ロックバンド・ヒトリエが5月7日、東京・新木場STUDIO COASTにて『全国ワンマンツアー2017”IKI”』ファイナル公演を行った。本ツアーは、昨年12月にリリースした3rdフルアルバム『IKI』を伴ったツアーで、約5ヶ月にわたって、ヒトリエ史上最多となる全国20公演で開催された。本記事では、その熱い熱いファイナルの様子をレポートします!
Text_SOTARO YAMADA
Edit_司馬ゆいか
ヒトリエのライブには助走というものがほとんどない。
この日のライブも、1曲目の『心呼吸』からいきなりオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだ。
筆者は二階席から見ていたのだが、満員のSTUDIO COASTは最前列から最後尾までほとんどの人が激しい縦ノリで体を揺らし、モッシュが起き、二階席にいてもその揺れが伝わってくるほどだった。
とにかく、とにかく熱気がすごい。
ライブレポートでは「会場の一体感」という言葉がよく使われるが、その言葉はヒトリエのためにあるんじゃないだろうか。そう思わせられるほどに、ヒトリエの4人とオーディエンスの熱がシンクロしていて、巨大なエネルギーが渦巻いていた。
『ワンミーツハー』『インパーフェクション』と代表曲が続く間、照明はめまぐるしく変わり、ステージ後方からはフロアに向けてレーザーが放たれる。
「みんないける?休まずいくよ?」
wowaka(Vo. & Gt.)の言葉通り、休みなく『Daydreamer(s)』『イヴステッパー』と、アルバム『IKI』収録作品が続く。
『イヴステッパー』には、「靴を履いて音に身を任し 気の狂うまで唄うんだ」「我を忘れて踊れ 東京、雑踏、せつなの夢」という歌詞があるが、この箇所はきわめて象徴的で、目の前で起きていることの正確な描写になっていた。ヒトリエにはもともと踊れる曲が多いが、改めて、ライブを見るべきバンドであることに気づかされる。
また、この曲はアルバム『IKI』のコンセプトを象徴してもいる。
IKIの新曲イヴステッパー。知らなかったし意図してなかったんだけど、イヴ[Eve]は、「呼吸をする」「生きる」という意味に由来する名前なんだって。完璧すぎて鳥肌たってる。
— wowaka (@wowaka) 2016年12月11日
我を忘れて踊るイヴたちは、新木場STUDIO COASTを出たあとも、それぞれの人生で澱みのないビートに乗りながら、それぞれのステップを踏み続けるだろう。靴をいくつも履き潰しながら、それでも足音を鳴らし続けるだろう。
やがてそれが自分だけの美しい音楽になるのだと、ヒトリエは教えてくれる。
燃えるギター、感じるベース
この日のシノダ(Gt.)とイガラシ(Ba.)のパフォーマンスは特に目を見張るものがあったように思う。
どちらも超絶技巧を披露してオーディエンスを盛り上げるが、その見せ方には対照的なものが感じられるのだ。
シノダのパフォーマンスは野性的で攻撃的。ステージを縦横無尽に駆け回ってシャウトしまくり、ギターをまるで武器のように扱う。
彼には、「火を噴く」という言葉が似合うのではないか。
たとえば映画『マッドマックス』の火を噴くギター男、コーマドーフ・ウォーリアーのように(……もしかして中の人はシノダ!?)。
『マッドマックス』では戦場のウォーボーイズがウォーリアーの火炎放射ギターに奮い立たせられたわけだが、この日のオーディエンスは、シノダのギターによって大いに奮い立たせられたのだった。
シノダのギターが火を噴き、会場が真っ赤に染まった瞬間(嘘)
イガラシのパフォーマンスもかなり激しいのだけれど、彼のベースからは火ではなく、ある種の官能が放たれている。
イガラシはシノダほど動き回ったりしない。しかしだからこそ、弦を弾く指使いの激しさがより一層際立つ。その音は聴く者の内臓に直接響き、骨まで震わせる。
彼には、「色気」という言葉が似合うのではないか。
筆者の個人的な印象に過ぎないが、X JAPANのTAIJIと同じ匂いを感じた。
イガラシのベースソロでぐっと雰囲気を変えると、さっきまで熱狂していたオーディエンスを『極夜灯』や『さいはて』でじっくり聴かせ、壮大な雰囲気でライブの前半部が終わった。
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