方たちには、「好きな曲を選んでもらおう」ってことになっていたんです。でも「SUPER☆STAR」に関しては、ちょっと例外で…。
西寺 : MVのなかで、マイケルに扮した男の子が出てくるんだよね。
原田 : そう。マイケル・ジャクソンが亡くなったときに、デディケートを込めて作った曲だったんですよね。だから念のため「郷太くんに“そういう曲でもあるんですけど”って伝えてみてもらえないでしょうか」とスタッフにお願いしたんです。
西寺 : ほかの人はやりたい曲を選ぶんだけど、俺らにだけはこの曲をやってほしいと、決定事項としてきたんだよね。
原田 : (笑)。
西寺 : その曲のことを知らなくて、MVを観たら「ああ、そういうことか!」と思って。
原田 : よかった(笑)。
――郷太さんには“日本一マイケル・ジャクソンに詳しいミュージシャン”って称号がありますからね。
西寺 : 最初は意外だったんですよ。クラムボンってどんどんアンビエント的だったり、ジャズだったり、ポップで弾けるみたいなのとは違う感じの大人っぽい音になってるイメージが勝手にあって。でも、「SUPER☆STAR」みたいな曲もあるんだ!って。
原田 : 山の中の小渕沢のスタジオで作ってました(笑)。
西寺 : MVのことを教えてもらってから、そういえば郁子ちゃんってマイケル好きだったな、と思い出して。実は俺らがデビューしてからしばらくの間は、マイケル・ジャクソンっていう人はボトムの時期で。それこそ、ラジオでマイケルの曲をかけちゃダメって言われたこともあった。95%の人はマイケルを馬鹿にしていた時代だったので、そのときに「マイケルが好き」って言ってた人のことを俺はすごい覚えてるんですよ。
原田 : えー!すごい。
西寺 : 「お前も言ってくれたか!」みたいな。トライセラ(TRICERATOPS)の和田くんと俺は弁護人じゃないけど、マイケルの悪口を言ってる奴がいたら「それは違うぞ!」って言ったりしてて。上の人が「マイケルを流すのはダメ」って言って、収録された映像が流れなかったり、「マイケルは犯罪者だから褒めるのはおかしい」みたいな、そういうレベルだったんですよ。
――いまでは考えられないですね。
西寺 : で、俺らが『We Are the World』ってイベントをやったときに郁子ちゃんがマイケルの少年期のソロ曲「Music and me」を歌ってくれて「いいなぁ!」と思ったんですよね。そんな経緯があって、クラムボンが20周年を迎えたタイミングに「SUPER☆STAR」をノーナにやってほしいってオファーされたとき、すごく嬉しかったんですよ。
――ノーナがカバーした「SUPER☆STAR」は、郷太さんのカラーが色濃く出てましたよね。
西寺 : まさにTHE・西寺郷太みたいなボーカルにしてやろう! って。自分らとしても会心の出来だったし、久々なのに誘ってくれて嬉しくて。そういうのが2年前にあったんですよね。
原田 : 参加してくれた方それぞれに、皆さん「まるでオリジナルみたいだな!」って思うような仕上がりだったんですけど、ノーナの「SUPER☆STAR」を聴いたときに、「これ、ノーナの曲じゃない?!」と思うくらい本当に驚いて。自分の歌だけだと届ききれない部分とか、グルーヴ感とか、郷太くんたちの尋常じゃない“マイケル愛”で形にしてもらいました。
西寺 : それでクラムボンが20周年のときにコメントをくださいって言われて、「ノーナの20周年のときもヨロシクやで」って書いたんです。
――2年前から、そういう約束が交わされていたんですね。
原田 : 今回は、そこが大きいかもしれないです。フェスやイベントで、奥田くんや小松くんと会うことはあったんですけど、全員揃ってはずっと会えてなくて。なんとなく、ちゃんとお礼を言いそびれていたというか、「ノーナの20周年のときもヨロシクやで」の伝言だけが太字でふっとよぎったりして(笑)。ノーナの20周年のときは何かお礼をしなければ、と思っていたのが伏線としてありましたね。
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